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今も、昔も、これからもずっと…

全体公開 ドラヒナ以外のお話 4 3174文字
2025-06-09 09:52:31

ご真祖様の誕生日ネタとして書いたお話ですが、ご真祖様視点のドラヒナ夫妻の姿に、自分達を思い返すお話になりました。捏造設定で、この事務所はロナサン夫妻と共に暮らす、二世帯住宅になっている事。両夫妻の子供達が結婚している事。ロナルドくんを見送った後、ドラルクさんが退治事務所を引き継いでいる事等が挙げられます。ご注意下さい。
自分の城に帰って、夢の中で『可愛い子』に会いに行くご真祖様のモノローグを追加しました。
2024/11/09 に上げました。

Posted by @kw42431393

 (しー、静かに。見てください、可愛い寝顔でしょう?)
 (ヌー。) 
 惚気気味に片目を閉じてみせながら、孫は机に突っ伏して眠っている少女の肩に毛布を掛けた。
 隣で、ご主人の真似をして口元に指を当ててみせながら、『ヌシヌシ』とジョンが頭を撫でてあげているのが、印象的だった。 

 赤毛のお嬢さんが、まだドラルクの監視員だった頃。
 19歳になったばかりで、吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長だった頃。
 口元にクッキーの食べかすを付けたまま、幸せそうな寝顔をこちらに向けている。
 (私の自慢のハムスターです。世界一可愛い、私の
 そこから、下に続く言葉は、永遠に変わる事はないだろう。



 「ハロー、エブリワン。お暇?」
 「げっ!?おっとと。」(ドラルクのじいさん今日は、何の用かよ?」)
 「ヴェ~!!っと。」(お祖父様、今日はイベントとかありませんよ?)
 私が思いつきで、来るのはいつもの事。
 なのに、今日は変だね?
 孫もロナルドくんも、急に小声になっちゃって。

 「どしたの?」
 (し~っ。ここじゃ何だから、じいさん連れて、スナバでも行こうぜ。)
 (それもそうだけどそうだ。じゃあ、ちょっとだけですよ?静かに。)
 手招きする、彼らについて部屋に足を踏み入れる。
 (あ、なる。ウフフ。)
 (まぁ、そういうこった。うちの嫁さん達とチビ達さ。折角、気持ちよく寝てんだから。)
 そこにいたのは、掛けられた毛布にくるまれて、川の字に寄り添って、幸せそうに眠っている4人と1匹。

 「ヌ~、ヌ~。」
 「ん~、にゃう。」
 「ちん、ちん。」
 「すぅ、すぅ。」
 ロナルドくんの奥さんになったオータムのお嬢さんに、その息子くん。
 体を丸めて、我が子と一緒に毛布に収まっている姿は、いつ見ても本当の猫みたいだよね。
 真ん中には、ジョンがいて
 (フフ引っ張りっこされている。)
 やっと5歳になった、ドラルクの娘とロナルドくんの息子に、両側から手を取られていた。
 人気者だもの、仕方ないもしかして、愛され過ぎて、ちょっと困っているのかもしれない。
 (見てください、可愛い寝顔でしょう?)
 ドラルクが、トントンと私の肩をつつく。惚気気味な顔は、ドラウスの若い頃によく似ていた。
 そして
 「う~ん、みなくっき~、とうさまのくっき~、おいしいな。」
 娘を胸に抱いて、幸せそうに眠っているのは

 (私の自慢の奥さんと娘です。世界一可愛い、私の。)



 高等吸血鬼に、昼の子達を下に見ている者は多い。
 赤毛のお嬢さんに出会った当初のドラルクにも、そういう所があった。
 ドラルク城が破壊されて、破壊した当人の家に転がりこんでこの街で過ごした年月は、孫の認識をかなり変えていた。
 自慢のから下が、変わっている。
 それで、よかったと思う。『城ぐらい』と言ったけど、本当にそれだけの価値は、あった。
 ドラルクは、自分の監視員であったヒナイチくんを伴侶に選び、二人の間には娘が生まれた。
 自分の心臓に手を当てる。
 今もそこには、私にとって、この世で一番大切な昼の子の血が流れている。
 (嬉しいね、ミナ。また、今度遊ぼうね。)
 ふくよかな曾孫の頬をつつく。幸せそうなその顔は、私自身となったその女性と酷似していた。

 (お祖父様、行きましょう。今日は、おつきあい致しますよ。)
 (あ~、6人と1匹でのんびり過ごすつもりだったのに。仕方ねえな。) 
 (おけ。じゃあ、レッツゴー。)



