ヒューゴとミゲルの小話
CPなし
@vmon1202
【ありふれた日常】
「……子供が椅子につかまって立ち上がる。 歓声を上げようとしたその時、奥さんが肩を掴んで『もう少し様子を見よう』と止めた。 次の瞬間、その子は一歩を踏み出した。 手が椅子から滑ってすぐに転んでしまっだが、それでも自分の力で初めて立ち上がったその姿に感動して、ご両親は息子を抱き上げ、泣き出した。 その子はまるで何事もなかったかのように、ぼんやりと二人を見つめていたって。」
談話室で、ミゲルはバイト先の常連から聞いた話を語っていた。
それは小さくて当たり前の出来事で、意外なことがなげれば誰もが経験する、ごく普通な話だ。
それでも彼は自分がその場にいたかのように目を輝かせて喜んでいた。
「その子、きっと両親の反応が大げさだと思ってたんじゃないかな。」
「その子、まだ1歳だよ。」
無関心な感想を口にしたのは、幼馴染のヒューゴ・エゼルバルト・オブ・ベリルウッドだった。
ミゲルは思わずツッコミを入れた。
「俺が言いたいのは、親になる喜びだょ。」
ため息をつきながら、ミゲルはそう言った。
それに対して、ヒューゴはまだわずかに苦笑しただけだった。
ヒューゴはもちろん知っている。
ミゲルは、自分が見たものや聞いたことの中で美しいと思ったものを、まるでこの世のすべての喜びを分け合おうとするかのように語ってくれる人だということを。
その些細なことがどれだけヒューゴの心に残るかは分からないが、ミゲルは自身の喜びを伝えることを決してやめない。
それは、二人が出会って以来、変わることのない日常だった。
「分かち合う」ということは、相手に自分が見た景色をそのまま見せることでも、同じ感情を抱かせることでもない。
自分が感じた嬉しい気持ちが、何によって生まれたのかを伝えることーー。
それがミゲルからヒューゴが学んだ、「分かち合う喜び」というものだった。
(終わり)