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悩み相談≒惚気合い

全体公開 オメガバ🐑🐸 5 5 5027文字
2025-08-17 12:32:38

オメガバ🐑🐸第9弾ですが、今回は🐸さんと🎃さんの悩み相談という名の惚気合いです。カルみと要素有。
この話に関しては、ネタバレは特にありません。

悩み相談≒惚気合い

 性別というものは基本的に生まれた時から決まっており、性転換手術などの人為的な措置でも取らない限りは変わることが無い。
 しかし、バース性に関しては例外がある。上位のαからのビッチングによって、αやβがΩに性転換する事例がそれだ。とはいえ、非常に珍しいことであり報告数も極僅かである。
 そんな稀少な事例に当てはまってしまったのが、未来から過去へと出向してきている神無三十一であった。元々はαだったのだが、ある日を境にΩへと性転換している。
 医療機関や公的書類、職場への報告を何とか済ませ、番もできたことで自身の変化に対する混乱からはひとまず立ち直っていた。だが、これまでαとして生きてきたのに、急に番持ちのΩとして生きることになったのだ。悩みは尽きない。
 そんな神無が相談相手に選んだのは、帰代だった。
「俺と同じ立場の人なんていないし、αやβの人にはわかってもらえなさそうで……でも、Ωの人に相談して『普通じゃない』とか言われたら嫌だし……だから、帰代先輩しか思いつかなくて」
……そうか」
 帰代はαだが、過去にビッチングされかかった結果としてαの番がいる。本来Ωの項に刻まれる番の証を持っており、立場的には神無に近いと言えるだろう。
 とはいえ、帰代はαのままなので神無とは違う。それに加え、帰代は誰かの相談を受けるのが得意というわけではなかった。切り替えの早いタイプなので、「悩むくらいならさっさとするべきことをしろ」と突き放すようなことを言いがちなのだ。
 だが、神無は個性あふれる刑事が集う宿舎において貴重な、素直かつ真面目な後輩である。力になってやりたいという思いはあるのだ。
「俺の場合はΩになったわけじゃないから、理解が及ばない部分もあるだろうが……悩みを聞くだけなら」
「それでもいい! 帰代先輩、ありがとう……!」
 潤んだ目で見上げられれば、益々突き放せない。
 そんなわけで夕食後、ブラックコーヒーと甘いカフェオレをお供に、神無の部屋で相談会となったのだ。
「それで、何に悩んでるんだ?」
 コーヒーを啜りながら帰代が尋ねると、神無はカップを包む両手をもじもじさせながら、顔を赤くして俯いた。
「えっと、その……発情期の、ことなんだけど」
 Ωには生殖のための発情期が存在する。ヒートとも呼ばれるその期間、Ωはα――番のいる者は番を誘惑するために強力なフェロモンを発し、寝食すら疎かになるほど性行為に没頭するのだ。
 αの方はΩに誘発される形で発情するが、症状はΩ程重くはない。性転換した神無にとって、心身への影響が大きい現象であることは明らかだ。
「きついか?」
 心配してそう問いかけた帰代に、神無は「きつい、というか……」と更に顔を赤らめる。
「き、気持ち良すぎて、何も覚えてなくて……これって、普通じゃない、のかな?」
…………
 コーヒーに口を付けている瞬間じゃなくて良かったと思いながら、帰代は絶句した。
 悩みを聞くつもりだったが、まさかその悩みがセックスに関することだとは思わなかったのだ。知っていたら、非常に心苦しいが辞退して聖あたりを紹介していただろう。
 だが、神無としては真剣な悩みである。羞恥で顔を赤くしながらも、帰代を見つめる目は不安の色を隠せていない。
「~~~~っ」
 帰代はどうするべきか頭を悩ませ、最後にはその神無の視線に負けた。大きく息を吐き、目を伏せて小声で答える。
「発情期中の記憶は、俺もあやふやなことが多い。お前だけってわけじゃないだろう」
 αであるお陰か帰代の発情期は大体丸一日程度で治まる。番に会えない期間が長くなると多少長引くが、それでも最長三日というところだ。通常Ωの発情期は一週間前後とされているのでかなり短い。
