ピクスク様のオールジャンルイベント『魔法に夢中』参加作品です。
拗れた両想い期の反転ドラヒナで、幼い頃に『魔法美少女 ヒナイチレッド』に憧れていたヒナイチくんが、当時を思い出し、憧れを手放すお話です。ルーマニア語はグーグル翻訳を使っているので、間違っているかもしれません。生暖かい目で見て頂ければ、幸いかと。
反転世界の魔法美少女とクルースニクについて、捏造設定にご注意下さい。個人的にはこっそり考えていた、反転ヒナイチくんの戦闘力が、仲間内で弱い理由が書けて、ホッとしております。
今回も捩じ込めなかったのですが、反転ドラルクさんがこの話にある様なチート能力を有している理由は、本人が『強大な吸血鬼夫妻の間に、赤い羊膜を被ったまま生まれてきた、純血のクドラク』だったから…という裏設定で書いております。どっかで、この設定の話も書きたいですね。
他の反転ドラヒナのお話は、ここから読めます→https://privatter.net/category/50931
@kw42431393
反転ドラヒナの捏造設定はこんな感じです。
反転ドラルク:
強大な力を持つ我が儘で中二病の人外。再生能力を持たず、両親に甘やかされてきた為、刹那的な性格。
自分の監視員であるヒナイチに執着し、理性が衰える満月の夜に無理矢理想いを遂げる。胃袋と快楽による刷り込みを行い、彼女を自分に溺れさせようとする事に余念がない。
反面、彼女が無事でいて、毎晩監視に来て欲しい一心で、隠れて敵性吸血鬼達を暗殺したり、自首する様に催眠術をかけて回るなど、良くも悪くも一途な所がある。
反転ヒナイチ:
吸血鬼対策課ヒヨシ隊副隊長を勤める若きエリート。ドラルクの監視員で、意地っ張りなくっころさん。
幼少時に、父親が忙しく構って貰えなかった為、本当は甘えん坊で寂しがりや。自分を甘えさせてくれる監視対象に父親像を求めていたが、心身を傷つけられ、快楽堕ち一歩手前まで追い詰められている。
夜と昼…どちらかの世界を選ぶ様に選択を迫られており、ドラルクに対して、愛憎入り交じった複雑な感情に苦しんでいる。
反転ジョン:
ドラルクの使い魔。落ち着いたムキムキの大人マジロ。
ヒナイチが来てから、太ってしまい、筋トレをハードにしたら、筋肉で丸まれなくなってしまった。元競マの帝王。
主夫婦がヤンデレ同士なので、仲立ちする等、苦労人気質。ドラルクの盾として、自身も戦闘に参加する。
『ねー、ヒナちゃん。きのうの、プリリアントレインボーみた?』
『いいや、こんしゅうはみれなかった。どうじょうのじかんが、かわってしまったんだ。』
『そっかあ。こんかいもね、ヒナイチレッドかっこよかったよ。』
私が、8つかそこらの頃の話だ。当時の女の子達は、皆憧れていたんじゃないかな。
妖精の国からやって来た『妖精プリリアント』との出会いがきっかけで、ごくごく普通の女子中学生が魔法美少女になって、夜の怪人達と戦う『魔法美少女♡プリリアントレインボー』…所謂、王道的な変身魔法少女アニメだと思ってくれればいい。
『プリリアントパワー♡きゅんきゅんビーム!!』
『アハハ。ヒナイチレッドのまねっこ、じょうずだな。』
『ヒナちゃんも、やろうよ。へんしんコンパクト、もってる?』
私も見ていたのかって?道場の時間が被ってしまう日は、見れなかったが…そうだな。
憧れてたんだ。ヒロインの名前が、同じヒナイチだから親近感があった。何より…