 「ハロー、ドラルク。お暇?」
 「やれやれ、連絡ぐらい下さいよ。まぁ、いいです。これを片付けてくるので、中でお待ち下さい。」
 「ヌーヌ、ヌーヌ。」

 アルミニウスと共にいる時も思ったけど昼の子と共に暮らす時間は、あっという間に過ぎてしまう。
 つい最近まで、こんなに小さかった曾孫は大人になり、この事務所で姉弟同様に育った青年と、所帯を持って巣立って行った。孫に何より、多くの昼の子や吸血鬼達にも愛され、『ヘルシングの再来』と言われた伝説の退治人も鬼籍に入り、今、『ロナルド吸血鬼退治事務所』にいるのは

 「お嬢さんは、元気?」
 「ヌヌヌン。」
 「ウフフ今、体を拭いたばかりでしてね。さっぱりして、眠っていますよ。」
 洗面所にたらいとタオルを置くと、孫は相変わらずの惚気顔で、部屋に私を招いてくれる。
 「こちらにどうぞ、お祖父様。」
 あれから何年経ったっけ?
 70年ぐらい経った様な気もする。
 これから、会うのは相棒を見送ってから、気落ちしていた孫に残された、生き甲斐の大きな欠片。
 私もそうだった。ミナがドラウスを残してくれなければ、亡くなる前に全ての血をくれなければこの体は、塵になっていたかもしれない。
 愛した昼の子達が天寿を全うするまで、生活を共にし、世話を焼き続ける事が出来るドラルクを。
 私とミナ、アルミニウスが出来なかった事を、昼の子達と協力しながら実現し続けたドラルクをどんなに誇らしく思った事か。

 (見てください、可愛い寝顔でしょう?)
 (ヌンヌン。)
 昼の子達と過ごした年月によって、落ち着いた雰囲気を纏い、伝説の退治人を支え続けた相棒として、人々の尊敬を集める貫禄を身に着けてもこれだけは変わらない。
 リクライングベッドに横たわって、安らかな寝息を立てている女性の、白髪混じりの赤毛を撫でる。
 かつて、太陽の様に鮮やかな赤毛を靡かせて、伝説の退治人と共に、縦横無尽にこの街を飛び回っていた義理の孫娘を。

 (私の、自慢の奥さんです。世界一可愛い、私のお嬢さんです。)
 おそらく、彼女を見送ってからもドラルクは、彼女の事を『お嬢さん』と呼び続けるのだろう。
 私が、今でもミナの事を『可愛い子』扱いしている様に

 



 「じゃ、おやすみ。」

 はい、ご真祖様。
 
 おやすみなさいませ。

 長年連れ添った、マジロ達に背を向ける。もう夜が明けたから、私も寝なくっちゃ。
 嘘私は、本当は眠る必要はない。疲れるという事もないし、太陽に当たった所でなんともない。
 1日は24時間しかないのだから、本当はもっと遊んでいたい。
 じゃあ、何故しないのかって?
 私のお暇につき合うドラウス達が、疲れちゃうから?それもある。
 私が1日中はしゃいだら、戦後処理が大変だから?それはそれで、楽しそう。
 でも、やらないよ。だって
 「今から、行くよ。ミナ私の可愛い昼の子。」
 そう言って、棺桶に身を横たえる。目を閉じる。
 君の血を吸い尽くして、私達はひとつになったけど。
 今触れているこの胸は、君のモノでもあると知っているけれど。

 『やあ!また来たな、✕✕✕✕✕!今日は、何して遊ぼうか?どこに行こうか?』
 『おまた。ミナが決めて。君と一緒なら、何でも楽しい。君と一緒なら、どこでもいい。』
 苦笑する君を背に乗せると、私は竜となって、15世紀の祖国とは違う、20✕✕年の日本の空を駆ける。
 首をねじ向けてそびえ立つ高層ビル、豆粒の様に小さな行き交う人々を、嬉しそうに見下ろすミナの姿を確認する。この瞬間が、一番幸せだ。
 それは同時に、皆と遊んでいる夜中では、お茶目な仮面の下に隠せていた願いを、再確認させるのだ。

 ミナやっぱり、君の手に触れたいよ。この目で、君の姿を見たい。
 君の顔を見て、いつもの元気な笑い声が聞きたい。
 その望みが叶うのはこの棺桶で見る、夢の中だけなのだ。
 
 


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