続きもので書いている、人魚姫ドラヒナのお話です。この話(焼き尽くされた、氷の心https://privatter.net/p/11535541)から、そのまま続いています。
師匠から契約を取ったヒナイチ姫は、魔女を騙して契約し、自身の肉で想い人を生き返らせます。とはいえ、肉の効果が効いている間だけ健康でいられ、時間が経つとリセットされるタイプの不老不死です。幸せな生活を手に入れる為に、もう少しやる事が残っています。
蓬莱島でのんびりしてる神(人気投票の神)と深海の竜(ご真祖様)の会話シーンを追加しました。
2024/03/17 に上げました。
@kw42431393
「なぁ、ロナルド王子。私は大丈夫だ。サンズニャンを迎えに行ってやってくれないか?」
ノースディンと協会から派遣された使い魔達を見送って、私はやっと一息をつく。
昨夜から駆け回っていた上に、大量に出血し、大きな嵐をやり過ごした安堵感に、今度は眠気が襲ってくる。
でも、まだ眠っちゃ駄目なんだ。
魔女に薬を飲まさなければ…魔女が知った後でも後悔しない様に、契約を結ばなければ。
「大丈夫か?お前こそ…最後の大詰めが、残ってるじゃないか。」
最後の大詰め…か。いや、私達が蓬莱島に向かうのが残っている。
その前に、私とドラルクの体が落ち着いたら…私は、『ある事』をあいつに託したいと思っている。
幼い頃から病魔と隣り合わせに生きていた魔女は、後ろ向きな所があって心配だ。
私達が帰って来るのが、遅くなっても大丈夫な様に、希望を持たせておく必要があるんだ。
あと…長命種である私達の繁殖能力は、低い。チラリと、お腹を見る。
緑の鱗で隠れた奥…本能的に分かる。もうすぐ、私は成人する。繁殖期も近いんだと思う。
ここを逃すと、次の周期が数十年後になるかもしれない。
出来れば、サンズとは母親としても、一緒に相談し合える親友でいたいと思っている…出かける前にやる事が、いっぱい残っているな。
大詰めというよりは、折り返し地点な気がする。
「それも、そうなんだが。さっき言った、『氷笑卿が誘拐した女性は盗み出したから、とっくに親元に帰っている』というのはハッタリだ。いくら、サンズでも厳しかっただろう。」
やっと、今頃親元に返して、帰路についているぐらいではないだろうか。
「彼女も、ほとんど休んでいない。迎えに行ってやってくれ。」
「…分かった。あのおっさんから契約を取った、魔女様を疑う必要なんてないからな。あいつから、契約を取るなんて訳ねえ。ジョン、頼むぜ。」
「ヌン。」
シャチに乗って、サンズと落ち合う場所に向かうロナルド王子を見送る。再び、ジョンと一緒に魔女の寝室に戻ると、魔女の呼吸も心音も微かになっていた。
そろそろだろうか。出来るだけお前を苦しませない、という観点からいうと…この薬を飲ませて生き返らせるのは、絶命するギリギリの方がいいんだ。
「起きてくれ!魔女!聞こえるか!?とうとう、契約は完遂されたぞ!」
大声で呼びかけながら、ドラルクを激しく揺さぶる。『契約』『完遂』その言葉に、瞼がピクリと反応する。
お前は、その2つに命をかけていたからな…それが、人ならざる者達の執念だ。
「お、ひめ…さま?おかえ…あれ、ノース…は?」
「私達が説得して、帰って貰ったぞ。ちゃんと、了承済だ。」
「…?そんなやつ…じゃ…。」
「どうでもいいだろ?それより、これを見てくれ!!」
実際、時間もあまりない。無視して、私は紫に光る契約書を突き付けた。
しきりと瞬きをしたり、目を擦っている事から、ほとんど何も見えていないはずだ。だが、光は感じている様だった。
「け、けいや…く。や、やった…。やっと…。」
虚空を泳いでいた目が、契約書に止まる。子供の様に、嬉しそうな顔をした。だが、そのまま再び眠ってしまいそうだ。
だから、頬を挟んでこちらを向かせる。
今ならいける。たぶん、疑わない。
