@tirichann
「名前、一生俺から離れるな」
佐久早がこんな甘い言葉を言っているのは私に対して愛情や独占欲の類を抱いているからではない。佐久早と古森の私でプリクラを撮った後、私と古森は興味のままにUFOキャッチャーコーナーへ移動した。私としては佐久早を置いて行ったつもりはなかったのだけど、残された佐久早はプリクラブースで私達を待つことになった。そして運の悪いことに、このプリクラブースは女性同伴でないと男性は入れない仕組みだった。今までは私がいたから入れていたのだ。
佐久早は、体格も大きいから大人に見られる。そうでなくても、佐久早が悪いことを考えれば取り押さえるのは大変だと思われたのだろう。私達が戻った時、佐久早は店員に職務質問のようなものを受けていた。爆笑する古森をよそに私は自分の連れであることを説明し、冒頭に戻る。佐久早はすっかり気落ちしていて、自分が犯罪者のように扱われたことにショックを受けたようだった。
「俺はお前がいないと生きていけない」
「はいはい」
普段だったらときめいてしまいそうな言葉も、今ではただ女性同伴のレッテルが欲しいだけだとわかっている。せいぜい誤解をといた私に感謝してほしいと思っていれば、佐久早は私を恐れているようなことを言った。
「名前を怒らせたら俺は簡単に捕まってしまう」
だから媚びられたとしても、嬉しくないのだけど。佐久早が一緒に行動する女性の候補は私しかいないらしい。これもまた甘い言葉に聞こえるけれど、単に佐久早が女子と関わることを苦手としているだけだ。早く私から卒業すればいいのにと思いつつ、ひな鳥のように私の後をついてくる佐久早を可愛いとも思う。もちろんこの感情にも、恋愛の意図はない。