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わたひおオメガバパロ①

全体公開 30 450 6216文字
2025-07-10 18:16:23

わたひおのオメガバパロです。
⚠︎オリジナル設定あり/更新頻度波あり

完結できるか分かりませんが気ままに書きます。
大学編に出て子たちも出てきます◎
最終的にはハッピーエンドです;;♡

Posted by @RcNfe37

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⚠︎オリジナル設定あり
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 人間には第二性があるらしい。優秀な遺伝子を持つα。人口の半分以上を占めるβ。そして、Ω。
 オメガについては諸説あるそうで、男性でも子を成すことができるため重宝している地域もあれば、劣等種として扱う地域もある……とかなんとか。あまり詳しくは分からない。それも、俺がベータであるから。
 第二性の特徴が現れるのは高校生から。個人差はあるけど、十八歳になる頃にはアルファやオメガの人間は周りと差がつき始める。
 とはいえ、どちらも希少種。四十二人いるクラスで、一人いたらすごいことだった。だから、高校生の時は第二性なんて誰も気にしていなかった。





 バース性通知を受け取ってから一年。大学生活は高校と打って変わって、種別待遇がハッキリしていた。
 第二性が発覚してから間もないアルファやオメガは"番"を持っていない。それでも、彼らの体の機能は着実に変化している。
 アルファだけが受けられる講座があったり、オメガ専用の校舎があったり。大学はそれぞれの種を尊重していた。
 月曜日の一限。必修科目になっているコマはバース性についての講座。モチベーションはめちゃくちゃ低い。週明けから早起きしなきゃいけないし。
「日置おはよ」
 重い足取りで教室へ向かっていると、ポンと肩を叩かれる。男にしてはやや高い声色は、振り向かなくても吉野だと分かる。
「おはよ。吉野もB棟なん?」
 こちらを見上げる彼の首には硬そうな装飾。頸をガッチリと守る首輪は、オメガにしか支給されない。夏とか暑そうだけど、大丈夫なんだろうか。
「いや、ちょっと教授に用があって。すぐにあっちに行くよ」
 あっち、と言って吉野はB棟から少し離れた校舎を指差す。校内にポツンと佇む建物は、オメガ専用……とは言っても、ベータの人間であれば立ち入りは自由らしい。アルファは申請しないと入れないらしいけど。
「そうなんだ。俺これから講義だから、またね」
「うん。また」
 ニコリと笑った吉野は、元気に廊下を駆けていく。その後ろ姿は普通の大学生にしか見えなかった。
 一限に指定された教室は、大学のイメージ通りといったように、目の前のスクリーンから扇状に机が広がっている。高校でいう、視聴覚室の規模が大きい版といったところだろうか。
 スクリーンには「前の席につめるように!」とゴシック体の文字が表示されているが、みんな見て見ぬふり。ほとんどが後部座席に腰かけていた。
 ガヤガヤと賑やかな声を抜けて、ちょうど中間地点くらいの席につく。けれど、センターを張るつもりはないので端っこに座った。ここなら、褒められはしないが怒られもしないだろう。
 やっと一息つくと、背もたれに体を預けた。やっぱり、早起きは苦手だ。早朝の電車は混んでいるから座れないし、何より眠い。
 あくびをひとつして、滲む視界で少しずつ埋まっていく席を眺めていると、前方の扉から一人の中年男性が入ってきた。
「あれぇ、こんだけ?!」
 埋まらないアリーナ席と、空席の目立つ教室内に、部屋着にジャケットを羽織っただけの教授はがっくりと肩を落とす。
「さぁさぁ、特等席あいてるよー」
 教授はジャーンと目の前の席を両手で示すが、誰も腰を上げない。
「ふーむ。うしろの子は特別に指名しちゃうか」
 その一言で、ガタガタと椅子が畳まれる音が広がった。うしろで溜まっていた学生たちが前へ前へと移動するので、必然的に俺が最後尾に近くなる。なんかラッキー。
 アリーナ席は満席にはならなかったものの、一限は予定通りはじまった。
 配られた冊子をもとに、教授が何やら話しているが、まったく頭に入ってこない。それは俺以外の受講生も同じようで、スマホをいじっていたり、コソコソと雑談をしていたり、各々が自由なスタイルで講義を受けている。
 そもそも、ベータの人間がアルファやオメガについて学んで何になる。という空気が教室内に滞っていた。ここにいるのも、卒業単位のためでしかないといった具合だ。
「すごく分かるよー、自分には関係ないもんね?」
 見透かしたような教授の一言に、教室内は一瞬にして静まり返った。スマホに夢中だった彼も、雑談で盛り上がっていた彼女たちも顔を上げている。
 一斉に注目を浴びた教授は、薄くなった髪を撫でつけながら「ははは!」と笑った。
「でもさ、みんなにもαとΩの血は流れてるんだよ」
