リハビリ
@kurato0o
泣きたいくせに、意地っ張り
窓辺に腰掛けている美丈夫に目をやる。帰ってきてからずっとこれだ。不定期に、彼はそうしてぼんやりとすることがある。ぼんやり?いや、どこか遠くを見ながら、思い詰めているようにも見える。
ショウは明日の調査に必要なものをポーチに詰めながら、窓の外をじっと見ている男を見上げて、肩を落とした。
彼の苦心を思ったところで、何様のつもりだと返ってくるのが関の山。こうして一緒に暮らしていても、本当の意味では分かり合えないし、いつまた違う道に分かたれるかどうかもわからない。彼、ウォロのことだ。その日は唐突に来るのだろうし、今この瞬間、いきなり席を立ち、外へ飛び出てしまっても、それはそれでさほど不思議なことでもないようにも思える。
ショウは声を掛けるか、かけまいかとしている間に、この時間こそが勿体ないのではないか?とも思って、座った状態から四つん這いでこそこそ彼の足元へと忍び寄った。
ちらりとウォロの白磁の瞳がショウを捉えて、むっと眉を顰めた。なにか文句を言いたそうな表情に、ショウは少し笑った。
「明日、どこか出掛けませんか?」
「はい?」
急に提案をしたショウに、ウォロは眉間の皺を深めた。
「明日も調査に出るんでしょう」
ウォロが顎で、先程までショウが弄っていたポーチを指す。ショウはうーんとひとつ唸って、首を左右に振った。
「調査はいつでもできますし、こう見えても働き者なので、たまにはお休みしても良いでしょう」
「…………」
「どこか行きたいところはありませんか?遠くでもいいですね。船、あたしまだ乗ったことないので、ウォロさんに連れてってもらうのも良いかもしれません」
「…………」
俯いて、押し黙ってしまったウォロを見て、立ち上がって彼の両頬を包むようにして手で覆う。
「泣かないで」
「泣いてませんけど」
即座に反発されるが、ウォロはショウのしたいようにさせていた。いつも結んでいる髪を解いて、肩に流れる長く潤いのある金髪。それさえ項垂れているように見える。
「泣いても良いですよ」
「一瞬で矛盾するな」
「いいですよ。あたしの前でなら」
そう言うと、ウォロの片目がショウを見上げる。そこに険はなく、不安そうな彼の姿があった。ショウは微笑んで、いつか分かたれる道を想う。
傍を離れる日がくるとしても、大事にしたい。
彼の傍にいられる時間を。一緒にいられる場所は、どこだっていい。
「意地っ張り」
そう言って笑うと、ウォロは困ったように溜息を吐いて、ショウの腰に腕を回した。