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ケンカするほど仲がいいォョ

全体公開 ォョ関連 40 1577文字
2025-05-07 17:00:42

アンケートありがとうございました。リハビリ2

Posted by @kurato0o

喧嘩するほど仲がいい


「ウォロさんのことなんてもう知りません!!」
バッと赤い襟巻きが風に靡く。
本気で怒らせた、そう気付くのに時間はかからなかった。かと言って一体自分の何が彼女をそうまでさせたのかもわからない。日頃穏やかそうというより、何も考えてなさそうなくらいにぼんやりした表情が見たこともないくらいにまでつり上がって、皺の寄った眉間と鋭い眼光に睨めつけられ、流石の男も固まってしまった。理由がよく分からなかったからだ。
彼女を怒らせるのは勿論初めてではないし、喧嘩別れになること自体そう珍しくない。けれど去るのはいつも男の方からで、男は彼女の背中を見ることはそうなかった。
小さな背中。
色んなものを抱えて、背負い込んで、背負わされる、その小さな背中が離れていく。伸ばしかけた手は既に届かない。
どっと内側で強く心臓が脈打った。
…………おい!!」
飛び出た大声に、びくりと震え上がったのは彼女本人ではなく周りにいた村人たちだった。夕暮れの忙しい時間に村のど真ん中で揉めている事実に、何をやっているんだワタクシはと脳内の自分が焦り出す。けれど少女は振り返らない。ずんずんと進んでいく足は止まらない。きっとすぐ、どこへでも、行ってしまえるのだろう。
「待て!!そこの馬鹿!!」
脳内に居座る冷静な自分とは裏腹に、反射的に声が上がる。少女は止まらない。逸る気持ち。何をやっているんだと、どうでもいいじゃないかともうひとりの自分が胡座をかいている。それでも止められないものがあった。
「~~ッ大好きだって言ってんのが聞こえねぇのか!!」
口を突いて出たのは、そんな言葉。
シーンとあたりが静まり返るのがわかった。
流石の少女もぴたりと中途半端に足を止めて、固まっている。
――ワタクシは今なんと言った?
血の気が引くのが自身で感じた。どうしたらいいんだこの空気、そんな感情が村全体を占めていた。
……ほんとうに?」
「は?」
聞き慣れた少女の声に、思わず怪訝に返してしまう。ぎろっと彼女が振り返る。咄嗟に理由もなく何度も頷いた。
「ほんとほんと」
…………
沈黙。
少女はいつになく鬼の形相でこちらをねめつけたまま、暫く遠くから男を見ていた。
「だいすき?」
…………
ここで否定したら、確実に油を注ぐことになる。
その予感はばっちりある。怒らせるのは本意ではない……、本当に?何故自分が彼女に赦しを乞わなくてはならない?そう考えている間に、固まった男を一瞥してまた歩き出そうとする少女に、待ったを掛ける前に、
「大好き大好き」
情けない返答が飛び出た。
…………
…………
沈黙が続く。村人たちまでもが固唾を飲んでこちらを窺っているのがわかった。
不意に、少女が襟巻を翻して、来た道を戻ってくる。
とことこと歩いて、男の目の前で俯いて唇を尖らせている。
冷や汗に近い何かがじわりと滲む。
「だっこ」
…………
俯いたまま要望を口にする少女に、脳死で「死ねと?」と尋ねそうになった。
抱き締めろと言っているのか、抱き上げろと言っているのか、否、悩むほどの問題でもない。問題はするかどうかで……
…………
押し黙ったままの少女の瞳が、若干潤んでいるのを見て、男は盛大に溜息を吐いた。
もう、負けでいい。
「!」
ぎゅっと正面から彼女の背中に腕を回して、抱き締める。すぐに細い腕が自身の背に――届かなくて腹のあたりの布を強く握られた。
「あたしもウォロさんだいすき……
男にしか聞こえない音量で、少女は呟いた。
まったく。
こっちは村に知れ渡るというか生で聞こえる音量で言わされたというのに。
ぽんぽんと背中を優しく叩く。
「知ってますよ」
そう言ってもう一度抱き締め直すと、少女は小さく、ころころと笑ったのだった。


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