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アホのシモトークする台牧

全体公開 VWV 単発・短編 2 4288文字
2025-06-16 19:33:21

性に関与するタイミングを逃していた二人が中学生みたいなアホの会話をするだけ。ほぼ会話劇。
私の趣味により一旦台牧ですが、全然リバれそうな二人でもある。

Posted by @neastrig

 こいつ、多分あまりシモの知識がないな?
 自分のことを棚にあげて両者ともに察したのは、ほぼ同時期のことだった。

 片や人間台風。
 年齢だけは重ねているが年数に対して経験は微々たるもの。その少ない経験とて相手を傷つけないように彼なりに紳士的に向き合った結果、大した冒険はしていない。
 結果、年の功で聞いた言葉の数は多くともその年齢ゆえに「それ何? 」などと聞けないまま百五十年を生きてきた。
 片や強化人間。
 孤児院育ちの少年は思春期手前に楽園からドブに戻された。ドブで殺しの技術だけを磨き、強制的に大人になる改造手術や仕事で四年。果ては迷子探しと子守に追加二年と少しを費やした。
 見た目こそ精悍な顔つきの青年だが、その実「そっち」を教わる機会も暇もなく、さて経験とてどれほどあるものか。
 これが平和な、かつての地球のジャポンであれば話も違っただろう。調べることもできれば、知らずに誤魔化すこともできたかもしれない。
 だがここはノーマンズランド。
 治安の悪さゆえ一部の育ちのいい者以外はそういった知識もなく育つことは不可能だった。知識のない者は淘汰される。もっと具体的に言えば酒場だろうとなんだろうと舐められるのだ。金さえあればある程度は埋め合わせられるだろうが、そのようなものは一握りの金持ちにしか許されていない。
 端的に言えば、百戦錬磨一騎当千お騒がせのコンビは性的知識がろくになかった。そして聞く相手もいなかった。埋め合わせる金もなかった。
 だからこそ、お互いに同じようなものだと気付けばやることは決まっていたのだ。
 無論、聞けない知識の探求。つまりはアホとバカによる猥談であった――――

