@tirichann
私が急に一年生の忍たま達に囲まれたのは忍術学園に用があって来た時のことだった。その用とはフリーの忍者としての活動内容を報告するという大したことのないものだったが、本来の目的を忘れてしまうくらい彼らは熱烈に私へ問いかけた。
「名前さん好きな人いますか?」
「結婚願望はありますか?」
「土井先生のことどう思いますか?」
二つ目の質問までは子供達が興味のあることとして見過ごせただろう。だが、三つ目の質問を言われたら流石の私でも察することがある。
どうしたものかと思って立ち尽くしていると、「こら、お前達!」と声が聞こえた。
「土井先生だ~!」
忍たま達は慌てて駆けだす。嵐が去ったような静けさの中、土井先生と私が残された。土井先生は私が気付いていることに気付いているようだった。何と言えばいいのだろう、と考えるみたいに頭に手を当てて、困ったような顔をしてみせる。
「すみません、子供達が私を応援しようと躍起になっているみたいで」
「ということは……」
私は土井先生に次の言葉を促した。何度もああいった構われ方をするのは面倒だった。私が求めていた言葉は「好き」であり、土井先生はその期待通りに答えた。
「はい、名前さんのことが好きです。でも無視していただいて構いませんから」
まるでそれが迷惑だろうとでも言うような物言いだ。土井先生は意外に自己肯定感が低いのかもしれない。畳みかけるように私は続ける。
「いえ、私も土井先生を好いていたんです」
土井先生は、目を瞠ったりあからさまにときめいたりするような真似をしなかった。そこは流石に大人だし、忍者だ。忍者の恋に甘酸っぱさは必要ない。既に私の知らない所で、土井先生と子供達の協定が結ばれていた。
「ありがとうございます……でも、あの子達の中で私はあと三回逢引してから告白することになっているので、交際は少し待っていただいてもいいでしょうか」
それを考えると、私達はあと三回逢引をつけ回され、告白の場面ですらも監視されるということなのだろう。嫌だと言っていては土井半助の恋人は務まらない。
「いいですよ。子供達のために」
「すみません」
こうして、私達は通じ合った。用意された告白の舞台で土井先生がどのように告白するのか楽しみだと思った。