幼年アルとゼタの小話
@vmon1202
【呪いでも願う】
夜の城は静かで、廊下の窓から見える空には、無数の星がきらきらと瞬いていた。
その廊下の端で、アルとゼタ――小さな双子は肩を寄せ合いながら、夜空を見上げていた。窓辺の石段に腰を下ろした二人の頬には、月の光がやさしく触れている。
「ねえ、カシム。さっきね、城の使用人の人が言ってたんだ。」
そう言って、アルはわくわくした様子でカシムを見上げた。
「星に願いをかけるとね、願いが叶うんだって。」
カシムはその言葉を静かに聞きながら、星空と、そこに寄り添う小さな子どもたちを見つめていた。
アルの隣にいたゼタは、小さく首をかしげる。
「……本当に?」
「うん、ほんと。たぶんね、きっと。……でも、もし僕たちみたいな“双子”でも願っていいのなら――」
ふと、アルの声がほんの少し沈んだ。
「僕の願いはね、ずっとゼタと一緒にいたいってことだよ。」
その言葉に、ゼタは静かに目を見開いた。
「アル……」
「ゼタは? 何か願いごと、ある?」
ゼタはほんの少しだけ考えてから、微笑んだ。
「……僕は、アルと同じことを願うよ。」
「ほんと!? やったー!」
嬉しそうに跳ねるアルの隣で、ゼタは小さな笑みを浮かべ、もう一度空を仰いだ。二人の手は自然と重なり合い、窓の外の星たちは、まるでその願いに応えるように瞬いていた。
「……それが呪いでも、願え。」
カシムがぽつりと呟いたその言葉の意味を、双子も、傍らに立つザイードもまだ知らない。
夜は深く、空は遠く。
けれど、小さな願いは、確かにそこに息づいていた。
(終わり)