リクエストありがとうございました!
「oneスタメガでかばうつもりは1つも無かったけど結果的にスタをかばったような状態になりスタスクの目の前で大破したメガ様」になります!
@fao_scherzo
眠る貴方の傍らで
オートボットとクインテッサの攻防をつまらなそうに睥睨するメガトロンを見つけ、スタースクリームは傍らに降り立った。
「あんまり前に出ないでくださいよ。狙い撃ちにされる」
「いつまでこうしているつもりだ?」
問いかけに、スタースクリームは肩を竦める。
暴れることができずにいる主は、どうやら欲求不満らしい。
「アレがある限り俺達は近づけない」
「……対空砲火がそんなに怖いか」
「そりゃあそうでしょうよ。空は俺らの領分だ。大抵の対空砲なら怖くもないが……アレは駄目だ。俺達を飛べなくする」
「…………」
スタースクリームが指し示したのは、奴らの母艦に取り付けられた見慣れない巨大なエネルギー砲。
充填に時間を要するのか、この戦闘で使われたのは数回だが初撃で半数のシーカーを墜とされた。
直撃しなかったはずの機体まで、近くに居た部隊が統率を乱し対空砲に狙い撃ちにされるか、糸が切れたかのようにそのまま墜ちた。
「奴らが狙ったのか偶然か、アイツを撃たれると広範囲に妙な電波が流れる。地上で言えばいきなり立ってた地面を失くされるようなもんです。初撃でまともに電波受信したサウンドウェーブが使い物にならなくなったとあっちゃ解析も妨害もできねぇ。大人しくボッツ共がどうにかするのを待って仕掛けるのが早いんでしょうが……」
肝心のオートボットも、完全武装の戦艦相手に攻めあぐねている。地上を埋め尽くすクインテッサの歩兵に足を止められ、戦線は押され始めていた。敗戦するならせめてもう少しクインテッサの数を減らしてくれれば、こちらも後がやりやすいのだが、あまり期待はできないのだろう。
スタースクリームは軽い調子で状況を説明しながらも、厄介な事態に内心歯噛みする。このまま負けるとは思わないが、損害は計り知れない。
今後あの兵器が導入されるとなると、早急に対策も必要になるだろう。
スタースクリームの説明を聞いているのかいないのか。メガトロンの視線は件の主砲を見つめたまま、動かない。
「主砲さえなくなればお前達は飛べるのか」
「当然。制空権は我らの下に戻ります。空が戻ればどうとでも」
だからここは大人しく機を待つべきだ。
そう、伝えたつもりだったのだが。
■
スタースクリームのくだらない言い訳を聞き流しながら、クインテッサの動きに注視する。
どうやら奴らもアレがシーカーの天敵だと言うことには気付いているらしい。エネルギーチャージの隙がでかいことも、当然分かっている。オートボット相手に撃ち込んだ隙に空を奪い返そうという魂胆は見抜かれているのだろう。
どうにかして奴らに一発撃たせれば、それを合図に空から強襲できるというのに。オートボット相手には使うまでもないらしい。
こうなればどちらが先に痺れを切らすかの我慢比べになるのだろうが……生憎それに乗ってやる気は毛頭ない。
「主砲さえなくなればお前達は飛べるのか」
「当然。制空権は我らの下に戻ります。空が戻ればどうとでも」
最後に確認を取れば自信に満ちた声が返ってくる。
それさえわかれば充分だ。
「ディセプティコン! 出撃用意!」
「は──」
まずは一発。
空に向かってカノン砲を撃ち上げ高らかに宣言する。音に反応してクインテッサが動き出す。
瞠目するスタースクリーム越しに、標的を失くしていたクインテッサの主砲がこちらを向いた。
フルチャージされたそれが正確にメガトロンの姿を捉える。
隙を作らせ一発殴っては隠れて、こそこそと嫌がらせじみた攻撃を──なんて、満足できるわけがないだろう。
やるならば、徹底的に。確実に破壊する。
サイバトロンの空が誰の物なのかを知らしめる。
未だ驚愕するままのスタースクリームを崖下に突き落とし、真っ直ぐに撃ち込まれる砲撃の前にカノン砲を向けた。
どうやら奴らの砲身は一発に随分とエネルギーを使うらしい。ならばそいつを使わせてもらおう。
