息抜きにパロディを書きたくなったので。書きたい序盤だけ。ほぼレオナルドくんで盟友はちらっとだけだし設定が多い悪文かもしれん。
転生とか移動ではなくプラントとかの設定を血界世界観に落とし込んだやつ。
なお基本Wは牧師ですが、HLの世界観にあわせてパニッシャーの設定はビーム出るようにしたいですね。ビームかっこいいし。
@neastrig
プラント[Plant]【名詞】
異界人の一種。人類(ヒューマー)とよく似た姿をしているが長命で年の取り方が異なる。
元は異界で使用されていた生体ユニット。プログラムすれば法則を無視して指定したものを生み出せる。
発生源・製造元が不明、高次元または並行世界から流れ込んできたテクノロジーとも言われる。
かつてはビーカーでしか生きられない消耗品だったが突然変異の自立種が増え、150年前に蜂起した。
現在自立種は異界人として扱われる。一部自立種は他のプラントも異界人として扱うように求めている。
「プラント……ですか? 植物? それとも工場のほう」
「両方だ、恐らくダブルミーニングだろうね。数が多くない上に僕らヒューマーと似た容姿をしているからあまり確認されていないが、近年関連組織の活動が活発になっているらしい」
渡された書類にレオナルドは目を通す。申し訳程度の説明の横には電球のような形のビーカーの写真が掲載されていた。
異界の資料の劣化コピーを繰り返したのか、または元からか。いずれも画質が悪く、とてもではないが人類似の種族には見えない。あえていえば丸に何か、言われてみれば女体に見えなくもないものが乗ったシルエットしか確認できなかった。
後ろから覗いたザップも同じ感想を抱いたのだろう。「胸のシルエットしかわかんねー」と最低の発言をかましていた。ただし、レオナルドも実を言うと同じ感想だったのでぐっと一瞬だけ押し黙る。
この人と一緒は嫌だ。最低の感想の代わりとばかりに、説明文を読み直して質問を試みた。
「で、その団体ってのは彼らの解放運動みたいな連中なんすか? ここに書いてあるような」
「正確には、解放運動をしている者に組する組織だ」
答えたのは説明をしていたスティーブンではなく、奥で席から立ちあがったクラウスだ。全員の視線が彼に集まる。
「ミカエルの眼、と彼らは名乗っている」
新しい単語が出てきた。次のページとジェスチャーをするスティーブンに従って素直にめくる。
こちらも申し訳程度だが辞書のような文言で記述がされ、やはり写真が複数添えられていた。
ミカエルの眼[Eye Of Michael]【名詞】
異界で活動する人類の団体。
HLが生まれる以前から存在し、主に異界に迷い込んだ人類で構成されている。
表向きはプラントの保護・支援を目的とした宗教団体。プラントを天使として扱う。
構成員、特に戦闘員は異界でも生きるために人体改造を施している。
近年、保護の名目で人類、特に子供を誘拐および改造して戦闘員にしている疑惑が浮上。真偽不明。
「一番大きな写真は……これ、教会みたいに見えますね。背景が思い切り異界っすけど」
「ああ。事実、それは教会だよ。元はそこの記載にある通りHL発生前に異界に迷い込んだ宗教集団が生き残って結成した組織らしくてね。我々も存在を知った当初は異界に迷い込んだ人類を古くから保護してきた慈善団体と認識していたんだが……」
最後の一行。この近年の疑惑により秘密結社ライブラとしては警戒対象となっている――ということらしい。
言葉にせずとも伝わるそれに「すっかり異界色に染まった人類の皆さんってわけですね」と頷くしかないレオナルドだ。HLだとそこらで起こっていそうな事件だが、人類が被害者かつ人類主導という事実が恐ろしかった。
「で、そのプラントと危ない団体だか構成員だかが今HLに来ているってことなんですよね」
話がこの資料を渡される前に戻る。元はと言えば「とある二人組を探してほしい。一人は異界人、一人は特殊な組織に属した人類だ」というのが始まりだった。となれば、自然この二つの資料それぞれが二人組を指し示すものであることは言うまでもない。
