みっちゃんと主ちゃんのお話し合い。
護衛と後方支援を主体とするこの本丸と彼女の「歴史観」を紡いだお話し合い。
被災刀剣に関してはこちらの物語の解説が詳しいです→https://privatter.net/p/11498858
@fu_re_re_ra
────ねえ、きみは、護るべき歴史って、どんなものだと思う?
そう不意に投げかけられた光忠の問いかけに、彼女はふんわりと小首を傾げた。
「歴史? うーん、わたし、刀剣男士のことも、この国の歴史のことも、ほんとに全然知らないからなあ……だからね、ほんとわたしの個人的な感想でもいい?」
もちろん。それが聞きたいんだ。
「えっとね、歴史って、愛と赦しの積み重ねだと思うな」
愛と赦し? キリシタンの教えの?
「うん。許すこと、認めること、愛することを人が学んできた結果が、歴史なんじゃないかなーって、わたし思うんだ」
詳しく聞きたいなあ。
「んと、うまく説明できるかな。えっとね、たとえば昔は身分があったよね。身分の高い人と低い人は、恋仲になることすらできなかった、そんな時代があるよね。でも、今はそうじゃないよね。誰が誰を好きになって愛しても良いよね」
そうだね、身分の差は、かつてに比べれば無いも同然なほど寛容になった。
「たとえば同性愛が迫害の対象だった時代もあるよね。厳しく取り締まってた人たちも昔はいたけど、キリシタンの一番偉い人がね、『同性愛を迫害した過去は間違いだった』って公の場で言ってね、それからキリシタン文化ではずっと受容的なんだ」
へえ、そうなんだ。それは知らなかったな。
「だから女の人が女の人を愛しても構わないし、男の人が男の人を好きになっても特別なことじゃない。そう認められなかった時代もあるけど、少しずつ認められるようになってきた。戸籍の性別も変えられるし、女性同士や男性同士の結婚もようやくこの国でも法律で許可されるようになってきたよね」
「先天的に男性とも女性とも言いにくい体で生まれてくる人だっているし、男性と女性の特徴の両方を備えて生まれてくる人だっているからね。性別を理由に誰かを愛してはいけない時代は終わらないといけないし、そうなっていると信じたいよね」
「それに昔は、キリシタン文化の中ではね、自殺した人はお墓作ってもらえなかったの。神様から貰った大事な命を粗末に殺した人だから、って理由みたい。自殺した人は全員、天国じゃなくて地獄行きって考えられてたんだって」
わ、思ったより厳しいんだね?
「うん、昔はそうだったんだって」
そうなると、刀で切腹した人はみんな地獄行きって解釈になってしまうね。
それは僕ら、ちょっと困ってしまうな。
「でも、今は違うよ。自殺した人もちゃんと弔うし、お墓作るし、苦しんだ分ちゃんと天国で幸せに過ごせてるっていつからか変わったの。自殺した人を悼んで弔ってもいい。そう変わっていったの」
そっか。
そうであって欲しいな。
「うんと昔々、大昔は、物語を創作することも罪だった時代があるんだって。創作は嘘だから地獄行きって発想らしいよ」
ああ、源氏供養の。
「でも、今はそんなことないよね。創作の物語は、人々に愛し愛されてる。物語を愛したっていい。それが現代の価値観」
そうだね、僕らは時に、刀以上に物語の付喪神だ。
刀と共に逸話や物語をこよなく愛してもらったからこそ、僕らはここにいる。
「みっちゃん、前に教えてくれたよね。みっちゃんは昔の大地震で火事にあって、綺麗な刃紋が失われてしまったって。火災で脆くなった刀身は、法律上は刀として認められなかった時代が長かったんだって」
うん。僕は長らく人に『刀』だと認められなかった時代がある。
けれど、僕は僕を愛する多くの人々の声に押されて、再び法的に刀であると正式に認められた。
僕ら付喪神にとって、人々の承認は命の根源だ。その感謝を忘れた日は無いよ。
「みっちゃんの物語はドラマチックで本当に素敵だよね。愛にあふれてる。被災刀剣を刀剣として愛することが認められない時代から、認められる時代へ。被災刀剣を刀として愛しても良い時代へ。それが今なんだよね」
うん、僕はその証人としてここに居る。
「そうやって少しずつ、誰かが何かを愛していい範囲は、広がってく。誰が誰を愛してもよくなる。それがあるべき歴史の積み重ねなんじゃないかなって」
とても素敵な解釈だね。
「ありがとう。だから、歴史を護る戦いっていうのは、今よりもっと、誰かが誰かを愛してもいい、そんな未来が来るようにすること、なんじゃないかなーって、わたし、思うんだ」
誰が誰を愛してもいい未来、かあ。
「うん、そうだったらいいなって」
ねえ、誰が誰を愛してもいいなら
刀剣男士と人の子は?
「あれ? 伝わってない?」
ふふ、ごめん。意地悪したくなって。
いつも愛してくれてありがとう、主
「わたしのセリフだよ。いつも大事にしてくれてありがとう、みっちゃん。大好きだよ」