ピクスク様のオールジャンルイベント『魔法に夢中』参加作品です。
成立後のΔドラヒナで、魔法美少女ネタになります。さらに、Δヒナイチくんには、吸血鬼殺しの発火能力が発現しており、それをある程度コントロール出来る…という捏造設定を加えさせて頂きました。
スコスコ妖精が呼び出した怪人についてですが、どちらかというと、グールの様なポジションとして書いております。
今回の隊長は、なんというか不憫役です。ファンの方々、すみません。本編ドラルクさん同様、Δヒナイチくんも『魔法美少女ドラルクブルー』の必殺技シーンを、こっそりスマホに撮って残してある可能性があります。悪い子ですね(笑)
他のΔドラヒナのお話はこちらから読めます →https://privatter.net/category/51192
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*捏造設定になります。
・Δ隊長は、父親のドラウスさんは人間、母親のミラさんが吸血鬼という設定です。ヒナイチくんより一回り年上。ルーマニア育ちの日系ハーフ。なので、独り言や鼻唄に突然ルーマニア語が混じったりする。生まれつき虚弱体質だが、ブーストを使えば短期戦の戦闘参加は可能で、本編よりは体力もある。ロナルドくんがあどないので、言動が父親じみてきた。
・Δジョンは元々ミラさんの使い魔で「体の弱い息子をよろしく頼む」と言われ、Δ隊長を主人として尊敬し、行動を共にしている設定になっています。なので、Δジョンの方がΔ隊長よりちょっと年上です。この世界でも新横浜のアイドル。
・ΔヒナイチくんとΔ隊長の出会いは、彼女が幼い頃に下等吸血鬼に襲われていたところをΔ隊長が助けた、という事になっています。Δ隊長は幼い頃からの憧れの人で、常にキラキラした目で見上げています。元々和菓子党だったが、幼い頃に貰ったクッキーを食べてから、現在はクッキー党。バーの娘なので、他の世界線に比べて料理は上手で、コミュニケーション能力もそこそこ高い。
・Δロナルドくんは、大侵攻で最も退治人・吸対連合を悩ませた、不死身で怪力、変身能力、飛行能力を持ったチート吸血鬼。無邪気なお子様で、吸血鬼らしくないのが悩み。一人にしていて、うっかり署を破壊されたら大変なので、Δ隊長は、備品という立場のΔロナルドくんを、毎日家に連れて帰ってます。みっぴきが揃っている時間が、一番幸せ。
・Δみっぴきの溜まり場は、署の隊長室か隊長のお家です。
『ねー、ヒナちゃん!また、まほうみせてー!』
『いいぞ。ちょっと、まっててくれ。』
まだ、8歳ぐらいの頃だったと思う。
同級生に頼まれた私は、その日も父さんから買って貰った宝物『ファンシーミミ♡変身コンパクト』を取り出した。
『ファンシーミミ』というのは、私が子供の頃に流行っていたアニメだった。
ごくごく普通の女子中学生が、人間界に助けを求めて来た妖精と契約し、心の弱さに憑りつく悪い怪人達と戦う…まぁ、王道の変身魔法少女ものだな。
当時の女の子、皆の憧れだった。私もその一人だったんだ。それに…
『かいじんめ、かくごしろ!ファンシーミミにへんしんだ!』
アニメでやっていたのを真似て、クルクルと回って見せる…そうしながら。
『よし、きょうもできたぞ。』
『すごい、すごい!やっぱり、もえてる!ファンシーミミみたい!』
物心ついた頃から持っていた、『魔法』を発動させる。
すると、私の髪や指先、つま先から、チリチリと小さな炎が上がり始めるんだ。勿論、アニメみたいに服まで変わったりはしない。これは、そういう『魔法』じゃないからだ。
『ヒナイチ。これはな、神の祝福を受けて生まれて来た吸血鬼殺しの中でも、とりわけ、強い祝福を受けた者だけが使える『魔法』だ。』
幼い私に、レッドバレッド・カズサ…兄は、何度もそう言った。
私の様に、白い羊膜を被って生まれて来た吸血鬼殺し達は、珍しい。とりわけ、幼い頃からこの魔法…(私の場合は)発火能力を発現させていた私は、VRCから声がかかる程、期待されていた。
『その魔法を持っている吸血鬼殺し達はな…強大な力を持った夜の眷属達とさえ、互角以上に渡り合えるのだ。だがな…』
『しってるぞ。にいさん、なんどもいうんだもん。』