出来るだけ、擦って温めておいたけど…義手がバレませんように。
「なぁ、魔女!これで、私は毎日ここに通う必要が、なくなったんだ!契約を更新してくれ!早く、サインを!!」
ここに向かう前に作った、私の契約書。
オレンジに光る契約書。
・深海の魔女ドラルクは、太陽の魔女ヒナイチの肉を食して、永遠の命を得る事
・永遠にヒナイチと共にある事。永遠にヒナイチの為に、クッキーを焼き続ける事。それが除外されるのは、ヒナイチがロナルド王子達と、蓬莱島に旅立っている間のみ
・旅立つ前にヒナイチと婚姻し、預けられた卵を守り続ける事
・どんな事態になろうとも、死んでは蘇り続ける運命を受け入れる事
対価として、ヒナイチは、魔女ドラルクから死の恐怖と病魔の苦しみを奪い、永遠に共にい続ける事を誓う
出来るだけ、堂々と急かす様に契約書を突き付けた。ちゃんと読む余裕はないはずだ。
予想通り、彼は読みもせずに、自身が吐いた血で汚れた指を差し出してくる。
「ぼ…いんで…いいか、ね?」
「勿論だ。」
血の方が、サインより確実かもしれない。ペタリ、と指が降れると契約書が輝きだす。
魔女がうっすらと目を閉じた。
満足しきった顔とは、こういうのを言うのだろうな。
「魔女ドラルク。これで契約は完了だ。だから…。」
ここからが、正念場だ。魔女が見ていない隙に、薬を口に含む。
この瞬間の為に、私は『無邪気で、可愛い人魚姫』を辞めたんだ。
「さ、さよ…うなら。ひな…いちひめ。あい…」
バカを言うな。楽になんて、させてやらない。
たった今、お前はこの私…太陽の魔女と契約をしたんだ!
皆まで言わせないで、口づけをする。舌を押し込む。
今まで、何度となくキスぐらいまでならしているから、前よりは上手になっている…はず。
本当は契約を完遂して、二人の思い出になる甘いキスのはずだった。こんな騙す様なキスじゃなかったはずなのに。
「ぐっ…うぅ…。」
苦しそうな顔を見て心が痛む…本当だったら、もっと気持ちよくしてやりたかったのに。
「お…ひめ、さ…。」
「うん…。」
最後の足掻きの様に必死にしがみついてくる、両腕と触手。
大丈夫だ、疑ってない。だから、堂々と魔女の口内に薬を流し込んだ。
魔女の長い舌が、こちらに侵入してくる。痩せ衰えて飛び出た喉仏が執念の様に音を立てて、何度も動く。
ゴクゴクと音を立てて…私の思い通りに。
「ぷはっ…はぁ…はぁ…。」
「ドラルク…飲んだな?全部…飲んだな?」
やった!私の勝ちだ!この為だけに、ずっと私達は準備をしてきたんだ!
「こ、これ…?あぁ…。」
私の下で、魔女の表情が不審げに歪む。やっと得た勝利に思わず、口角が上がる。
やっと、違和感を感じたのだろう。魔女の触手が、私の左手を這いまわる。
見た目は、精巧につくられた義手だ。しかし、手触りが違う、体温もない…なにより味がない。
今頃気づいたんだな?でも、もう遅いんだ!
「クスクス、魔女。契約書は、ちゃんと読まないとダメじゃないか。」
とびっきりのヴィランを気取ったセリフで、止めを刺す。後悔する事も許さない、と知らしめる為に。
これを聞いたお前は、どんな顔をするのだろう。
『私の知っている、人魚姫じゃない』と、絶望するだろうか?
『私が育てた、自慢の魔女だ』と、頭を撫でてくれるだろうか?
「さようなら、なんてさせるもんか。どんな惨い苦しみが待っていようとも、お前はもう死ぬ事さえ許されない。私と永遠に一緒にいるんだ…契約は絶対だ、お前がいつも言っていたじゃないか。」
紅い瞳が、こちらを凝視する。悪い魔女を救う為に魔女になる、その決意をしていても…心臓が破裂しそうだ。本音では、嫌われるのは怖い。いつもの様に笑いかけて欲しい。
でも…お前がいなくなるのはもっと嫌だから。
「な、なぁ…魔女。」
「あ、ありが、とう。わたし…ののぞ、みを…かなえ、てくれて。あらた…なまじょ、にしゅく…ふく、を。」
よかった。この選択は、間違っていなかったんだ!