砲身にエネルギーが集まったところに最大火力で撃ち込めば内部から誘爆し砲台を破壊できる。
一手遅れたために僅かにタイミングはズレたが、些細なことだろう。照射時間の長さが仇となったな、と笑みさえ浮かべて。
自らの損害を度外視した行為ではあるが、これが一番効率が良い。
「────メガトロン様ッ!!」
エネルギー波に飲み込まれる白銀に、スパークが凍り付くような感覚が全身を支配し、飛び方すらも忘れてしまう。ノイズが混じる程に張り上げ叫んだ声は内側から膨れ上がり暴発した砲身の音にかき消された。
爆発と衝撃に巻き込まれたクインテッサとオートボットの悲鳴が戦場を混乱へと突き落とす。
落ちていく中で見えた光景に手を伸ばす。
光を失くすオプティック。
残骸のように転がる機体。
辺りに散らばる彼だったモノ。
ブレインに過る、かつての敗北。
物言わぬガラクタに成り下がった主の残骸。
「~~~~ぁぁあああああああああああ!!」
絶叫と共に軋む空を裂きながら、崩れた主砲に群がる肉袋共を音速を超えた翼で突き破る。
磨いた機体が穢らわしい体液で汚されるが知ったことか。
蜘蛛の子を散らすように逃げ惑うそれに、瞬時にビークルを解除し奴らの艦に降り立ち頭を撃ち抜いていく。
雑兵共を片付けながら、視線はせわしなく周囲を探り……見つけた。
周囲の兵士とは姿の違う一匹。アレが今回の指揮官か。
逃げようと背中を向けるそれに飛びかかり、邪魔が入らないように屋根の上まで引き摺って飛ぶ。
普段であれば触れることすら憚れるが、今は妙に柔らかく粘ついた気色の悪い感触も気にならなかった。
丁重にお連れした指揮官殿を屋根の上に叩きつければぐちゃりと何かが潰れる音がした。
まだ生きているのか、尚も逃げようと這いつくばるそれに照準を合わせる。無駄に重さはあるそれを引き摺ってきただけで痛む腕に舌を打つ。
速さの為に薄い装甲は、彼のように頑強にはできていない。彼がそうするように、素手で奴らの甲殻を破ることはできないから。仕方ないので自らの機銃で芯にある臓腑を撃ち抜けば激しく痙攣した後に事切れた。
生臭い死骸は無造作に投げ捨てる。甲板を転がって、地表に墜ちていくそれに最早興味はない。
主砲が落ちた瞬間から空を取り戻したシーカーズにより既に他もあらかた片が付いている。これでこの船は羽を捥がれた虫に成り下がった。こちらの勢いにオートボット共も調子付き、地上も既に勝敗が見えている。
ならば、後はオートボット共が勝手にするだろう。
「ディセプティコン! 帰還するぞ!!」
返事も待たずにその場を飛び、急いで彼の下へと舞い戻る。
着地の仕方も忘れて勢いのままに残骸に飛びついて、生死を確認する時間すら惜しいとばかりにスクラップ同然の機体を抱え上げると最高速度で基地を目指した。
■
治療室の前で膝を抱えて蹲る。
残骸となった彼をショックウェーブに引き渡し、既に丸二日は経っている。
その間、スタースクリームはこの場所を動こうとはしなかった。
ショックウェーブが籠り切りということは、治療は続けられているのだろう。
兵器の開発や技術開発であればスタースクリームも得意とするものではあるが、治療となれば専門外。
彼らに任せるよりほかにやることがない。
こんな時ばかり、彼の無事をプライマスに祈ってしまいたくなる。
祈ることの無意味さなど、とうの昔に嫌というほど身に染みていると言うのに。
それでもスパークの奥で消えない不安をどうすることもできずに、ただこうして待つことしかできずにいる。
一秒経つごとにスパークの熱が奪われ、冷たい何かが胸の内に広がっていくようだ。
このままでは先にこちらのスパークが消えてしまうかもしれない、なんて考えていれば、治療室のロックが外れる音が静寂を乱す。
顔を上げれば開かれた扉の先に、ショックウェーブが立っている。
いつもは騒がしい奴の肩は僅かに沈み、一つだけのオプティックの光も弱い。
気落ちした様子のショックウェーブの姿に、スパークがざわつく。
「メガトロン様は……」
