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君の過ごし方

全体公開 トワスト 2 2 2063文字
2025-05-24 19:12:01

第38回トワスト、テーマ「行列のできる○○」作品です。制作時間約50分。ランフォードとジェフの話です。

 その日、ランフォードはこの時代で過ごす家に旧知の仲である同族の男、ジェフを迎えていた。

 ようやっとジェフは、久し振りにこの並行世界で過ごすことを決めてくれた。こちらの世界にいると魔界にいるときより格段に会いやすいので、実はランフォードはかなり心弾んでいたりする。今にも顔が緩んできそうだ。

「いつからこちらで暮らすんだね?」

「もう少ししてからだな。いろいろ準備が必要だからな」

 ワイングラスを回しながら、ジェフはランフォードの方に視線を向けてくる。その表情は、いつになく穏やかであった。

「楽しみだね、君がこちらに来てくれる日が。……ところでジェフ。君はどうやってこちらで過ごすか決めたのかね? 今の時代は、何か職に就いたりしていないと少々怪しまれると思うよ」

 ランフォードとジェフの見た目は、人間で言うと三十歳前後といったところである。髭を生やしていないジェフなら、二十代後半にも見えるかも知れない。その年頃の人間が、仕事も、家事も、勉学も何もせずにただふらふらしていたら、少々、いや、かなり怪しく思われてしまう。

――らしいな。時代によって、本当に状況は異なる。この国は、前に来たときとは随分と変わった」

「そうだね。――で、どうするんだね? もし何も決めていないのなら、私と同じ会社に勤めるというのはどうだね? 君と一緒に勤めるのは、私は大歓迎なのだがね」

 ランフォードはこの時代で会社員をしている。決まった時間に出社して、仕事をする生活だが、案外それがランフォードは好きだったりする。 

 ジェフは首を横に振ると、ワインを一口、口に含んだ。

「お前は会社員というものをやっているのだろう。あれは一定の型にはまった生活だというではないか。俺様にはあまり向いてなさそうだ」

「そうかなあ。やってみたら面白いかも知れないよ?」

「型にはめられた生活は御免だ。……それに、何をするかは、もう一応決めている」

 ジェフの顔を見ると、確かに何かをもう決めたような顔をしていた。

「もう決めていたんだね。何をしようと?」

――店を、開いてみようかと思う」

 店。どんな店をジェフは開くのだろう。ランフォードの頭の中に、いろんな店が浮かび上がる。飲食店に、小売店。そうそう、雑貨店なんかもあった。店を構えて教える仕事なんかもまあ、広義の店に入るだろう。

 人にひけらかしたりはしないが、ジェフはとても頭が良い上に、器用だ。きっと何をやっても大繁盛するだろう。行列のできている店をさばいている姿は容易に浮かぶ――

「お店かね。それは、君に合っていると思うよ。行列のできるラーメン屋とか、カフェとかいろいろあるよね」

……おい、ラン。何だそのラーメン屋というのは。俺様が何の店をやろうと思っているのか聞いたら、行列なんて考えはすぐに消えると思うぜ?」

 にやりと笑って、ジェフは次の言葉を発した。

「骨董品屋だ」

「え? こ、骨董品屋? 茶器とか掛軸とかの?」

「そうだ。刀剣なんかもあるな。その骨董品屋だぜ?」

 骨董品屋。確かにジェフは、そういう道具類や芸術品が好きだ。だがそれでは――

「行列のできるお店にはならないと思うけど」

「だから何故、行列の出来る店を俺様に経営させようとする? そればかりが店ではないだろう」

「それはそうなんだけどね。君なら、行列のできる大人気のお店もできるだろうって思ったから」

「生憎、そういう大勢の人間との関わり合いをしなくて良い店を考えたからな。骨董なら見れば鑑定も出来るし、第一俺様の好みだ。何とかやっていけるだろうとな」

 ここまで決めていたら、ジェフの考えは変わらないだろう。ランフォードはジェフに頷いてみせた。

「まあ、もしかしたら行列のできる骨董品屋になるかも知れないからね。君はとても綺麗だから。――どこに店を出すかは、もう決めたのかね?」

「だからいい加減行列から離れろ、ラン。――店をどこに構えるかは決めている。お前に紹介してもらった商店街に、丁度空いているところを見つけたからな。住居もそこにしようと思っている」

 ああ、彩花商店街あやはなしょうてんがい――それなりに賑わっているその商店街には、確かに空き店舗があった記憶がある。あそこで、ジェフは過ごすのか。それはとても良いことにランフォードには思えた。彩花商店街は、人の空気も雰囲気も良いところだと、ランフォードは感じているから。

「彩花商店街に住まうのだね、ジェフ。それはとても良いことだと思うよ――出来たら骨董品屋じゃなくて、もっと行列のできそうなお店が良かったけど」

「俺様は骨董品屋がいいから、それでいいんだ。いい加減、行列は諦めるんだな、ラン」

 ふたりの笑い声が、部屋に響く。

 どんな店にしたいのかなど、聞きたいことはまだまだある。ランフォードは、ふたりのグラスにワインを注ぎ足したのであった。


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@Marumeroke
行列のできる骨董品屋さんww
た、確かに、一番行列とは縁遠そうな業種ではありますね…!と思って笑ってしまいました笑
高いものを扱うお店って、逆に詳しい人とか目利きの人しか来ない印象があるので、行列ができない分ゆっくり見てもらったり交渉する事はできそうですよね…自営業いいなあ…
ランさんの言う通り、店主の麗しさで違う意味での行列とか人だかりは出来るかもしれませんが←
しかしそれはそれとして、例のバンダナ姿で湯切りをしているジェフさんはとても様になりそうな気がします笑 お客さんがランさんとか朝恵ちゃんだけでもいいからラーメンを振る舞って欲しい…←
2025-05-24 21:55:28
@xxxyueyunxxx
≫Marumeroke 骨董品屋に行列は無いでしょうしねw とても縁遠そう。
骨董ってどれもこれも冗談のようなお値段してますものねえ。詳しい人とかしか行かないと私も思うので、ゆっくり店内を見られるでしょうね。何せ人がいないw
店主がいろんな意味で注目を集めそうなのはまあ仕方ないでしょう。
た、確かに……あのバンダナスタイルで湯切りをするジェフって、妙に様になる気がします。でも商店街のイベントでもない限り、ランフォードとか朝恵ちゃんにしか作ってくれなさそうですね、ラーメン。このふたりになら、インスタントじゃなくてスープから取った本格ラーメンを振る舞ってくれそうですよ!
2025-05-25 01:37:08

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