 しかし、その短い発情期の間、帰代は番と爛れた時間を過ごす。最低限の食事と休息以外は交わりっぱなしであり、本能に由来する快楽に溺れて理性は飛び、記憶はほとんど残らない。
 帰代も同じであると聞き、神無はほっとした様子で顔を明るくした。
「よかった、俺だけじゃないんだ……俺、自分がインラン?なんじゃないかって心配になって、でも、誰にも聞けなくて……
 それはまあ、相談し辛いことこの上ないだろう。『番とのセックスが気持ち良すぎて記憶が飛んでしまいます』、なんて口に出すだけでもハードルが高い。
……解決したなら、良かったな」
 自分の発情期事情も僅かだが開示することになり、帰代も落ち着かない気分になる。そんな気持ちを切り替えようとコーヒーを飲んでいたのだが、神無の相談はまだ終わりではなかった。
「あと、だらだら先輩と中々会えないときに、気付いたら先輩が置いてった、その、ぱ、パンツの匂いを嗅いでたことが、あって……!」
「っ!?」
 思わず飲んでいたコーヒーを噴き出しそうになるのを、帰代は寸でのところで堪えた。
 目を見開いた帰代を見て、神無は肩を落とす。
「やっぱり、変態っぽいよな……? 俺、なんであんなこと……
 咽かけた喉の調子を何とか整え、帰代は「い、いや」と神無の変態発言を否定する。
「えーっと……神無も、Ωの巣作りは聞いたことがあるな? あれは番の匂いのついた衣類を集める。お前のその行動も、番の匂いがついた衣服――しかもよりフェロモンの濃い物を求めた結果なんじゃないか?」
「あっ!?」
 指摘されて気付いたらしい神無が、思わずといった様子で声を上げた。
「そっか、巣作り……俺、巣作りってまだしたことなかったから、気付かなかった」
「お前の場合、番の私物が身の回りに少なすぎて、巣を作ろうにも作れなかったのかもな? その所為で抑圧された本能から出た行動なんじゃないか?」
 そんな予想を述べながら、帰代は視線を泳がせる。
 かつて二度目の発情期に、帰代も巣作りをしようとして材料が足りずに苦労したことがあった。思い出すだけで記憶から抹消したくなるが、残念なことに中々忘れられずにいる。
「帰代先輩も、そういうことあるの?」
 だから神無に追撃されれば、顔を顰めながらも嘘は吐けずに頷いた。
 巣作りこそせずとも、番の服からフェロモンを感じて安心する感覚には覚えがあった。番持ちなら普通だと、帰代の方こそ思いたい。
 神無は「そっかぁ」と息を吐いてカフェオレを飲んでいる。相談して気持ちが少し軽くなったのだろう。引き換えに帰代の自尊心にはひっかき傷がついたが。
「あ、それと――――
「まだあるのか!?」
 ばっと顔を上げた帰代に、神無が驚いた様子で肩を跳ねさせた。
「えっ、駄目だった?」
「いや、駄目というわけじゃ……というか、お前の番はその辺のフォローはしないのか?」
 同じような立場の人間に相談するのは勿論ありだろうが、一番に悩みを打ち明けるべきは番であろう。帰代はプライドが邪魔をして番に相談するなど早々できないが、神無は違うはずだ。
 しかし、神無はまたしゅんと俯いてしまった。
「だらだら先輩にこんなこと言って、もし変だとか面倒だとか思われたら……だって、αからは番を解除できる」
 その言葉に、帰代ははっとして小さく息を呑む。
 番契約は基本的に一生ものだ。しかし、この契約はαからなら解除できる。その場合、αはまた別のΩと番になることができるが、Ωはできない。一生元番であったαを求め、大半が衰弱して早世することになる。
 倫理的な問題で、番契約の解除について法的に禁止している国も多い。認められるのは、番が重罪を犯した場合などの特例に限られる。しかし、衝動的に番契約を解除してしまうαの事例はゼロにはなっていなかった。
 警察機関に勤めていれば、部署は違えどそういった事件の情報は耳に入ってくる。だからこそ、神無は自分の身にもそれが起こるのではないかと不安なのだろう。元々αであるからこそ、Ωである自分に自信を持てないのだ。
 番契約の解除は、帰代にとっても他人事ではない。両方αではあるが、解除の権限を持つのは帰代ではなく番――嘉羽の側であろうと、帰代は本能で悟っていた。