だけど、幼い私は…そんな危険な能力を、『魔法少女ごっこ』に使っていた。そして、口を酸っぱくして、繰り返す兄の言葉を軽視した。
『…とっておきの時にしか、使うな。その魔法は、おもちゃじゃない。その火は、俺達人間が触れても何でもないが…』
そうだ。自分で触っても、熱くなかったから。同級生が、珍しそうに触っても、火傷する事もなかったから。
だから、よく考えもしなかった。
『お~い!ヒナちゃん、おれとしょうぶしようぜ!』
『OK~!ファンシーミミは、まけないぞ!』
『そうこなくっちゃ!このヴァめんヌンジャーがあいてだ!!』
この炎に触れた相手が、夜の者達であった場合…何が起こるかなんて、考えていなかった。
『あ…ご、ごめん。ごめんなさ…。』
『あ、あぁ…だいじょぶ。びっくりしただけ。なぁ、ヒナちゃん。それって…。』
幸い、その吸血鬼の男の子は、軽い火傷で済んだ。だけど…しばらく、眠れないほど恐ろしかったのを覚えている。
『何度も言ったはずだ。その炎は、夜の者達の再生能力が、無意味なほどに…一瞬で焼き尽くしてしまう事もある。懲りたなら、これまで以上に鍛錬しろ。死ぬ気で、その魔法を使いこなせ。本当に大切な誰かを守りたい時が、あるかもしれんからだ。そんな時は、少しだけ使っても構わん。分かったな?』
『う…うん。わか…った。』
頷いたけど、体の震えは止まらなかった。
自分が持っている『魔法』が怖くて、そのまま『魔法少女』への憧れまで、なかった事にしようとしたんだ。『魔法』なんて、なかった事にしようとも考えた。だけど…
『大丈夫だよ、可愛い退治人さん。君なら多くの市民を救えると、信じているよ。』
連続吸血事件があった伊那架町の夏山で出会った…ドラルク隊長の言葉に打たれた私は、それまで以上の訓練に耐えた。年々強くなっていく、その魔法の危険性は身に染みている。
だから、ロナルドとの闘いぐらいにしか使った事はないけれど、そもそも長い時間は無理だけど…今の私は、あの『魔法』を、少しはコントロール出来る。
だから…ある晩のパトロール中の事だった。
ロナルドの暴力も、私の拳銃も効かない『謎の吸血鬼』が街に現れた時に…
「お姉さん、僕と契約して欲しいプリ。魔法美少女ヒナイチレッドになれば、あの怪人を倒せるプリよ。」
思わず、あの胡散臭い妖精プリリアントの言葉に、耳を傾けてしまったんだ。もう、19なのに…なかった事にしようとした、小さな憧れを思い出してしまったからだ。
「魔法少女…。あぁ、いや。でも、私は…。」
「またまた~。その感じだと、興味あるプリね?時間がないプリ。いくプリよ~!」
パワァ…と、その小さな手から虹色の光が放たれる。そして…
「ヒナイチくん!騙されるな!それは妖精じゃなくて、きゅうけつ…ブワーッ!?」
「って…わー!!隊長!?」
まさか、こんな事が起こるなんて。
「ギャハハハ!んだよ、ドラ公。その恰好~。」
「ヌヌヌヌヌン!」
「うるさい!名誉の負傷を、笑うんじゃない!何が楽しくて、30越えたおっさんが、こんなキラキラした格好を…。」
「笑うな、ロナルド。それに、隊長は似合ってるから、気にしなくていいんだ。」
「「何て?」」
「ヌヌヌ?」
うん。ちょっと、ヒナイチくんがバグっちゃってるけど、気にしないで話を進めよう。
今の私は、妖精プリリアント…もとい、『吸血鬼魔法美少女スコスコ妖精』の術からヒナイチくんを庇い、なんかこう…『魔法美少女ドラルクブルー』にされてしまったのだ。
ヒナイチくんはああ言ってフォローしてくれるが、はっきり言って、肋骨が浮いた胸元を見せつけて、下も際どい所しか隠せてない、このコスチュームは、市民の皆さんにお見せするに堪えん事、甚だしい。
「チキショ―!この街に来てから、おかしいプリ!魔法美少女は、カワユイ女の子しかなれないはずなのに、今夜は、ガリヒョロのおっさんかよぉ!」
犯人が泣きながら罵ってくるが、知るか。怒りたいのは、私の方だ。
「お前の目は、節穴か。ドラルクブルーは、可愛いだろ。あと、『この街に来てから』『今夜は』という事は、常習犯だな?」
ねえ、ヒナイチくん。実はフォローじゃなく、マジで言ってる?今日で何連勤?
私よりは、少ないから大丈夫?私とロナルドくんで頑張るから、早退しよ?
