第35回トワスト(遅刻参加)テーマ「端午の節句」作品です。
制作時間約30分。ランフォードとその娘、ソレイユのも物語です。
@xxxyueyunxxx
「ねえパパ、こいのぼりよ!」
ランフォードの隣を歩くソレイユが、澄んだ青い空を指差した。正確には、空を悠々と泳ぐ、こいのぼりを。
「そうだね。もうすぐ端午の節句だからね。こいのぼりもだんだん、増えてくるだろう」
「……端午の節句? パパ、こどもの日じゃなくて?」
きょとんとしてソレイユは首を傾げている。頭につけた赤いリボンまで傾けて。――その顔を見ればわかる。娘は本気で、端午の節句という言葉を知らないのだろう。
「こどもの日という名前になったのは、最近のことのはずだよ」
「え、そうなの? 元はそのややこしい名前?」
「こらこらソレイユ。端午の節句とは、ちゃんと意味もある名前だったはずだよ。もっとも私は、その名の由来をよく覚えていないのだけどね。ジェフならしっかり説明出来るだろう」
「おじさん、そういう細々したことよく知ってるものねー」
ね、とソレイユが同意を求めてくる。長年の友であるジェフが人間文化に詳しいのは事実だったから、ランフォードは娘に頷いてみせた。
「……ねえパパ」
「ん? どうしたんだね、ソレイユ?」
ソレイユは黙ってこいのぼりを見つめている。その大きな茶色の瞳で。
「……あたしたち、これからもずっと仲良く泳いでいけるかな?」
ランフォード一家は、全員人間ではない。その正体は、この世界と並行して存在する世界『魔界』に生を受けた異種族『魔族』である。ランフォードの友であるジェフも然りだ。
ソレイユの言葉が何を意味しているかは判然としなかったが――家族が仲良くという意味ならもちろんだし、この世界を生きる生命体と仲良くという意味でなら、そうありたいというのがランフォードの希望であった。
「そうだね。私とソレイユ、そしてサティナという家族揃ってという意味なら、もちろんだよ。こいのぼりの一家と同様、ずっと仲良く泳いでいこう」
「うん。……他の意味では?」
「この世界の生命体のことを指しているなら、私は皆のことが愛おしいよ。昔も今もね。だからもちろん、これからも仲良く共に泳いでいきたい相手だよ」
「そっか。……あたしも、そうありたいな」
「ソレイユがそう願うなら、きっとずっと仲良くしていられるはずだよ……」
こいのぼりは今も空高く泳いでいる。仲良く寄り添うようにしながら。
これからも、仲良く寄り添って生きていきたいね。――愛する家族とも。大切な友とも。そしてこの世界の愛おしい生命たちとも――
ランフォードはソレイユと並んで、しばらくこいのぼりを見つめていたのであった。