『ううん、もってない。けど、こんどのたんじょうびに、おとうさんがかってくれるってやくそくしたんだ。』
ヒロインが、ヒナイチレッドに変身する時に翳す、ハート型の赤いコンパクト。
掛け声と共に、そのコンパクトが光り出す。そして、彼女の全身を赤い炎が包んでいくのだ。そのシーンが、特に好きだった。
『ヒナちゃんも、クルースニクなんだよね?じゃあ、コンパクトがあればヒナイチレッドになれるのかな?』
そう。彼女は私と同じ、白い羊膜を被って生まれて来た幸帽児…吸血鬼殺しの少女という設定だった。
幸帽児の中でも、とりわけ強く神の祝福を受け、夜の眷属達と互角以上に渡り合える…発火能力や変身能力、使役能力に目覚める者は、ほとんどいない。
吸血鬼と人間達の対立が続く世界で、私も『その力に目覚め得る者』として、周囲から期待されている一人だったのだ。それだけに…
『うん、なってみせるぞ!』
それだけに…幼い頃の私は、あのコンパクトが欲しかった。あれがあれば、私もヒナイチレッドになれるのだと思っていた。
『ヒナイチレッドになって、みんなをまもってやるからな!』
そして、ヒナイチレッドの様に神々しい炎を身に纏い、十字に光る剣を両手に振るって、皆を守りたかった。
長じてからも鍛錬を続けてきた私に、皆からの期待も高まっていった…だが、現実は残酷だった。皆に知られていない…だけで。
「ハハハ。君が興味を示すから、どんなアニメかと思ったら。意外だね。」
「うるさい。別に、これを見たいと言ってないだろう。リメイクしてたんだなって、言っただけだ。」
ここは『今の私』が監視している、危険度Aの吸血鬼の居城。今宵も実力差…本当は、体に刷り込まれた快楽…に抗えず、ドラルクに引きずり込まれた地下室だ。
今、吸血鬼の寝床である棺桶の中に、私達は並んで身を横たえているのだ。
監視対象の気の向くままに、隅々まで蹂躙され壊れる前に、頼み込んでやっと貰えた中休み…とでも言えばいいのか。
棺桶の中で映画でも見ようという話になり、Numazon primeを立ち上げた時だった。
かつて憧れていたアニメの広告が、流れて来たのは…
「で、父君にコンパクトを買って貰えたのかね?」
「いや。お前も知っている様に、私の誕生日はひな祭りでもある。ヌイザラスに行ったら、売り切れだったんだ。当時の女の子は、皆、あれをねだっていたからな。」
“待て!!そこまでだ!コウモリ伯爵!覚悟しろ!!”
“アハハハ!私が、君から逃げる?とんでもない。ヒナイチレッド…今夜こそ、こちらの世界に来て貰おう。”
画面から、ヒナイチレッドと敵役のコウモリ伯爵の声が聞こえてくる。こんな話だったろうか。それに…何故だろう、コウモリ伯爵は誰かに似ている気がする。
「フフッ。こんなチープなもので、強い力を得られると思っていたとはね。」
「チープ…か。何故だろうな。あの頃の私には、手の届かない希望の宝石に見えていたんだ。」
私が大人になったから…だろうか。輝いていた『何か』が霞んでいくのは、とても寂しい事に思えた。
「そんなものかね。おや、再販されてる様だ。どうかね?私が買ってあげようか?衣装も髪のセットも、私がやってあげる。」
「やめろ。もう、私は19だぞ。恥ずかしい。」
「ハハハ。見せていいのは、私とジョンだけだ。もっと、恥ずかしい姿を私は知っている…今更だろう?それに、番組でも『誰だって、魔法美少女になっていい』と、言ってたじゃないか。」
"行くぞ!コウモリ伯爵!今日こそ、決着をつけてやる!"