「それに、妖精にしちゃ口悪ぃぞ。こっちが、本性じゃねえの?」
そうだよ、5歳にしてはよく見ているじゃないか。
私?私は、パトロール中の君達から、連絡が来た時に気づいたよ。正攻法で攻撃を加えても、手応えがなく、見た事もない奇妙な吸血鬼と交戦中だと、言ってたでしょ?だから、急いでここに来たんだ。
諸君もご存じの通り…私は、優秀なダンピールだ。ロナルドくんの気配を辿り、彼の近くにいる吸血鬼の気配臭から、犯人のものと思われる、姿・声・実力まで探知する事が出来る。だから、分かったのだ。ヒナイチくんの側にいる、こいつがそうだ…と。
「手配書が来ていたのでね…照合させて貰ったよ。県外で怪人っぽい眷属を使って、迷惑行為を繰り返していた妖精プリリアント…もとい、『吸血鬼魔法美少女スコスコ妖精』。現行犯で、逮捕させて貰う。」
「迷惑とは失礼プリ。僕は、ただかわいこちゃんを魔法美少女にして、戦う姿を愛でていただけの、恐るべき無辜のきゅうけ…ぶべえー!?」
ロナルドくんのグーパンで、妖精プリリアントが吹っ飛ぶ。
短絡的な彼の事だ。使役しているプリリアントを倒せば、眷属も消えると思ったのだろう。だが…
オオオォォ…
怪人は相変わらずその姿を保ったまま、我々を見下ろしている。使役している本体を攻撃しても、影響がないらしい。さりとて、知性や自我があるとは思えない。気配もグールに近い様だ。
「何だ?こいつ、消えねえぞ。」
「無駄プリ。怪人を倒せるのは、僕が選んだ魔法美少女だけプリ。ケヘヘ…さあ、どうするプリね~?」
おのれ、ゲスい顔をしおって。それにしても、ここまで首根っこを掴まれて尚、奴の余裕はどこからくるのだろう。
「どうするも何も、君の眷属だろう?さっさと、解除し給え。今なら、刑期も短くて済む。」
「解除?何言ってるプリ。元々、僕が『魔法美少女が戦う姿を見たい』だけで発現した能力プリ。だから、魔法美少女が手でハートマークを作り、「プリリアントパワー☆きゅんきゅんビーム!」と叫ばないと、あいつは消えないプリよ。」
え、何それ…30過ぎたおっさんに、この格好でそれをやれと?
「嫌だ~~!!」
「ドラルクブルーの必殺技か…いいな。」(隊長。気持ちは分かるが、仕方ないだろう?恥ずかしいなら、私も一緒にやろうか?)
「ヒナイチ。本音と逆、逆。」
「ヌー…。」
だが、それをやらなければならないのか…シンヨコで、魔法少女のコスプレしたおっさん(公務員)が、手でハートマークを作り、「プリリアントパワー☆きゅんきゅんビーム!」と叫ぶなんて…よくある?
「言われてみれば、近い事はよく起きてるな。」
「あ~、いつもじゃん。ある、ある。」
「ヌン、ヌン。」
紳士から変態に格下げされるのは嫌だが、市民の為ともなれば、我慢もしよう。よく考えれば、大した事じゃない気がしてきたし。
「もう自棄糞だ!プリリアントパワー☆きゅんきゅんビーム!」
集まってきた市民の視線が、痛い。痛過ぎる。
あと、ヌイッターとヌーチューブに上げるの、やめて!決して、私の趣味じゃないから!