 スクリーンに映し出された図と同じページを、自然と指が探していた。パラパラと紙が重なる音に、教授の機嫌はグングン上がっていく。
「先生ー、俺もアルファになれるんですか?」
 アリーナ席に近い学生が、お手本のような挙手をする。あれだけだるそうにしていた学生たちは、ジッと次の言葉を待っていた。
「いい質問だね」
 教授はキラキラと瞳を輝かせて言った。
「結論から言うと、なれる者となれない者がいる。ちなみに、バース性診断を医療機関で受けた子はいるかい?」
 その質問に一人、二人と手を挙げるが全体の半分にも満たない。
 俺もそこまで精密に調べてもらったことはなかった。血液型と同じ感覚だったし、ベータは人口の半分以上を占める、いわゆる"普通の人"だから知ろうともしなかった。ここにいる半数以上の学生も同じ感覚だったようだが、「アルファになれる者もいる」という教授の言葉に、誰もが自分に流れるαの血に期待を抱いた。
「精密検査を受けた診断書にはね、α値、β値、Ω値が記載されているんだ」
 教授が手元のリモコンを操作すると、スクリーンの画像が切り替わる。人間の白いシルエットに、赤、青、黄色の液体が注がれた。アニメーションもつけるなんて、よほど張り切って作ったのだろう。
「α値が20以上あれば、アルファになれる可能性はある」
 第二性は一番大きい数値で決まるそうだ。つまり、俺はβ値というものが一番大きいらしい。
 ピタリと止まった赤色に、小さく「おぉ」と歓声があがる。けれど、その期待はすぐに打ち砕かれてしまった。
「でもね、自然にはなれないんだよ。たとえ、死ぬほど努力してもね」
 大袈裟に首を振る教授に、学生たちも自然と猫背になる。教室内の空気は上がったり下がったり、気温であれば風邪をひきそうだ。
「じゃあどうやったらアルファになれるのか。答えは単純! α値を増やせばいいのさ」
 教授はパチンと指を鳴らし、「輸血みたいね」と付け加える。
 なんだ、条件さえ満たしていればベータもアルファになれるんだ。なんて呑気に思ったが、現実は甘くなかった。
「ただね〜、バカ高いのよ……あ、費用がね? 優秀なアルファ様の血だからね〜。一回打つのに億はするとか」
 現実離れな金額に各所から「え〜」と声が上がる。教授は「なれる者もいる」と言ったが、本当に一握りの人間なのだろう。とんでもないお金持ちか、宝くじを当てた強運者か。
「じゃあ、オメガも同じなんですか?」
 また一人の生徒が手を挙げる。教授は「君もいい質問するね」と言って、前のめりで教卓に両手をついた。
「それが不思議なことに。オメガになるにはΩ値が少しでもあれば可能なんだよ。0.1%でも可能性がある。かかる費用だって……そうだなぁ……バイトをフルで3ヶ月頑張れば打てる!」
 ビシッと三つの指を突きつけられ、今度はどよめきが広がった。
 アルファとの差はなんなんだ。誰もが抱いた疑問に、教授はすぐに解答を示した。
「ただ、オメガの場合は体への負荷がデカいよ。発情期に対応する体にならないといけないからねー……耐えきれずに命を落とす人だって、珍しいことじゃない」
 アルファはお金を積まないとなれない、オメガは命を賭けないとなれない。それならベータとして生きていくのが一番だろう。
 やっぱり、この講義を受ける意味は卒業単位の取得でしかなかったかもしれない。
「先生ー! アルファと結婚したら子供はアルファになるんですか?」
 興味を失って資料を閉じた時、どこからかそんな質問が飛んできた。
「うーん。残念だけど、ベータとアルファの間に子供ができても、ほとんどがベータになるんだよねぇ」
 今まで期待を煽る返答をしていた教授だが、今回は初手で首を振った。質問した茶髪の女子生徒は「そうですか……」と言って手を下げる。その左薬指には、シルバーの指輪が光っていた。
「アルファを産む確率が高いのは、オメガだね。だからアルファの結婚相手はオメガが多いんだよ」
 総務省の調査データによると、αとΩ、βとβの結婚が一般的なようだ。αとβや、βとΩなどの割合は10%にも達していない。
「えー、ベータはアルファと結婚できないんですか?」
 茶髪の女子生徒の隣に座っている、友達らしい金髪の女子生徒はフォローするように質問を投げた。
「そんなことないよー。けどね、国のお偉いさんたちは優秀な人材が欲しいからアルファとオメガの婚約を推奨しているのが現実だね」
 教授はまたリモコンを操作する。切り替わったスクリーンには「重要」と記された封書が載っていた。
「婚活の案内だね。みんなの歳であれば、だいたいのアルファとオメガには届いているんじゃないかな」
 「ベータの僕らには関係ないけどね」と教授は笑い、リモコンを教卓の上へ置いた。
「それに、オメガの発情期を抑えられるのはアルファだけ。アルファの暴走を止められるのもオメガだけなんだよ。正確には"番"であれば、だけど。みんなも聞いたことあるんじゃないかな。"番"って言葉」
 それは、頸を噛んで成立するという。オメガはアルファと番になることによって、不特定多数にフェロモンを振りまくことがなくなり、アルファも他のオメガのフェロモンの影響を受けなくなるらしい。当事者じゃない自分にとっては何一つ共感できないけど。