 もし番契約を解除されたとして、帰代がその後どうなるかはわからない。ビッチングされそうになった帰代がαのままでいられるのは、嘉羽と番になったからだ。その番契約がなくなれば、またバース性が不安定になるかもしれない。今度こそΩに性転換する可能性も否定できないだろう。
 そうなったとき、帰代の項に刻まれた契約痕が消えるとは思えなかった。つまり、番のαに捨てられたΩとして生きていくことになるのだ。どう考えても、未来は暗い。
 しかし、一方でその未来が現実になる可能性が低いだろうという思考があるからこそ、帰代は不安に囚われずに済んでいた。
「神無。お前が番にと望んだ相手は、番を捨てるような屑なのか?」
「っ、違う! 先輩は屑なんかじゃない!」
 反射的に答えた神無に、帰代は溜息混じりに告げる。
「なら、悩むくらいなら相談しろ。お前たちは年齢差もあるから、言わなきゃ伝わらないことも多いんじゃないか?」
 年が一回りも違えば、常識もずれてくるものだ。それでも、神無の相手は腐っても公安刑事として長年勤めていた人間であり、基本的には法の範囲内に収まる感性を持っているはずである。
 帰代にとっては気に食わない相手だが、年少の神無の悩みを無碍に切って捨てるほど外道ではないだろう。
……帰代先輩なら、言える?」
 悩みを打ち明ける相手として、嘉羽は全く相応しくない。少なくとも、帰代が神無の言うような悩みを嘉羽に相談することはないだろう。
 しかし、黙って我慢するわけでもない。
「誰があいつに相談するもんか……! だが、文句は言う」
 文句を言ったところで、嘉羽は内容によって流すか論理的に受け止めるかするだけで、帰代に対して怒りも失望もしない。
 そもそも、嘉羽が帰代という番に対して不満を述べたことなどほとんどないのだ。仕事で身体を使うことに苦言を呈されたり、神無に項を触らせたことに嫉妬されたりしたくらいだろう。どちらも番に対してはまっとうな要求だ。
 だから帰代は、自分が文句という形で意見をぶつけたところで、嘉羽が番契約を解除するとは思えなかった。嘉羽のことを信頼しているようで腹立たしいが、悩んで不安定になるよりはマシである。
「文句言うんだ……
「ああ、言う。お前も番に文句の一つも言ってやれ」
 番の文句ひとつにうだうだ言うような甲斐性なしだった場合は、説教してやらなければと帰代は静かに拳を握る。まだ年若い後輩をビッチングして番にしたのだ、責任は取るべきだろう。
 神無はくすりと笑って、はにかんだ笑みで帰代を見つめた。
「うん、言ってみる。俺、だらだら先輩に言いたいこと、本当は沢山あったんだ」
 出来立ての番たちの相互理解が進みそうな気配に、帰代は内心ほっとした。慣れない相談役を引き受けてどうなることかと思ったが、何とかなったらしい。
「まあ、頑張れ」
「へへっ、頑張る。帰代先輩、聞いてくれてありがとう。今度だらだら先輩にもお礼を言わせないとだな」
 その発言に、帰代は迷惑そうに眉根を寄せた。
「礼はいい。どうせあいつのことだから、余計なことも言ってくるだろう?」
「う~ん、でも、番になるときだってお世話になったんだし……もしだらだら先輩を連れてくることがあったら、その時には一緒にお礼しに行くから!」
 食い下がる神無に、帰代は「わかった」と頷いた。
 今後も神無による相談はたまに持ち掛けられ、帰代を悩ませることになる。
 そんな神無の番の襲来によりひと悶着起こるのは、また別の話であった。


(あとがき)
 オメガバ🐑🐸ですが、今回は受けちゃんsのお悩み相談という名の惚気合いでした☺ 二人とも結局は、自分の番のこと信じてるんですよね。自分が🐑さんに捨てられるなんて思ってない🐸さん、このくらい強気であって欲しいです。🎃さんの不安も、だら先との関係が続いていく中で少しずつ薄れていくことでしょう。
 🐸さんとだら先のα同士の喧嘩をいつか書きたいです。🐑さんは途中から乱入で! 周りの人間が滅茶苦茶迷惑なスーパーα大戦が勃発しますねw


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