スティーブンは「ああ、そうだ」と返し、よくできましたとばかりに頷く。
「君には特に警戒して、ザップとともにパトロールをしてほしい。ミカエルの眼の構成員は人類だから難しいだろうが、プラントはオーラで確認できる可能性が高い」
なるほど。レオナルドは、後ろから聞こえた嫌そうな声を無視して頷いた。
血界の眷属(ブラッドブリード)とは異なるが、未知数の集団とその信仰対象だ。しかも後ろ暗い噂もありときた。
もし本当に誘拐をしているとすればライブラとしては見過ごすわけにはいかない。どれ程関与しているかはわからないが、目撃情報が入って急遽警戒態勢をとるのは当然の帰結だろう。
「ん? というか目撃情報があるなら見た目とかもわかってるんじゃないすか」
「ああ、一応ね。たださすがに異界人には有名らしいから変装しているんじゃないかって」
有名な噂ってやつも正直僕らからすると眉唾ものなんだけども。苦笑いする番頭の顔に、レオナルドとザップは揃って首を傾げた。対して「三ページ目だ、一応目を通してほしい」とまっすぐに二人を見るクラウスはその噂とやらを真に受けているようにも見える。
はて。二人はこの温度感の差異に一体どんなバカげた噂があったものかと思う。何せこの街ではそんなものは日常茶飯事だ。だが一人、離れて話を聞いていたツェッドだけは先にぺらりとめくったそれを見て渋い顔をしている。
「いや、僕でも聞いたことありますよ。この人の悪評は」
伯爵からか、はたまた師匠からか。どちらでもあっても冗談で話しはしないだろう。それがわかるからこそ、疑わしく思っていたスティーブンは「余計に嫌だな」とため息をつき、まだページをめくるところだった二人はますます首を捻って半回転させそうになる。
めくったページには写真が一枚、恐らく隠し撮りしたのだろう写真が貼り付けられていた。黄色いサングラスに、上に立てた金髪頭が特徴的な男が真ん中に写っている。
この男が問題のプラントの自立種らしい、が。
「ヴァッシュ・ザ・スタンピード、……人間台風、異界一の平和主義者? 」
警戒対象としてここまで聞いてきた話とはこれ以上なくミスマッチな謳い文句ばかりが並んでいる。唸るレオナルドを気にすることなく、クラウスは真剣にその写真を見ていた。
って言ってもなあ。いざ街に出たレオナルドはまっすぐとHLの大通りを歩きながらまるでちらりちらりと道行く人を確認する。だが悲しいかな、そこに広がるのはいつものHLだ。噂の歩く生体ユニットとやらは見当たらない。
「だいたい本人はともかく、同行者はいっそ他の人の方が見つけられそうなくらい特徴的だし? それでも見つからないってことはそこらへんには歩いてないんじゃないか、やっぱり」
なあ、と頭に乗るソニックに話しかける。
思い出すのは、写真の端に映っていた手配の人物のツレだ。クラウスは件の平和主義者に関心を持っていたが、スティーブンが真剣な顔に戻して警戒を表明したのはそちらの男である。
『彼の同行者が、何度かライブラでも情報を掴んでいるミカエルの眼の構成員らしい。パニッシャーと呼ばれる始末屋で、異界でもそこそこ名の知れた改造人間だ。相方ほどではないらしいけどね。ライブラでの交戦記録はないが、過去に他の事件で記録を見たことがある』
身の丈ほどもある十字架の形をした特殊な重火器を軽々と扱う、超回復の持ち主、改造人間。
なるほど、字面だけを並べると簡易の血界の眷属にも思える特徴が揃っている。スティーブンの話ではミカエルの眼はむしろ血界の眷属とは不仲とされているそうだが、それでも技術的に近いものを生み出しているならライブラとしては誘拐疑惑を抜きにしても無視することは難しいだろう。戦闘力があるなら尚更だった。
「と言ってもオーラの特徴もわからないからさすがにオーラで探すってのも難しいし。せめて赤いオーラみたいな特徴があれば違うんだろうけど」
プラントは基本的にHLにも出てこないらしい。