"聞いて貰えないなら、仕方がない。今宵も私と踊って頂こう…私の可愛い魔法美少女。"
目の前の画面に映る、ヒナイチレッドの胸元で揺れる、コンパクトを見る。自嘲的な虚無感が胸に沸き上がってくるのを、何故か押さえられなかった。
「…お前の言う通りだ。努力もしないで…こんなもので、強くなれると思ってたんだ。お笑い草だな。」
乾いた笑いが出る。
吸血鬼の棺桶の中で今の私が見る、欲しくて欲しくて堪らなかったコンパクトは…夢を与えてくれる宝石ではなく、チープな造りのプラスチックの塊にしか、見えなかったのだから。
「なあ…ドラルク。」
「何かね?お嬢さん。」
画面のヒナイチレッドが、炎を纏って、コウモリ伯爵に斬りかかる。
かつての私が憧れていた吸血鬼殺しとしての姿…もし、私にヒナイチレッドの様な素質が、あったなら…
「お前と私は、こうなっていなかったのかな…。」
命懸けで戦うに足る、好敵手と見なしてくれたのだろうか。
執着にまみれた愛玩具としての、こんな扱いは受けなかったのだろうか。
体は虜になってるのに、心は認めたくない、こんなチグハグな苦しみをしなくても…
「それは、ない。」
氷の様に冷たい声に、画面から隣の彼に視線を移す。無機質な義眼が、不機嫌そうに私を捉えていた。
「ない…のか。」
「当たり前だ。確かに…最初は、君を戦士として鍛え上げ、あわよくばその素質も目覚めさせて、最高の遊び相手にしようと、考えていたのだ。それは、認めよう。」
そう言って、彼はこちらに身を寄せてくる。
シーツ越しに感じる『お前』の感触に、冷めかけていた熱が、再び燻りだすのを自覚するしかない。
「…っ、…もう…無理だ。眠らせてくれ。」
「愛玩具というのも、取り消し給え。今の私は、君を対等な伴侶として迎えたい。君の意志がどうであろうと、仮に、君がただの一般人であったとしても…私は、必ずこうしたはずだ。」
乱暴に覆い被さってきた、お前を見上げる。
赤い瞳にドロドロとした情念が揺らいでる事に…どんなに私が変わろうとも…逃がして貰えない、深い絶望とほの暗い安心が、心を満たしていく。
「私は、ヒナイチくんを手に入れる。どんな手段を使おうとも、必ずこちらの世界に連れていく。」
"私は、ヒナイチレッドを手に入れる。どんな手段を使おうとも、必ずこちらの世界に連れていく。"
ああ、思い出した。コウモリ伯爵は、こいつに似ているんだ。ヒナイチレッドに執着し、何度も彼女に戦いを挑み、彼女を自分に堕とそうとする敵役だったっけ。
「うあっ…!?」
「ククッ。君は、ここも好きだねえ?」
喉笛を甘噛みする牙の感触を感じて…燻りは、小さな炎に変わる。少しずつ、身体中に拡がっていく。
「退官してくれたら、堂々と吸血痕を付けられるのに…残念だ。」
「み、見える所はよせ。私は、お前の…」
「監視員だ…か。聞き飽きた台詞だが、仕方がない。」
その炎は、夜の者を焼き殺す為ではなく、私の理性を焼く為に…身体中に拡がっていく。
「あぐっ…うぅ…。」
"や、やめ…ろ!私はお前の思い通りには…っ!"