痙攣する細い手が、私の義手を取る。微かなリップ音と共に、紅い瞳の中の瞳孔が開いていく。微かな心音も消えていく。
「少し眠れ。生き返ったら、さっそくクッキーを焼いて貰うぞ。永遠に私の為にクッキーを焼き続けてくれ。」
耳元で最後の呪いを吹き込むと同時に、背後でゴロリ…と音がした。
ジョン、ありがとう。お前も苦しかったよな、我慢して、あんな修羅場でも傍にいて…怖かったよな。
「ジョン、お前もこっちにおいで…あれ?」
手を伸ばして、ジョンをこちらに抱き寄せようとした時、シュルリと触手が動かなくなったジョンを絡めとる。そして、彼もローブの中に引き入れた。私の事も離そうとしない。
ローブの中で、私達は一つになった。
ずっとこうしていられたら…いや?
「そうだった。契約を完遂したから、私もずっとここにいていいんだ。サンゴ礁に、帰らなくていいんだ。」
だから、どんなベッドより安心して、寝心地のいい、ローブの中で目を閉じる。
ジョンの頬をつつきながら、私はドラルクの骨と皮の胸に、耳を押し当てる。
トク…トク…トクン…
「…ヌーヌー。」
しばらくじっとしていると、私の大好きな3つの心臓が拍動する音と、可愛らしいジョンの鼾が聞こえてきた。
「おかえり…ドラルク、ジョン。」
やっと帰ってきた、私の幸せな時間。
これから、作っていく幸せな時間を堪能しよう…また、友人達と旅立つまでの束の間の休息を。
ドラルク様、まだ病み上がりヌから。無理しちゃ駄目ヌよ。
ジョンにはそう言われるけれども、無理ぐらいするよ。だって、契約だもの。
「フフ。大丈夫だよ。それに、『生き返ったら、早速焼いてくれ』って言われているもの。」
無理をした所で…もう『死ぬ』事は、ないのだから。厳密には、すぐに生き返る事が出来るのだから。
『お姫様、ちゃんと作ってあげられなくてごめん。お味はどうかね?』
『おいしいぞ。お前が作ったんだ。おいしくないなんて事はない。』
寝たきりだった頃、それでも『毎日、私が作ったお菓子を提供する』という契約を果たす為に、私は魔法の遠隔操作で、お菓子は焼いていた。目の前で、クルリとアンテナがハートマークを描いていたから、その言葉も嘘ではないはず。
それでも、その笑顔は暗かった。見ていて、とても辛かった。
昨夜の契約で、お姫様の肉で生き返ったと言っても、それまでのダメージがあるのだ。体が衰えているのは、仕方がない。それでも、やはり自身の手で作ったものを食べさせてやりたい。
私も、純粋にこの過程が大好きだから猶更だ。
あ、焼けたヌよ。いい匂いヌね。
オーブンからクッキーを取り出す。桃の花を象ったかわいらしいジャムクッキーを。
「本格的なケーキは、今晩焼くよ。その頃には、ロナルド王子達も、もう一度来るだろう。」
今日は、3月3日。私の大事な人魚姫が、生まれた日。
貴女が成人となって、他国に嫁入るかもしれなかった、少し前の私にとっては忌むべきタイムリミット。
でも、もうそんな事は気にしなくても、よくなったのだ。昨日、契約が完遂されたのだから。ヒナイチ姫は、この私の可愛いお嫁さんとなったのだから。
昨夜生まれたばかりの、一人前の『太陽の魔女』の誕生日も併せて祝ってあげたい。
イナ海国で誕生祝をするのではないのか、って?
