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魅惑のお願い

全体公開 あたなるパラクラ 6 12 2797文字
2025-05-05 06:25:22

リクエストssで「☀女体化」です。魔術で三日間女体化してしまった☀さん。オチはイアアキで。
ネタバレは特にありません。

魅惑のお願い

 腕を組んで座り、クロックスを引っかけた足をプラプラと揺らした。ぶかぶかのパンツの中を泳ぐ足首から太腿は細く、きゅっと引き締まったヒップと腰回りで衣服を無理やり固定している。オーバーサイズの白いシャツでわかりにくいが胸は柔らかく膨らみ、シャツの凹みという谷間にネクタイが挟まっていた。
 RDFのエンブレムが描かれた上着をいつものように肩から羽織っているが、今の身体には大き過ぎてどこか違和感がある。揺れる黒髪は僅かに長くなったように見え、サングラスの向こうで少し大きくなったように見える色違いの目が瞬いた。仄かに色付いた唇から、ふぅっと溜息が零れる。
「参っちまうよな~」
 いつもより高い声で愚痴ったのは、アキアカネ班のリーダーであるアキラ・アカツキその人だ。しかし、その様子は普段とは決定的に違っている。
 今のアキラは、どこからどう見ても女だった。
 捜査の終盤で魔術をくらい、性別が変わってしまったのだ。幸い効果には時間制限があるらしく、三日経てば勝手に解除されるのが救いである。
 とはいえ、いざ普段とは違う身体で過ごすとなると、三日間は意外と長い。
「大人しくデスクワークを進めてください」
 少し離れたデスクでルディが溜息を吐く。
 ただでさえ人種の差でイマイチだった筋力は、女になったことで余計に落ちてしまった。華奢な体躯を見たメンバーからこれでは現場は危険だろうと説得された結果、アキラは元の身体に戻るまで事務仕事に専念することになっている。
 勝手の違う身体でストレスが溜まるというのに、ただでさえ苦手な事務三昧なのだ。アキラのテンションはだだ下がりである。
「ルディくん冷たい。そんなんじゃモテないぞ~」
「あなたにモテる気は毛頭ないので大丈夫です。溜まっていた書類を片付ける丁度良い機会なんですから、黙って手を動かしてください」
 アキラはぶすくれた顔でルディの方を見るが、パソコンと向き合って手を動かしている最年少はそもそも顔を上げてすらいない。
 こっそり近づいて後頭部に胸を押し当ててやろうかとも思ったが、すでに腕を抱き寄せて揶揄った時に冷たい目で「セクハラですよ」と切り捨てられていた。繰り返すのは得策ではないだろう。
「ちぇっ」
 仕方なくまだ数行しか進んでいない書類に目を戻した。
 ぶかぶかのパンツの隙間に空気が入り込み、肌が冷やりとする。脚を擦り合わせつつ、朝にタイラーが置いて行ったブランケットに手を伸ばした。
 広げて膝に掛ければ、体温を閉じ込めて少しずつ温かくなってくる。女性の身体は冷えやすいからと残して行ってくれたのだが、流石既婚者というべき気遣いだ。ありがたく使わせてもらいつつ、しみじみと結婚できた理由を噛み締める。
 タイラー以外のメンバーも、なんだかんだでアキラを気遣ってくれていた。机上にはコリーからの差し入れであるドーナツがあるし、その隣のタンブラーは先程顔を出したノアがくれたホットのカフェラテだ。ルディがオフィスに残っているのも、いざという時のアキラのサポートのためであることくらい簡単に想像できる。
 仲間たちの優しさを感じながら何とか苦手な事務仕事を進めていれば、就業時間の直前にイアンがオフィスに戻って来た。
「アキラ、帰る時間だ」
「了解、ちょっと待っててくれ」
 パソコンの電源を切り、帰り支度を済ませる。
 この三日間は何と送迎付きの出勤だ。朝は玄関まで迎えに来てくれるし、帰りも玄関までついて来てくれる。少し大げさではとも思ったが、万が一身体に異変があって倒れでもしたら大事だと言われれば断り難い。魔術なんて何の悪影響があるのか分からないのだ。
 だが、そんな日々ももうすぐ終わる。情報が正しければ、明日の朝には元の身体に戻っているはずなのだ。
「お疲れ様です」
「おう、お先。美女な俺は見納めだぜ?」
 にやりと笑ってモデルのようにポーズを取れば、ルディは半眼で溜息を吐いた。
「鏡と雑誌を見比べてみることをお勧めします。イアンさん、この人が最後だからと羽目を外さないようお願いします」
「勿論だ。ちゃんと家まで送り届けてくる」
 頷いて請け負ったイアンがアキラの背にそっと手を添え、「帰ろう」と促す。アキラも肩を竦めると、ひらひらと手を振ってオフィスを後にした。
 イアンの運転する車に乗れば、家まではあっという間だ。部屋の前まで並んで歩き、アキラがドアを開ける。
 ここで「おやすみ」と挨拶を交わして別れるというのがこの二日間だった。しかし、アキラは口を開きかけたイアンの手を掴んで引き留める。
「なぁ、イアンちゃん。俺、明日には男に戻るんだ」
 色違いの目で見上げられ、イアンはこくりと頷く。
「ああ、そうだな」
「だから、さ……こんなチャンスもう来ないんだよ」
「何のことだ?」
 アキラが何を伝えたいのかわからず首を傾げる。そんなイアンに焦れて、アキラは掴んだ手をくいくいと引っ張った。
 屈んで顔を寄せるイアンの耳元で、羞恥の所為で少し怒ったように聞こえる声が囁く。
「俺の処女バージン、貰って欲しいって言ってんの」
 一瞬目を見開いて固まったイアンの顔が、数秒後一気に真っ赤になる。
 二人は所謂恋人関係にあるのだが、イアンにとってアキラが初めての相手であるのに対し、アキラは過去に恋人がおり、下世話な話だが前も後ろも経験済みだった。そのおかげでスムーズに進めた面もあるのだが、やはり初めてというのは特別である。
 アキラが女の身体になったことで、疑似的にではあるがその初めての機会が復活しているのだ。勿論、本来の性ではない身体での行為に恐怖はあるが、言葉通りチャンスでもある。
 ぎくしゃくと動いて同じく真っ赤なアキラと顔を見合わせ、イアンが口を開く。
「良い、のか?」
「良いから、誘ってるんだよ」
 勇気を振り絞って誘ってくれた恋人に、イアンの胸が高鳴る。
 間にあった一歩の距離を詰め、そっとアキラを腕の中に閉じ込めた。男の時よりも柔らかで、僅かに甘い匂いがする気がした。
「アキラ、好きだ」
「うん」
「男でも女でも変わりはない。アキラだから、好きなんだ」
……うん」
 胸元で小さく頷いていたアキラを促し、顔を上げたところで口づける。
 そして抱き合う二人の姿は、パタンと閉まる扉の向こうへと消えるのだった。


(あとがき)
 リクエストssで「☀女体化」です。CPなどの指定が無かったので手癖でイアアキ落ちにしましたが良かったでしょうか?
 デスクワークはさせられるけど定時で上がらせてくれるし、いろいろ気遣われて三日間過ごしたアキアカネ班のお姫様でございますw 最後の夜は王子様と幸せなひと時を過ごせたことでしょう💕


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