 宿屋の一室で、男たちは机に酒瓶を置いてカップに中身を注ぎ合った。かちんと鳴らすグラスは厳かですらある。
 彼らを追う保険屋の二人組が見れば「どのような危ない話をするのか」と固唾を飲んで見守るであろう光景がそこにあった、のだが。
「パイ……ってことは多分おっぱいだよね」
 至極真剣に呟いたのは、橙色にサングラスを反射させる男だ。
 肘をたてた両の手を組み、口を隠すかのように両の親指で顎を支えている。その様はまるで思い悩む司令官のごとく心の内を見せない姿だった。
 もっとも、言葉により中身が文字通りカラッポであることが明らかである。台無しだった。
 対して正面、相方と同じく室内でもなお真っ黒なサングラスを外さない男は逆に椅子に身体を預けてからりとガラスの中の氷を鳴らしている。飴色の酒はとろりと濃い。それをクッと煽る様は文字通り男前といえただろう。
「まあ、あとズリってからには擦るんやろうな。ナニを」
 言葉を発さなければ、という但し書きが入るのだが。
 本日の議題。パイズリ。
 男二人は、今日もまた街で耳にしたシモらしき言葉を解明すべく会議に明け暮れるのだ。
「いやさ、ナニってのは早計すぎないか? だってパイのズリだぜ? めちゃくちゃおっぱいを擦るように揉むのかもしれないじゃん。痛そ……
「おどれオッパイ好きやな~? 前もパイが付いてるからオッパイや言うて結局違うたのあったやんか」
「あれは最初からオッパイに行ってません~パイプカットのパイプが納得いかなさすぎてパイ・プカットの方向で発想の転換を試みただけです~」
 カパカパと酒を開けながら煽りあうヴァッシュとウルフウッドに遠慮はない。足元にはまだ買いこんできた未開封が数並んでいる。一本目が空になり次の一本が拾い上げられるのも時間の問題だろうか。
「あれ結局なんやったっけ、タネ止めるちゅうの? さすがにびっくりしたのは覚えてるんやけどどこで正解聞いたんやったか」
「あー、盛り上がった3日後くらいに別の街で聞いた浮気性の旦那の話だろ? わざわざ手術するってんだからびっくりしたよな。あれなかったら俺たちずっとオッパイのなんか踊りとかだと思ってただろ」
「それはトンガリだけやで。ワイずっとナニのほうや言うてたし。カットってなんやとは思てたけど」
「そういう逃げはどうかと思うんだけど? お前だってパイプをカットって怖すぎるって話してたから納得はしてなかっただろ~、……
……
 文句を言い合っていた彼らは、コップを口につけてぴたりと黙った。
 そのまま空にしたそれをがたんと机に叩きつけるように置き、次にそれぞれが瓶を一本拾って開けて互いに相手のカップに注ぎ入れる。ほぼ同時に満たして瓶を下ろし、すぐにグッとと煽るのもまた同じ。
 空にしたそれをもう一度机に叩きつければ。
「「ダハハハハハハハハ!!! 」」
 声を揃えて腹から大笑いした。ご機嫌だ。理由は簡単、この宴会を始める前に二人はしっかりと酒場で飲んできているからだった。最初から酔っ払いなのだ。さすがに素面で話し合うのは抵抗があるらしい。
「で、パイズリやろ? ズリっちゅうからにはあれや、ズリネタとかと同じやから、やっぱりナニちゃうんか」
 ズリネタは初期の議題だったワードだ。まだお互い引き出しがあったので概ね正解にたどり着けた難易度Eのお題だった。
「ネタは話のネタとかのネタだって結論だったよね、あれ。そうなるとオッパイをネタに自慰ってこと? 」
「いんや、さすがにパンチが弱いやろ。今日のおっさん見たか? 誇らしげにパイズリしてもろた言うてたやんか」
「してもらったってことは一人で完結しないのか」
 となると。ヴァッシュは難しい顔で空中に二つの手をかざす。開かれていたそれの指をゆっくりと曲げる。
「揉みながら、自慰……? 」
「なんで両方揉んでんねん。ナニ放置やんけ」
「たしかに? あ、そこは自慰じゃなくてお姉さんにいい感じにしてもらうとか? うーん、でもこれだとパイのズリって感じしないな」
 推理は早くも行き詰まりを見せる。ウルフウッドは首を傾げたヴァッシュを眺め、二つのグラスにさらに酒を注いだ。そのまま下ろすのも面倒臭がって瓶を胸に抱いてから、もしやと閃いて瓶で自らの胸を押す。
「パイを擦るんやのうてパイで擦るんちゃうか」
 パッと顔を上げたヴァッシュが「お前、天才なんじゃないか」などと溢れるようにいうものだから、ウルフウッドは気をよくする。
「難しいこと考えるもんやないっちゅうことやな。文字通りや。ネタとは違うてそのままダイレクトにいく。カー、あのおっさんええ趣味しとるわ」
「でも胸に当てるだけならお尻でも同じじゃない? あとしてもらったっていうのが僕はすごく引っかかっててさ」
……それもそうやな」
 こいつやたらとそこに拘りよる、意外と何かしてもらう系大好きか?と は口にしない。野暮というものだ。
 思考を変えるべくウルフウッドは瓶を机に立てて他の案を探し、思案する。だが「何かをしてもらう」、その前提からいまいち繋がらずに指で瓶をまた遊びくるくると動かすくらいしかできなかった。
 だが、これが決定打になった。その景色から天啓を受けた男がいたのだ。
「ウルフウッド、手を止めて」
 ヴァッシュ・ザ・スタンピードである。
――もしかして、挟むんじゃないか?」
「は? 何を」
「ナニをだよ。……おっぱいに」
 ヴァッシュがじっと見るのはウルフウッドが置いた瓶だ。もっと正確に言えば、胸の前に君臨する立派な瓶だった。先程までの回転を失い、天を貫いている。そもそも瓶は縦に長いものなので貫くも何もないのだが、ヴァッシュにはそう見えていた。
「なるほど? 」
 ウルフウッドは止まった瓶を見下ろした。胸なあ。
「つまりはあれか、パイとパイの間に挟んで」
「そう、ズリズリっといくんじゃないかと」
 実を言うとこの会議がきちんと正解に行くことは多くはない。だが、この時ばかりは二人も「流石に今回は大正解ではないか? 」と膝を打った。パイズリ、名は体を表す。そのままの意味を示す言葉だったのだと、彼らは確信した。
「さすがやな、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。正確無比の腕前や」
「褒めるなよ。お前のセンスあってこそだ」
 讃えあい、男たちは先の2本を空にする。込み上げてくる笑いは勝利の笑いだ。そしてバカの笑いだった。
「いやあ、しかしよく考えるもんだよね。挟むのか。大きい胸だったらそりゃふわっとしてて気持ちいいのかな」
「サイズそこそこ必要やろ。そうそうできるもんやない、……
 感想戦のような形になりだした頃、ふとウルフウッドの口が止まる。なんだと顔を上げたヴァッシュのサングラスに写るのは――おもむろにジャケットを脱ぎ捨て、シャツのボタンを数個ほど外す牧師の姿だった。
「何してんの」
「いや、もしかしてと思て。よう見とけ」
 もそもそと前を開けたウルフウッドは、片手に空の酒瓶を下から持ち、さらにもう一方の手で自らのよく育った胸筋を持ち上げて。
「ブハッ」
「ブッ」
 胸筋と胸筋の間、つまり谷間に酒瓶を挟んだのだ。
「ンッフフ! ダハハハハッ! トンガリ! ヒイッ! これワイもいけるで! 力抜いて下からグンとあげればギュッとしてズリや! 」
「ング、ふっ……なんでできんだよお前、ンッグ、ブハッ! ブハハハ! 」
 ひっくり返らんばかりに二人は大笑いをする。時間にして一分弱、過呼吸になりかけながら二人が落ち着いた頃、ふとヴァッシュがウルフウッドの胸元を見ていると懲りないウルフウッドは面白がって、瓶を放り出し両手で胸筋を持ち上げた。
「ンッ」
 ヴァッシュは堪えるように口をもごもご動かす。ほれ、パニッシャーでよう育ってるで。ウルフウッドはニヤつきながら丸く柔らかい筋肉を持ち上げた。
「待て、待って、やっと落ち着いたから、ング」
 ヴァッシュは息切れの余韻を残しながら机に突っ伏した。ウルフウッドはまたもゲラゲラと笑って今にも椅子ごとひっくり返りそうだ。
「挟んだろか? 」
「自慢できねー! 」
 夜に男二人の馬鹿笑いが響き渡る。安宿の客は似たような酔っ払いばかり、文句を言われることもなく、夜更けまで二人は騒いでからいつのまにかぐっすりと寝落ちていた。


 繰り返すようだが、彼らの宴は酒が回ってから始まる。素面ではできない祭りなのだ。
「忘れようか、とりあえず」
「おん」
 よってこの誓いもまた、懲りずに毎度繰り返されるのである。
 はだけたままの牧師のシャツの中を見て、朝の人間台風は唸るように咳払いをしていた。
 バカとアホの朝は、今日も早い。


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