そこはヒナイチ姫次第だね。どちらにしても、私はサンゴ礁まで移動する程、回復してはいないから。
クッキーを冷ましている間に、紅茶を淹れる。チラリと私達の寝室を見る。まだ、あの子は眠っているだろうか。
所謂、『Early Morning tea』というやつだ。師匠から教えられた時は、気障ったらしい習慣だと思ったが…お姫様には毎朝でもやってあげたい。朝一番に、あの笑顔を見せてくれるのだから。
ドラルク様、その鼻…なかなか取れないヌね。
困った様に笑うジョンに、思わず苦笑いする。生き返って一番に、友人にされた事が、気遣いの言葉ではなく、鼻を摘ままれて捻られるとは…。
「赤いの、まだ取れないかね。」
ああ、赤鼻の魔女なんて…しまらないものだ。
『…ったく!ジョンとヒナイチの事考えたら、腹パンしてやりたいけど勘弁してやる!じゃあ、俺達も帰るからな。』
腹パンはやめてくれ給え。不死者になったとはいえ、痛いものは痛い。
『師弟揃ってが頑固だから、大変でしたよ。契約書をちゃんと見直してから、もっかい寝てろです。』
そう言って、そっくり反ったサンズ姫の姿は、ボロボロだった。聞けば、北海のノースディンの居城に潜入し、その貴族令嬢を盗んで、親元に帰してくれたらしい。
『ありがとう。かえすがえす、君達に足を向けて寝られないね。』
私の腕の中で眠り込んでいる、ヒナイチ姫の義手を撫でる。そっと、その手に頬擦りをした。
痛かったろうに。貴女に痛い思いをさせたくなくて、死を受け入れる覚悟をしたというのに…貴女のその思いが、もう一度死んでもいい位…嬉しい!
『その顔…後悔してねえな?あんだけ拒否してたのに、腑に落ねえ気もするが。いいんだな?』
ロナルド王子が、ため息をついた。視線の先には、私達の契約書がある。
『…私の意志で、サインをしたのだ。見えてなかった、というのは関係ない。寧ろ、人間達の考えの方が、不思議だねえ。』
ノックをして、寝室に入る。
暗くて狭い私の寝室に、魔女の正装を解いてないヒナイチ姫が眠っている。
「おやおや、眠り姫。そろそろ…」
「…!?クッキー!!」
クッキーの気配で飛び起きる。いつも通りのクッキーモンスターだ。
ロナルド王子とジョンの話によると、あの北海の氷笑卿を追い返し、彼から契約をもぎ取った妖艶な魔女のはずだけど。
「魔女…お、おま…グスッ。」
おやおや、眠る直前にみた『苛烈な太陽の魔女』は、『いつもの甘えん坊な人魚姫』に戻ってしまったね?
「ヌヌヌー!」
「おはよう、ヒナイチ姫。それとも、太陽の魔女と呼ぼうか?」
ぷぅ、とますます頬を膨らませる姿に苦笑する。そして、安心する。
聞けば、『私に嫌われるのではないか、と不安がっていた』のだという。私は、貴女であればどんな姿でも、よかったのに。
「あの髭をやり込めた勇姿を、見たかったなあ。」
「いい!もう、ヴィランはやらない!もう、疲れた!!」
ヒナイチ姫、落ち着いてヌ。ドラルク様も悪かったと思ってるヌから。
ベッドテーブルに、クッキーと紅茶を並べる。動いている私を見て、安心したのと、臍を曲げたのと…ポロポロ涙を溢しながら、クッキーを口に運ぶ。
「ありがとう、本当にありがとう。だから、こっちを向いて?お願い、ね?」
一秒でも、早く貴女の笑顔を見たいよ。
「し、しらなっ…はぐっ…もぐっ!?ケホケホ!」
噎せた彼女に、お茶を差し出す。背中を撫でていると、急にお姫様が抱きついてきた。
「グスッ…な、なあ。魔女。契約書、ちゃんと読んだな?」
「…うん。」
「お前は、留守番だ!私の繁殖期が来たら、私達の卵を守って、ここにいるんだ!」
「うん、うん。」
「…私の肉で作った薬だから、しばらくは元気でいられると思う。だけど、切れたら…断末魔の苦しみを味わう事になる。いいな?」
いいよ…生き返ったら、またリセットされてるんだから。慣れてしまえば、問題ない。
「…出来るだけ、早く帰ってくる。いいな?寂しくても、変な事を考えるなよ?」
「どんな言い付けでも、従います。契約は絶対だもの…ノースをもやり込めた、自慢の一番弟子なら尚更。」
興奮が落ち着いたのだろう、涙を拭ってやると、お姫様は、ポツリと溢した。
「まだ、塩クッキーにハマってるのか?今のクッキーもしょっぱいぞ?」
…ごめん、ごめんね。もう、貴女を不安にさせないから。泣かせないから。
「愛してるよ…。」
死ぬ間際に、塞がれた言葉を紡ぐ。さりげに、お互いの思いは自覚して伝えているのに、何故かこの言葉を使った事はなかった。
「愛…してる。だから、もうお前の元に通わない。」
「…私達の願いは、元々同じもの。だから、お詫びに今夜、とびっきり美味しいケーキを焼いてあげる。」
「ずっと私と一緒にいろ…あと、甘いクッキーもキャラメルも、プリンも作れ。」
その様子だと忘れているのかな?
