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鉢屋に告白練習に付き合ってもらう

全体公開 忍たま 824文字
2025-08-05 08:35:39
Posted by @tirichann

「お願いがあるんだけど」

 要件を言った私に対し、鉢屋は「まあ、いいよ」と答えた。それから私の好きな人に姿を変えた。私のお願いとは、好きな人に告白する練習をしたいということだったのだ。

 姿は私の想い人であるはずなのに、どうしても鉢屋を意識してしまう。それでは折角鉢屋に頼んだ意味がない。

「好きです。付き合ってください」

 鉢屋は何も言わなかった。練習なのだから当たり前だ。だがどこかで、私は鉢屋に答えてほしいと思っていたのだろう。その答えは鉢屋自身のものだというのに。

「これでいい?」
「うん、ありがとう」

 鉢屋が元の不破雷蔵の姿に戻る。その瞬間に私は安堵した。多分、好きな人を前にした緊張感から解放されたせいだろう。

 鉢屋との練習を経て、私は想い人に告白した。目の前にいる人は想い人本人のはずなのに、何故か鉢屋に告白した時の方が緊張もときめきもあった。それが何故なのだろう、と思っている内に私は想い人に微笑まれた。

「いいよ」
「あ、ありがとう……

 どうして気持ちが快晴にならないのだろうか。私の告白は成功したはずなのに。

 私は恋人となった彼と共に過ごし、恋人らしくいた。だがどうも、何かが抜けているような感覚がしてならなかった。どうしてだろう。私は彼を好きになったきっかけを思い出す。彼を初めて見たのは、鉢屋が彼に変装している姿を見た時だった。

 私の中で、何かが解決する音がする。それは決して聞きたくない音だった。そうあってほしくないと思ったけれど、事実は変わらないのだった。

 私が好きなのは鉢屋だ。鉢屋の変装している姿を見て彼を好きだと思いこんだだけなのだ。

 そうは気付いてももう私達は付き合っているし、今更間違いだったなど言えない。鉢屋もまた、私が彼を好きだと思っているだろう。

 私は自分で自分を追い詰めていたのだ。後には戻れない。私は鉢屋を好きなまま、好きではない人と付き合っていく。


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