直接描写はないですが致しているので注意
@tirichann
安室さんとセックスをする流れになったのは自然なことだった。安室さんがもう遅いから送っていくと言って、私は折角だから上がることを勧めて、二人の間には妙な沈黙が生まれた。雨が降っていた。その雨音をかき消すように、私達の間にも水音が立っていた。
「れいくんっ」
思わず呼んだ名前が別の男のものになってしまったのは、仕方ないことだ。私は少し前までその男と付き合っていたし、別れてから初めてするセックスだった。とはいえ別の男の名前を呼ばれたら気持ちよくないだろう。そっと安室さんを見上げると、思っていたより切羽詰まった表情をしていた。私達は一時の過ちを犯しているはずなのに、まるで真剣交際をしているみたいだった。仕方のない人ですね、と笑ってくれると思っていたのに。
「どこまで知ってる?」
「安室さん……?」
安室さんの言い方はまるで尋問するかのようだ。普段のポアロで見る安室さんの顔ではない。安室さんは拳銃でも突き出しそうな勢いで私の喉元に迫った。名前を間違えられたことがそんなに嫌だったのだろうか。ここで選択を間違えたら、私の首はそのまま絞められてしまいそうだ。
「すべて吐け。どこからその情報を手に入れた」
「私はつい元カレの名前が出ちゃっただけで……」
私達の中で、何かが食い違っていることが明らかになった。情報と言うからには安室さんは何かを隠しているのだろう。「れいくん」は安室さんの偽名か何かだったに違いない。安室さんは、隠していることを隠そうとしない。それがまた彼の魅力でもある。
安室さんは一瞬手を緩めた後、また眉間に皺を寄せた。
「僕としている最中に他の男の名前を呼んだのか」
「本気の恋でもないでしょう!?」
安室さんだって、「れいくん」という名前がありながら私に安室透だと名乗っていたくせに随分な責めようだ。プライドが高いのは安室さん本来の性格なのだろうか。私達がしているのは本気の恋でもセックスでもない。なのにどうして、安室さんは怒るのだろう。私は自分が名前を間違えたのを棚に上げて面倒な人だと思った。