「ご無事だ。リペアは終わらせている。回路も正常だ。ただ……ステイシスロック状態に入られた。いつお目覚めになるかは分からない」
こんな時、サウンドウェーブがいれば彼のブレインの診察も容易だったのだが。
生憎、彼はクインテッサの電波を受けてからまだ回復しきっていない。
サウンドウェーブの調子を見てくると言い残したショックウェーブを見送り、スタースクリームはゆっくりと彼の治療室へと足を踏み入れた。
残骸のようだった彼の機体はすっかり元の白銀に戻っている。
千切れた手足も、ひび割れひしゃげた装甲も、潰れたインシグニアも、元の形のまま、その胸に刻まれている。
それから、更に三日が過ぎた。
彼に繋げれた計測器は規則正しい音を刻み続ける。画面に表示される数値も正常。ただ、眠っているだけ。
回復したサウンドウェーブも様子を見に来たが、外部から無理に解除するのは推奨できないらしい。
当然だろう。あれだけの損傷を負っていたのだ。こうして生きているだけでも奇跡だ。
「スタースクリーム。そろそろお前も休め。リペアしてからまだ一度も休んでいないだろう」
「ん。後でな」
今日もメガトロンの様子を確認し、計器を繋ぎ直したショックウェーブに声を掛けられるが、今はそんな気分にもなれはしない。
部屋で一人でいるよりも、ここに居る方がよほど安心できる。
そう言えばショックウェーブは頭を振って、傍らにエネルゴンの乗った器を置いていく。
「エネルゴンは置いていくが、全部は食べるなよ。メガトロン様がお目覚めになられた時のためでもあるのだから」
「知ってる」
「…………」
ため息と共にショックウェーブが部屋を出れば、再び二人切り。
彼に繋げられたチューブからゆっくりとエネルゴンが送られていく。
相変わらず正常値を映し続ける代わり映えの無いモニター。
一定の音を崩さない計測音。
飽きる程にこの場所に居るのだ。些細な異変でもあればすぐに気づくと言うのに。
呆れる程に、変化がない。
やることもなくて、いつも通りぼんやりと眠り続ける彼の顔を見つめていた。
いつもは休息中ですら険しい表情を崩さないのに、静かに眠るその表情はどこか穏やかで、歳相応のあどけなさすら感じられる。
「……アンタは、眠ったままのが幸せか?」
声を掛けたのは気まぐれだ。
何日もこの部屋に籠っていれば、そんな気まぐれも起こすだろう。
返事がないと知りながら、問いかける。
裏切りも怒りも何もかもを忘れて、静かに眠ることなんてここ数サイクルの間一度も無かっただろう。
メガトロンとなってから、初めて訪れた安息だ。眠り続けてしまうのも頷ける。
……このまま、起きることが無かったらどうすれば良いのだろうか。
僅かに過った愚考にスパークが凍り付いたように底冷えする。
そっと頬に手を伸ばし、穏やかな寝顔をなぞる。
触れた指先は震えていた。
「…………」
閉ざされた瞼の奥にあるオプティックは、一体何色をしているのだろうか。
燃え盛る溶鉱炉を思わせる程の鮮烈なまでの赤色か。
堕ちていく陽と同じ、昏い影の差した黄昏の色か。
それとも、かつての金色に戻ってしまっているのだろうか。
あれほどスパークを奪われた色だったのに、上手く思い出すことができない。
彼のオプティックは、どんな色をしていただろうか。
「メガトロン様──」
胸に刻まれたインシグニアに手をついて、身を乗り出す。
呼びかけても反応の無い彼に、何を想ったのかそっと口付ける。
重ねた唇に温度はない。
当然、反応が返ってくることもない。
ただ、彼がここに居るのだと確かめたかった。
虚しい行為に何をしているのかと自嘲して、唇を離す。
ショックウェーブの言う通りだ。一度休んだ方が良いのだろう。
部屋に戻ろうか、と。
視線を上げて息を呑む。
あの日と同じ赤が、スタースクリームを射抜いていた。
冷たく鋭い鋼のように真っ直ぐに。
怒りと憎悪を燃やした炎のように。
嚇怒に染まった鮮烈な──あかいろ。
スタースクリームを映したオプティックに言葉を失くす。
「…………寝覚めに見る光景としては最悪だな」
「……はっ倒すぞクソガキが」
相も変わらず、クソ生意気な物言いに泣きながら笑っていた。