そんな事ないよね?
「誕生日おめでとう、ヒナイチ姫。珊瑚礁に帰らないでおくれ。そして、今夜を楽しみにしておくれ。」
今夜は、私の可愛い人魚姫が生まれた日。
昨夜の太陽の魔女の誕生祝い、私とジョンの第二の生への祝い、ロナルド王子夫妻の労いに、計画成功の打ち上げと…腕の振るい甲斐があるというものだ。
「…少しは、手伝う。無理をすると、デスリセットが早くなるから。」
「おっ、これは…やりおったな。」
やあ、久しぶり!誰かって?ワシじゃ…と言っても、詐欺じゃないぞ。
蓬莱島の神よ。前は仙人って言ってなかったかって?どっちでも構わんぞ。
何しろ、ずっとシリアス続きで、ぜ~んぜん出番がなかったもんでな。もー、退屈で退屈で。
「そう…じゃあ、お暇なんだ?」
「折角、お暇しておったのにな。あんただろ?潮の流れを変えたのは…。」
深淵から不穏に響く様でいながら、その実、何も考えていない様な声に振り返る。
「…冬眠から覚めるには、少し早いんじゃない?」
そこにいるのは、引き込まれるような漆黒の鱗とお茶目な深紅の瞳(本人曰く)が印象的な…深海の竜大公だった。
「メンゴ。訳あって、息子がイナ海国のヒナイチ姫と契約したから、ちょっと早く起こされちゃった。」
「訳あって、ちょっと…な。まぁ、いいか。ワシでなかったら、何が何だか分からんだろ。」
とっくの昔に、こうなる事は知ってたからな。何故って?ワシは、強大な力を持った畏怖い、畏怖い神だぞ!その程度の事を、把握してない訳はないぞ。
悪い噂も多い竜の孫ではあるが…今回の功績はそれまでの罪状をチャラにして、お釣りがくる。
奴とその伴侶、友人達の願いを特別に聞いてやっても構わん…それだけの価値はあろう。
「そ。孫の友人達がここに来たいから、潮の流れを変えちゃった。じゃあ、後の事はヨロ。」
「ヨロじゃねーわ、バーカ!お前、ちっとは手伝えっ…って。やれやれ、もう行ってしまったか。」
相変わらず、自身の影響力を考えん奴。潮の流れを変えるという事は、この島だけでなく、世界中の気候や生命、各国の経済にも甚大な影響を与えかねん。だから、ワシに頼みに来たっちゅう訳。ワシは、超絶に畏怖い神だからな。そのぐらい、軽い軽い。
「あ~、仕方ない。ワシも用意しとくか。」
数年ぶりの客人を迎え入れる前に、あの竜のやらかしによる影響に対して、手を打っておかねばならん。いいや。これから、起こる事を考えると…
「今回の件で、陸と表層、深海の多くの国で交流が盛んになる。膨大な恩恵と甚大な災難を誘発する事になるだろう。その友人達とやらを帰した後も…これまでの様に、のんびりしてはおれんかもしれんなあ。」