「番を持たないアルファとオメガはどうなるんですか?」
 流れとしては自然な質問に、ドクリと心臓が脈打つ。今まで左から右へ聞き流していた耳は、一音も逃さないように集中していた。
「一応、研究結果としては出ているけどねぇ。アルファは自分の遺伝子を残そうとする本能が大きくなるから、無理矢理オメガを襲ったり……あまりいい例はないね。オメガのほうは──」
 一度閉じたはず資料は、いつの間にか折り目がつくほど開かれていた。教授の言葉をたどりながら、過去の事件についてまとめられたページを探す。
 およそ十年前。一人のアルファが、マンションの隣人を襲った事件があった。食いちぎられんばかりに頸や体をボロボロにされたのだそう。被害者はベータで、しかも、成人男性。
 アルファの男性は三十代前半。番はなく、五年ほど性交渉をしていなかったという。それだけで?なんて思ってしまうが、アルファにとって、フェロモンバランスや精神状態を崩すには充分すぎる期間のようだ。
 アルファの凶暴化を防ぐ術は今のところ、番を持つこと以外に見つかっていない。定期的に欲を吐き出すことを推奨されているが、その相手はオメガが適任らしい。
 キーンコーン……。頭に響くチャイムで、資料から顔を上げた。額には一筋の汗が伝い、忘れていた呼吸に息を飲む。
「じゃあ、来週も忘れずにね〜」
 教授は挨拶を促すことなくパソコンを閉じた。
 ガヤガヤとまた騒がしくなる教室内。二限の教室へ向かうもの、帰宅するもの、学食へ向かうもの、どんどん教室はカラになる。
 次の三限まで時間はある。席を立つ気力すら失った俺は、ポケットからスマホを取り出した。
「今日、そっち行ってもいい?」
 迷いなく送ったメッセージを見て、「はぁ……」と息を吐く。既読はまだつかない。送ったばかりだから、それはそうだけど。
 最後の一人が教室から出て行った時、やっと重い腰を上げた。目指したのは扉ではなく、コードを片付ける教授の元。
「すみません。一つ質問していいですか?」
 声を掛ければ、肌色が見えそうな頭頂部が天井へ向く。
「講義外の質問は料金発生するけど、それでもよければ〜」
「え、……い、いくらですか」
「ははは! 冗談だよ」
 教授は豪快に笑い、コードをまとめていた手を止めて「なにかな?」と首を傾げた。
「アルファとベータのパートナーはゼロじゃないってデータにあったと思うんですけど……その場合、アルファはどうやって本能的な欲を発散するんですか?」
 アルファとベータは番にはなれない。ましてや、男のベータでは男のアルファの欲を満たすことは、100%できない。
「ふむ。それもいい質問だね」
 緊張する俺をよそに、教授はケラケラと笑った。
「授業でも言ったけど、アルファとベータの間にも子どもができる。だから、本能的な欲だけでいえば条件は満たし──」
「あ、いえ、俺の言い方が間違ってました。アルファの男とベータの男の場合です」
「ほぉー……
 教授は無精髭を撫でつけて、しばらく黙ってしまった。カチカチと秒針の音だけが周りを包み、バクバクと心臓の音が体中にこだまする。
 二限目のチャイムが聞こえた頃、教授はケロッとした顔で言った。
「普通に、アルファが去勢するんじゃないかな」
「きょっ……え、?」
 予想もしてない返答に、呆気に取られる。
 理解が追いつかない俺をおいて、教授は荷物をまとめて扉へ向かった。
「君の質問で気づかされたよ。まだ私の知らないバース界もあるってね! 次までに調べてこよう。ありがとう!」
 なんて、感謝もされてしまった。
 開け放たれた扉を眺めていれば、ピコンッとメッセージの着信が響く。
『今、電話できる?』
 送ったメッセージの返事はその一言だった。ここには誰もいないものの、広い教室で話すのも気が引ける。教室を出てから「うん」と打ち返した。
 あ、イヤホンしてからにすればよかった。慌ててバッグからイヤホンケースを取り出し、耳に装着すると、見計らったようにスマホが振動する。
「もしもし、お疲れ」
『お疲れ。今、休憩中?』
「うん。三限まで暇」
 あてもなく階段を降りていると、イヤホン越しの渡会は「そっか」と笑った。
『今日、もちろん会いたいけど、俺六限まであるんだよね』
「うん、知ってる。終わるまでどっかで時間潰してるよ」
『それなんだけど、こっちの大学で待ってなよ。カフェなら誰でも入れるから』
 渡会の声は期待に満ちていた。俺から「行く」と言っておいて、断るのは違う気がするけど……渡会の大学は広すぎて落ち着かないんだよな。
「じゃあ、そうする」
『ありがと、気をつけて来てね』
 本音など言えずに頷くと、嬉しそうな返事がイヤホン越しに聞こえた。
 まぁ、会えるならなんでもいいか。
 「またあとで」と通話を切ると、自習スペースへ足を向けた。三限まであと一時間と少し。きっと今日は渡会の家に泊まるから、小テストの勉強は今のうちにしておこう。
 バース性について気がかりな部分はあるものの、今は彼に会うことだけで頭がいっぱいだった。


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