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イチハチオールイン

全体公開 銀魂二次創作 3 49 1761文字
2025-06-06 12:01:47

本編十年後の沖土、沖田くんが土方さんを口説く話。やや大人め(当社比)

Posted by @bbbcde519

 十年前、俺あんたと寝たかったんですよね。
 そう沖田が言った時、土方はちょうど隊服を脱ぎかけたところだった。二年前に屯所の大改築を行って執務室も当世風に改められ、襖の頃よりもずっと暖房が効くようになった。便利にはなったが暑がりの副長にとっては少々暖かすぎたらしい、沖田と二人連れ立って副長室に帰ってきてすぐに隊服から袖を抜こうとしたその瞬間を突いた一言。
 土方はぴたりと動きを止めた。
「どういう意味だそりゃ」
「どうもこうも、そのまんまで」
 俺はあんたとセックスがしたかったんでさァ。沖田はあり得ないほど一語一語はっきりと発音した。土方の目は驚きに見開かれ、そしてすぐに後悔した顔付きになった。これだけ明瞭に言われてしまえば聞こえなかったふりもできない。土方は脱ぎかけの隊服を着直した。沖田は薄氷のように笑う。
「ちゃんと過去形で言ったでしょ。十八歳の俺の話で、今じゃねえです」
「なんでそんな昔の話をすんだよ」
「まあ聞いてくだせえよ」
 沖田は部屋の真ん中で振り向いて上司に向き直る。土方は突っ立ったまま、煙草すら咥えない。信じられなさと信じたくなさがちょうど半々といった顔で、黙って俯きがちになる。目線が合わないことに勘の良い沖田はすぐに気がついたらしい。普段あんなに真っ直ぐに人の顔を見つめる鬼の副長が、動揺して沖田の顔を見れないでいる。
 告白は度肝を抜くのに十分な威力があったらしいと、沖田は満足気にため息をついて、土方の顔を下から覗き込む。土方は最近前髪を上げているからその目の最奥が揺れているのもよく見えたらしい、沖田は甘く笑った。
「俺、あんたのその顔見るために黙っておいたんですぜ」
……
「あんたがこんなに動揺してる顔なんて、滅多に見られねえ」
 十年分の価値はあるな、待ってた時間差し引いて釣りがきまさァと沖田は陶酔が混じった声で言う。美少年の面影はおさなさと共に削がれたが、研ぎ澄まされた鋭さが表面に出てきた美貌の青年は、年嵩の男前に一歩近づいた。前髪からのぞく青い目から逃れるように土方は眉を顰めた。
 沖田は歌うように告げる。
「昔あんたと寝たかったのは、そうすればあんたがどこにも行かないんじゃないかと思ったからなんで。あの頃のアンタは真選組第一で、真選組には俺の剣の腕が必要だった。だから俺がどーしてもしたい、させてくれなきゃ真選組辞めてやるっていえば折れてくれないかなと思ってたんでィ」
 寝ないでいいかと思えたのは、萩から帰ってきた後のあんたは真選組にずっといてくれそうだったから。真選組にいるあんたをずっと見てたかった、それだけで俺はよかった。
 一人で淡々と喋り続けた後、でも今のあんたは、と沖田は首を傾げた。
「土方さん、あの話受ける気でしょ」
 あの話。土方は先ほど松平から聞いた話を思い出す。警察庁本部への異動打診、いわゆる栄転。
『近藤もおめーも、いつまでも真選組にしがみついてる歳でもあるめェよ。頭が上にいかねーと後任も育たねえ。総悟も立派になったし任せてみろよ』
『おめーには組織作りの才ってやつがある。真選組はもう大丈夫だ。本部でもっと大きく、より強い組織を作ってみてくれねえか。この国のために』
 先ほどの松平の声が耳に蘇る。いつも尊大な上司の懇望は自尊心をくすぐるには十分で、気持ちが揺らいだ、いやかなり傾いたのは事実だった。帰りの車中ではずっとそのことを考えていた。同じく黙っていた沖田が何を考えていたかまで心を配る余裕がなかった。
「俺はアンタを失いたくない」
 土方はやっと口を開いた。
「お前もしかして俺のこと口説いてんのか」
 沖田は大きな瞳を瞬いてからこくりと頷いた。
「まあ、有体に言えばそうです。伝わって嬉しいですぜ」
 どこにも行かないでくだせえよ土方さん、と沖田は歳に似合わない幼い声で言って、土方の腕にそっと右手を置いた。




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 土方さんを失いかけるくらいのことがないと、沖田くんは土方さんを口説けないんじゃないかと思って書きました。逆にいえば大きなことがあればなりふり構わず全賭けできるかもしれないとも思いました。
 ぜんぜん変わらなさそうで変わっていけそうな二十八歳と三十七歳の二人に対する萌えがあります。


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