詳しいことはわからないが、プラント自立種の有力者の一人が自立種を含めた全プラントのHL進出を禁じているという。生体ユニットとして輸出されることを防ぐためだとかいう話だ。なお、今回はそれを破ったのか許可を得たのかは定かではない。
「なんというか。真偽がどうとか今回の背景がどうとか置いておいてとりあえず、異界もそういう人権意識みたいなの持ってる人いたんだなってほうが印象的なんだよなー……ないじゃん、HLでも人権とか基本的に」
ソニックはキキと小さな声を出し、レオナルドの頭を軽く叩く。慰めてくれているのだろうか。
とはいえ口に出すと悲しくなってくるレオナルドだ。
人権が霞のごとくもろいことにではなかった。異界で同類を護ろうという人たちがいるのになあというただの羨ましさにより、少し物悲しさを覚えているに過ぎない。慣れてきたとはいえ、それでも図々しく権利を主張したくなるのが人間というものだった。
具体的に言うと「ともに行動するように」と指示を受けていたはずが、しばらく歩いているうちに「分かれて探した方がいいよな、オーラなくても目立つだろ」などと言って消えたザップを思っての物悲しさだった。レオナルドの周りで一番レオナルドの人権を自由自在に破壊していく男代表である。
「いやまあ今更だけども。考えてたらなんか小腹すいてきたな……」
例に漏れず図太いHL住人らしく、レオナルドは欲求へと思考を切り替える。きっと腹が減って思考がマイナスになっているのだろう、そんな理由をつけてきょろりと見渡したその目は良い建物に止まった。
そこは何の変哲もない、ドーナツ屋だ。ハンバーガーチェーンと異なりHLで出店されているが、それにしては珍しく人類向けも多く取りそろえた評判の店である。甘いものより肉派の彼でも、そのジャンキーな砂糖味には懐かしさと背徳感がたまらず、稀につい買ってしまう一品だった。
「たまには、たまにはいいよな」
財布の中身を思い出す。この店は少しだけ割高だが満足感から言えばコスパはいい。脳内で数えて十分足りるぞと確認し、そしてあの白い先輩が周囲にいないことを確認、ソニックを服の中に隠してから店に駆けて入った。
「いらっしゃいませ~! 」
タコ型の異界人がにこやかに出迎えながら店内列の客にメニューを渡していく。最後尾に並んだレオナルドはうきうきでそれを手に取った。
「お、新作。こっちも見たことないな」
バーガーやダイナーと異なり、この店には滅多にこない。だが、ミシェーラが興味を持っていたためチェックだけはしていたから新商品を見るとつい試そうと確認してしまうのが兄の性というものである。レオナルドは説明文と写真に目を通しながら、また財布を確認した。馴染みのない商品二種、両方試すには少し足りない。
「こっちのほうがポピュラーっぽいけど、そういうのがトラップっぽいし。でもこっちの新商品はっていうと明らかに人類向けの色してねえんだよ。いやただ前にチェインさんにもらったやつもそういう色で普通にめちゃくちゃ美味しかったしなあ」
「へえ、どれ? 」
「ああ、この金色に輝いてるやつですよ。ラメみたいになってるから絶対ヤバい味すると思ったんですけど実際は結構タマゴ風味の……」
ん? レオナルドは返事をしてからはてと滑るように動いていた口を止めた。今日はツェッドもチェインも一緒ではないはずだ。
ついついソニックと話していた延長で独り言を口にしていたから忘れていたが、ザップすらいない。というより秘密の奮発だからこそ一人できたはずなのだが。
細い目を細いまま瞬かせて、顔を上げてみる。すると、少しウェーブが入った金髪と泣きボクロの青年がにっこりと笑みを浮かべていた。服装もごく普通の、何の変頭ない青年に見えた。見た目は。
「ごめん、邪魔しちゃったかな」
「え、はい。いや大丈夫、です……? 」
「僕らこの店はじめてでさ。あ、よかったら他にオススメ教えてほしいんだけど」
はあ。レオナルドは生返事をしながらもしかしてちょっとヤバいかなと思い始めていた。
