砂時計を廻す儀式のヒューゴx書記生♂️xヒューゴ
@vmon1202
【一夜の奇跡、一年の想い】
巨大な砂時計が、静かに音を立てて回り始めた。
中の砂がゆっくりと流れ出すたび、空では幾筋もの流れ星が夜の帳を切り裂くように走り抜けていく。
まるで空そのものが息をしているかのような、儚くも壮麗な光景だった。
今日行われたのは、二度目の砂時計を廻す儀式。
今度こそ、本物の流れ星が降り注ぐ、正真正銘の「廻し」の儀だった。
――一年前。
あのときの砂時計は壊れていて、儀式を行うことはできなかった。
それでも諦めきれず、この大切な場所を守るために、特別寮の仲間たちと力を合わせて“偽りの流れ星”を作り出し、儀式を成し遂げた。
けれど、不思議だった。
本物ではなかったはずのあの夜の光景が、今でも心を締めつけるほどに美しくて――。
そして今、再び目の前に広がるこの夜もまた、同じくらい忘れられない景色になっていく。
書記生は、このかけがえのない記憶を、一生の宝物として心に刻み込んだ。
「……見惚れちゃった?」
肩を並べて立つヒューゴが、わずかに笑みを浮かべてそう問いかけた。
冗談めいたその声に、書記生はゆっくりと目を閉じ、胸の奥に残るあの夜の記憶をそっと引き寄せる。
――確かに、見惚れていた。
一年前、光の中心に立っていた、あの人の姿に。
まぶしいほどに輝いていて、目を逸らすことなんてできなかった。
あれが「惚れる」という感情だったと気づいたのは、ずっと後のことだった。
「惚れています。 ……一年前から、ずっと。」
書記生の声は、風に溶けてしまいそうなほど小さく、それでも確かな響きを持っていた。
ヒューゴは黙って、その言葉の重みを受け止めるように、そっと頷いた。
「そう。君にそんなふうに想われる人は、きっと幸せなんだろうね。」
「どうかな……本人に聞いたこと、ないから。」
「じゃあ、聞いてみたら?」
「……うん。今度会えたら、聞いてみよう。」
その言葉は、未来への小さな願いのようで――どこか切なく、そして優しかった。
それは、まだ会いたいという想いをそっと込めた、再会への小さな誓い。
ふたりは、それ以上言葉を交わさなかった。
代わりに、そっと触れ合った手だけが、夜の光に紛れるように静かに重なっていた。
誰も、それには気づかない。
(終わり)