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cat has nine lives

全体公開 みずいこ・単話 4 1298文字
2025-06-04 23:20:48

すこしふしぎ雰囲気みずいこ
イコさんに魂を預ける水上の話

Posted by @a_yuuzora

俺、命を九つ持って生まれたんです。と、唐突に水上は言った。
あまり聞きなじみのないタイプの冗談に、生駒はぱちくりと目を瞬かせる。ボケにしては形状が曖昧でどうツッコんでいいかわからない。そもそもこれはボケなのだろうか。以前聞きかじったゲームに似たような性能のキャラがいたような。
「ほんま? そら、お得やなあ。めっちゃ強いスキルやん」
「でしょ」
「いっぺん死んでも八回まで生き返れるってことやんな」
「八回死に損なうって感じすね、俺的には」
同じ内容を話しているのに、時々こういうところで二人の価値観は嚙み合わない。妙に後ろ向きな水上のこの思考を、生駒は少し嫌だなと思うことがある。
「せや、九つもあるんやったら、いくつか俺にくれへん?」
「はあ、別にええですけど」
「ええんや」
「いくつご入り用で」
「とりあえず八つやな」
「えらいごっそり持っていきはる」
「人ひとりの体に九つも魂があったら重すぎるやろ? だから俺が余分を預かったんねん」
「余分ちゅーわけやないんですけど」
「残り一個しかないて思ったらお前もちゃんと自分のこと大事にするやろうしな」
水上は頼まれてもいないのに自らを削るようにして他人に尽くすところがある。本人はやりたくてやっていると言っているが、水上の働きの恩恵を受ける側である生駒としては自傷行為のようなそれを見ていられないと思う。そして、見ていられないと思っていることに、おそらく水上は気づいている。証拠に、指摘を受けた水上はへらっとごまかすように笑った。
「イコさんに八つ渡したとして、イコさんが望むような俺になれるかどうかはわかんないっすけど。でも魂を差し出すのは悪くない案っすね」
そう言って水上は胸に手を当ててから、手のひらから八分割トリオンキューブを出す。
「イコさん、手ぇ出してください」
言われるままに差し出せば、その上にぱらぱらとトリオンキューブが落とされ、そして手の中に吸い込まれるようにしてキューブは融けて消えた。
「何、今の」
「俺の魂八つ分です」
「意外と軽いんやな」
「一個あたり二十一グラムですからね」
「そうなんや。うん、確かに預かったで」
「それはもう差し上げたもんなんで、煮るなり焼くなりギャンブルの掛け金にするなり競売にかけるなりお好きにどうぞ」
「八つもあるなら色々使いどころありそうやな!」
「一応元は俺のモンなんで大事にしてくれると嬉しいっす」
「そりゃあもちろん」
「あとソレ持ってったまま勝手にくたばらんとってくださいね、俺取り返しにいかれへんので」
「それは大変やな、気ぃつけるわ」
キューブを受け取った手のひらを握ったり開いたりしながら生駒は軽く受け答える。何の茶番なんだろうとは頭の片隅で考えていたが、猫のような縦長の瞳孔の金の瞳がどこか安心したように緩んでいたので、水上はきっとこの不思議なごっこ遊びをしたかったのかもしれない。気が楽になったのならよかった、と思った。

この賢く優秀で遊び心も持ち合わせた参謀が、かつて抱いた大きな夢をあきらめたとき、夢と一緒に命をひとつぶん失くしていたことを、生駒は知らない。


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