というのも、目の前の青年は明らかに人類だというのにオーラが少しおかしかったのだ。白いというか、銀というか。恐らくだがエネルギーのようなものも強いらしく、ちょっと眩しいとすら思えた。例えるならそう、恒星が目の前で光っているようで、義眼がちかちかと眼球の中を点滅しているような錯覚にすら陥る。
オーバーヒートと似て非なるそれに固まっていると、その様を勘違いされたらしい。「オドレ、何迷惑かけとんねん」という強い訛り交じりの言葉がレオナルドの耳に入ってきた。
「すまんな、兄ちゃん。こいつオノボリのガキやねん。ドーナツ屋が珍しい言うて聞かんで入ったくせにいざ入ったらなーんもわからんとかほざきよってな」
見れば、金髪の男の後ろに黒髪でさらに背の高い青年が立っていた。
その巨体こそレオナルドより上の年齢にも見えるが、気さくな笑顔は全体の印象よりも若く見える。
こちらのオーラは見た目通りに人類のそれだ。おかしな点をあえてあげるなら背中に担いだ大荷物くらいか。チェロでも入っていそうだが、この街のものとなるともっと奇妙なものでも入っているかもしれなかった。
荷物のサイズ以外はたいした違和感もないのに、レオナルドはどこかで見た気がしてクエスチョンマークを頭に浮かべる。どこだっけ。喉元まで出た疑問は砂糖の香りに霧散しがちだ。
そして件の二人はそのレオナルドの様子に気付きやしない。それどころか。
「ちょっと! そこまで言うことないだろ~! だいたい俺がドーナツに興味を持ったのはお前が昔孤児院で食べた話とかしたからであって」
「は? 見ず知らずに絡んだ上にワイのせいにしよるんか? けったいなやっちゃな~誰の金出す思うてんねん」
「僕のですけど?!」
「あ、あの! 」
レオナルドを忘れて盛り上がりだす二人の声の大きさと言ったら。
慌てて止めたレオナルドは、二人の視線が自分に集まるのを確認してからシーと口の前に指を立てる。アッという顔をした二人は肩を少しあげ、賑やかな彼らを訝し気に見ていた周囲に揃って頭を下げた。
「その、マジで大丈夫っす。僕も迷ってたところなのでむしろ一人でぶつぶつ言ってしまって申し訳ないというか」
笑顔の明るい金髪の男は「そう? なら相談しない? 」と人懐っこく、黒髪の青年は「気ィ遣わんでええで」と言葉遣いのわりに親しみやすさを崩さずに言葉を並べる。HLに慣れた人間のような気楽さで、HLに慣れない人間のような近さの男たちだ。レオナルドの漠然とした印象はそれだった。
「相談はいいんですけど、僕が悩んでいるのは味っていうよりお財布っていうか」
お高い新作のどちらにするかなんて悩みは初心者と盛り上がるには若干不適切だ。ただ、それで彼らにあわせて定番を案内するほどレオナルドの腹は決まっておらず、懐事情も余裕がなかった。
「え、そうなの? じゃあ僕らとシェアしない? 」
「へ」
「おい、トンガリ」
「いいじゃないか。僕が出すって言ってるんだから。大丈夫、これでも結構持ってきたからね、お金」
いつもの俺だと思うなよ~なんて同行者にニヤついて見せる男は財布が入っているらしきジャケットの胸ポケットを叩いている。そういうのやるとスられますよ。言ってやろうかと思った矢先、案の定のびてきた退店中の客の手を黒髪の男がぺしりと払い落とした。
「チッ、油断も隙もないっちゅうに。カモがネギを振り回すんやないで」
「誰が鴨だ誰が」
お前だろ。レオナルドはひそかなその呟きを口の中にとどめた。代わりにシェアの約束をうまいこと使って何個か買えないかななんて考える。カモから巻き上げる気は勿論ないが、お得なお誘いには乗りたいレオナルドだ。
じゃあ、オススメとか人類が避けたほうがいいものとか教えるんで新作とオススメいくつかシェアしていいすか。そんな提案をレオナルドがするのはほんの十秒ほど後のこと。
そして店を出てから、ソニックに袖を引かれ、黒髪の男の大きなカバンの中に巨大な十字架が入っていたことに気が付くのは退店して五分ほどのことである。
勿論、そんな未来を知らないレオナルドは、台風の名を冠するにふさわしい男のトラブル体質に巻き込まれる未来に勘づくことすらできるわけがなかった。