そもそも、何が一番痛いって…
オオオォォ…
「き、貴様!貴様ー!なんだ、これは!?効いてないじゃないか!」
怪人は、何事もなかった様に蠢いていた。
これでは、ただの恥ずかし損ではないか。
「プププ。一人じゃ、ダメプリよ~?あいつを倒すには、僕が選んだ魔法美少女5人でやらないと、意味ないプリ。という事は…?」
「あっ、貴様!?妙に余裕ぶってると思ったら、そういう!?」
つまり、こいつは「街を救いたければ、あと4人、かわい子ちゃんを連れてくるプリ」と、強要しているのである。クソッ!この不細工、悪意があり過ぎないか。
「隊長。怪人の様子がおかしい。あまり、時間はかけられないぞ。私達を足せば、4人は揃う。だから、あともう一人誰かを呼べば…キッスさんとか。」
「お姉さんは大歓迎プリけど、ゴリマッチョを当たり前の様に、入れないで欲しいプリ。」
「元凶は、黙ってい給え!」
確かに、ヒナイチくんの言う事も一理ある。さりとて、簡単に奴の要望を受け入れるのは、躊躇われる。
吸血鬼対策課が不甲斐ないばかりに、『つまらん犯人の要望』に屈した形になるのだ。そして、VRCから出所しても、プリリアントは迷惑行為を繰り返すだろう。他に…他に、怪人を倒す方法はないものか。
「なぁ、ヒナイチ。お前、ここで『あれ』出来るか?俺と戦った時の…。」
その時だった。ロナルドくんが、何でもない様に口を開いたのは。
「ほら、あの火だよ。吸血鬼殺しの『発火能力』さ。あれなら…。」
確かに…『夜の者を焼き尽くす為に、神より与えられた』あの火なら…それは可能かもしれない。だが…
「あ、あれ…か。確かにそうかもしれんが…。」
彼女の顔が、曇る。私もあの大侵攻の際しか、見た事はない。
ロナルドくんと、互角に渡り合う…十字架を象ったハンドキャノンを携えた、神々しい姿を。
「んじゃ、やろうぜ。俺でさえ、あの火傷は堪えたんだ。死ねるかな~って、期待したぐらいだからよ。あんなの、簡単じゃん?」
「お前を火傷させたのは…今となっては、後悔してるんだ。解除するのが、遅かったら…そう思うとゾッとするぞ。」
その力を発現させると、彼女の自我が弱くなる。ある程度、コントロールは出来るようだが…止めようのない、破壊衝動が湧いてくるのだそうだ。現に、今も顔色が悪い。
だから、無理しなくていいよ…そう言ってやろうと思った。希美くんか、にく美くん辺りに頼もうかと、スマホを取り出そうとした。だけど…
「大丈夫だぜ。暴れ出したら、止めてやるよ。忘れたか?俺はさ…」
だけど、隣から響いてくる5歳児の力強い声に、私達の杞憂が打ち払われていく。何に迷っていたのか、分からなくなるほどに…。
「俺はさ…死を知らぬ男 ロナルド様だぜ!ちっとは、安心して任せろよ!」
「ありがとう…やってみる。その時は、頼むぞ。」
不安そうな顔を上げたヒナイチくんに、彼は無邪気に笑って見せる。
それは、とても夜の者とは思えないほど、太陽の様に温かな笑顔だった。
オマケ
昔から感じていた、猛々しく燃え上がる炎を意識する。子供の頃、『魔法』と呼んでいたそれを…強く。
「妖精プリリアント…」
「は、はい!僕にな、何プリ!?」
押し流されそうになる理性を、なんとか繋ぎ止める。平静を装ったつもりだが、目の前の彼はひどく動揺していた。プリリアントにとって、今の私の顔が…夜を焼き尽くす捕食者としての顔が、恐ろしかったのだろう。彼の顔は、引き攣ったものになっていたのだから。
「私をヒナイチレッドに、しないのか?」
「プリ…?」
「あの怪人は…『魔法美少女』に倒される為に、呼び出されたのだろう?『吸血鬼殺し』に倒されるのは、不本意なはずだ。」
「は、はいプリ!ぷ、プププ…プリリアント☆パワー!」
虹色の光に包まれて…私の姿は、幼い頃に憧れていた魔法少女そのものになる。金色に輝く光輪を背負って…ファンシーミミの様に、髪がチリチリと炎を上げているのを感じていた。
「ヒナイチくん…」
「ヌー…」
心配そうな貴方達に、笑いかける。出来るだけ、いつも通りに…大丈夫だ。だって…
「おっしゃ!やってやれ!」
自信を持って、両手に意識を集中させる。すると、二丁の眩く光るハンドキャノンが、現れる。
吸血鬼殺しの力を覚醒させた時だけ出現する、私の『破壊衝動』を具現化させたものだ。
オオオォォ… ガァァアア…
銃を構えると、私は怪人の禍々しい姿を見上げた。彼の鳴き声も気配も…どこか怯えたものに感じられる。
そうかもしれない。いつもの『魔法少女ごっこ』とは、違うと気づいたのかもしれない。
「大丈夫だぞ。安心しろ、今の私は…」
吸血鬼殺しのヒナイチじゃない、ヒナイチレッドだ。
いつも通り、『魔法少女ごっこ』でお前を倒す…魔法美少女だ。
「いくぞ!怪人!ヒナイチレッドの力を受けてみろ!」
彼が望む言葉と共に…可能な限りハートマークに見える様に、銃の向きを変える。
そのハートを見た瞬間、怪人から、怯えた気配が消えた様な気がした。
「プリリアントパワー☆きゅんきゅんビーム!!」
そして、眩い閃光の後…そこには、僅かな灰が残っているだけだった。これで、怪人も納得してくれるだろうか。
「魔法少女ごっこか…私にとっても、もう最後だろうな。」
振り返って、怪人を呼び出した『吸血鬼魔法美少女スコスコ妖精』を見る。
反省したかは定かでないが…その怯えようでは、もう二度と…『こんな理由』で、怪人を呼び出す事はないだろう。