画面に、コウモリ伯爵の鋭い牙が映っている。今の私達と似た状況に、これから、鏡の前で行為を始めようとしている様な…そんな錯覚を覚えた。だから…
"これで最後だ、ヒナイチレッド。今度目覚めた時は、私の…"
…ブツッ…
だから、蓋のパネルに手を伸ばす。
電源を落とす。コウモリ伯爵の嘲笑も、押し倒されて苦悶するヒナイチレッドの姿も消えた。急に棺桶の中が、暗く静かになる。
「はぁ…はぁ…。」
「おや?もう、いいのかね?」
「…ああ。」
この話は、見た事があったんだ。この後、他の魔法美少女達が助けに来て、ヒナイチレッドは助かるはずだった。
でも、現実の私に助けは来ない。本音は、助けを望んでいない。この映像を見ながら行為の続きをするのは、辛過ぎる。
「そうかね…じゃあ、続きをしようか。お嬢さん。」
「かってに…きめるな…ぁ。」
どう足掻いても、こうなる運命だったのだ。どうあっても、彼はこうするつもりだったのだ。
吸血鬼殺しでなくても…彼は、私を。私であれば…
「ハハハ…どうかしたかね?急に、しがみついてきて…おっと?」
「は…っ!うっ、うるさ…い!」
憧れは、何もしてくれない。
何にもならない憧れは、捨ててしまえ。
これからの私は、彼らを焼き尽くす力に目覚めなくても…『私であれば、何でもいい』と言ってくれる、この執着と戦わなければならないのだから。
オマケ
「Nu trebuie să te trezești.」
「うぅ…?」
「Nu trebuie să lupți.」
「んん…う、ん?」
疲れ果てて意識を失った君に、今宵も私は繰り返す。呪いをかける様に繰り返す。
君が目覚める必要はない…と。
君が戦う必要はない…と。
可憐な耳に口を寄せて、何度でも、何度でも。
『私にヒナイチレッドの様な素質が、あったなら…お前と私は、こうなっていなかったのかな…。』
泣きそうな顔で言った、君の姿を思い出す。
期待されていた能力が目覚めないまま、使命を果たせず、捕食者に蹂躙されている自分を、惨めなものに感じているのかもしれなかった。
「人間どもめ…戦うなら自分達でやればいいものを。」
こんな小さな少女に、期待をかけたのだ。ささやかな日常まで、諦めさせたのだ。ひたむきに、期待に応える事を、使命と信じさせたのだ。
「反吐が出る。そんな奴らの為に、命をかける君を…私は、理解出来ない。」
現に…未だに、彼女は使命を捨ててくれないじゃないか。本当は虜になってるのに…私を選んではくれないじゃないか。
時折、それがどうにも、腹立たしくなる。
「ヒナイチくん…。」
「あぅ…っ!?」
彼女のお腹に、手を当てる。
透視能力を発動させる…体内が、私の力の影響を受けた食材で、作られたモノ達に満たされている事を確認する。そして…
「ん…?あぁ…んっ?」
子宮をお腹の上から、撫でる。私が注いだモノが、胎内に居座っているのを確認して…それらが、十分役割を果たしてくれているのを見て、口角が上がるのを禁じ得なかった。
「だめ…ぇ……もうやだぁ…ゆるし…てぇ。」
「Nu vă faceți griji.Ai puterea să Kresnik.Dar…(これだけは、安心し給え。君には吸血鬼殺しとしての力は…確かにある。だが…)」
目覚める必要は、ない。
君にその力があると気づいた人間共は、もっと激戦地に君を投入するだろう。そうなれば、君が危険にさらされる。君と会えなくなる…だから、目覚める必要はない。
「はぁ…あ…う。」
「安心したかね?ハハッ、母国語で喋ってるから、分からないか。」
だから、君が戦う必要はない。
その力が必要なぐらい、強力な同胞達なら…私が全て始末してしまえばいいだけの事、だからだ。だから、ここで眠っていればいい。目覚める頃には、全てが終わっている様にしてあげるから。
「うん…。」
「fata buna…Trebuie să plec curând.In seara asta,Trebuie să distrug instalația în care plănuiești să te infiltrezi mâine.(いい子だ…そろそろ、私は行かなければならない。明日、君が潜入調査をする予定の施設を…今夜の内に破壊しておく為にね)。」
強過ぎる力は、私から君を奪う事になると、分かっている。君から平穏を奪う事になると、分かっている。
だから…今宵も、君を『私』で満たし続けるのだ。体内と胎内に、私の力を込めたモノ達を注ぎ込んで、君の中で燻る炎を凍らせ続けていたのだ。
だから、これからも…
「それじゃあ、いってくるよ。私の大切な、ヒナイチくん。」
愛しい吸血鬼殺しを閉じ込めた棺桶を、後にする。
だから、これからも…君のその力が発現する事は、永遠にないだろう。