アルがカシムをどう思うのか、個人的の解釈
アル視点
@vmon1202
【月日になぞる】
エアブーツに乗って、空を飛び回りながら、地上を見下ろす。
柔らかな夕暮れの光が、中庭をやさしく照らしていた。
ふと、空から小さな人影を見つけて、そこへひらりと飛び降りる。
「サルース、発見!」
呼ばれたサルースは、「煩わすな」という顔でため息をつきながら、口にくわえていたタバコを指で挟んで消した。
そして俺の方へ、少し面倒そうに視線を向ける。
「……何の用だ?」
「別に。俺、ゼタを探してるんだ。」
「その目的に戻れ。」
面倒ごとが嫌いなくせに、呼べばちゃんと反応する。
サルースの、そういうところ――実はけっこう好きだな。
おっ、また好きな人の姿を見つけた。
遠くで、ザイードと話しているカシムがいた。
俺は、ふっと思った。
カシムの姿は、どこか絵画のように静止していて――まるで、時の流れを置き去りにしてしまったかのようだった。
その背中を、ぼんやりと見つめながら、ぽつりと呟く。
「……そんなカシムを見ていると、何も変わらないって、本気で思ってしまう。」
隣にいたサルースが、ちらりとカシムを一瞥してから、また俺の方を見やった。
言葉を探しながら、俺は続ける。
「俺が、こんなに変わってしまったから……かな。」
気づけば、自分の手はこんなに大きくなっていて、見える景色も、ずっと広くなっていた。
それなのに、カシムは――初めて会ったときと、まったく同じ姿のままだった。
大きく変わっていった俺やゼタ、ザイードを見て、カシムはどう思うのだろう?
俺だったら、きっと寂しく思う。
だって、置いていくのは嫌だから。
「変わらないものがあれば、変わるものもある。」
サルースは眉をひそめながら、静かにそう言った。
その一言が、妙に深く、胸に残った。
サルースはいつもそうだ。良いも悪いも、どちらかだけじゃなくて、両方を含んだ答えをくれる。
そうだな――変わらないカシムがいて、変わっていく俺がいて。
そのどちらが正しいわけでも、間違いなわけでもない。
ただ、そういうふうに、世界は在るだけなんだ。
夕陽が、赤く揺れていた。
変わらない背中の向こうにも、きっと、誰にも知られない変化があるのだろう。
――それはそれで、きっといいんだと思った。
(終わり)