『ドラマチックに雛菊の花束を』のポスカラリー企画がありまして、現地に行けない自分なりに協力したく、及ばずながら参加しておりました。
イラストを提出したものの、不備があって没になった時の為に、エアブー公式様の『ポスカ文学メーカー』で作成した、ショートストーリーを作っておりました…が、問題なくイラストの方が通ったので、ツイッターに上げていたお話です。
お尻にグッと力を入れると、吸血鬼でも鏡に映る…どういう状況なら映るのかな、と考えるのは楽しかったです。後日、センシティブネタでも考えているので、書けたら上げるかもしれません。
2025/05/22に上げました。
@kw42431393
「あれ?あいつ、ドラルクじゃないか?」
いつもの、パトロールを終えての帰り道…いや、吸血鬼ドラルクの監視任務に向かう途中だった。
道路の向こう側で、触れれば折れそうな細長い影が、街路樹の枝に手を伸ばしている。
枝...ではないな。そこに引っかかっている風船に、手を伸ばしているのだ。
「よく見れば、傍にいるのは子供だ。 そっか、 優しいな。」
おそらく、風船を手放してしまった子供が泣いているのを見かけて、声をかけたのだろう。
出会った頃は、強大な力を隠した吸血鬼だと勘違いして近づいて、蚊さえ叩き潰せないほどクソ雑魚だと気づいて、幻滅して…だけど。
「変わった奴だけど、いい奴だ。 一緒にいて、楽しいし。」
何より、作ってくれる料理が美味しい。
あっ、勘違いするんじゃないぞ。
だからって、手懐けられた訳じゃないからな...一応。
ドラルクの身長なら、届くだろう...そう思って、見ていたんだけど。
「あっ...。」
風が吹いて、風船はさらに上へ上へ…折角、届きそうだったのに。
「あれじゃ、無理だな。私も手伝おう。」
かなりてっぺんの方の枝に、風船が引っかかってしまったんだ。私は向こうに渡る為に、横断歩道に向かう。だけど、辿り着くと同時に、信号は赤になってしまった。
「あぁ、ついてないな。飛び越えてもいいんだけど。」
私の身体能力なら、道路の向こう側まで車も飛び越えて、ひとっ飛びだ。でも…。
「だめだ。私は、警察官なんだぞ。」
市民の見本に、ならなきゃならない。大人しく、信号機が青になるのを待つ事にしたんだ。そのまま、彼らの様子を確認して…その時だった。
「あ、ドラルク。大丈夫かな。」
視線の先で、へっぴり腰の細い影が、さらに上へとよじ登っている。
彼はか弱過ぎて、プランクさえ出来ない。 自分の体重を支える事さえ出来ず、死んでし まうほどなのに…。
「…ドラルクの姿が、ガラスに映ってる。知り合いでもないのに、必死になって。」
向かいのビルを見る。チラチラと、木を登っていくドラルクの姿が、ビルのガラスにうっすらと映っては消える。彼ら吸血鬼は、グッと力を込めないと鏡に映らないのだ。努力する事を嫌う彼が、必死 にしがみついて登っていく姿は…なんだか。
「ハハ、鼻息丸みたいだ。」
地面に落ちた蝙蝠が空に飛び立つ為に、街路樹を登っていく姿によく似ていた。ガラスに映るその姿は、とても健気で…208歳とは思えないほど、 微笑ましい。
『ど、どうだ!取れたぞ!!』
『わあ!!おじさん、ありがとう!』
そして、嬉しさのあまり思いっきり力が 入ったのだろう。
ガラスには、風船を持ってふんぞり返った吸血鬼が、はっきりと映っていた。
「やった!ドラルク!今、私もそっちに行くからな!」
目の前で、信号機がやっと青色に点灯する。
彼を早く労ってやりたくて、動き出した人波と共に、私は道路の向こうに駆けだした。
「おじさん、はやく~!」
「よ~し。今降りるから、感謝して受け取り給えよ…って、あれ?改めて、下を見ると高過ぎてこわい~!スナァ...。」
そう。こうなると、分かってたんだ。そのまま、彼がいる街路樹に駆けつける。
そして、私は腕を広げて、上にいる彼に呼びかけた。
「ドラルク~!風船を離すな!受け止めてやるから、安心して飛び降りろ!」
「え~んって、あれ?ヒナイチくん。いつから、見てたの?」
「風船を取ろうとしている所からな。よく頑張ったな!」
私の呼びかけに気づいた彼が安心して、照れそうな笑顔を私に向ける。信頼しかないその笑顔が、妙に可愛らしく見えたのは、何故だろう。
「フフ。な~んだ、そこから見られてたのかね。レディに抱きとめられるなんて、恥ずかしいけれど…それでは、お言葉に甘えまして…」
「よし!来い!」
「おじさん、がんばれ~!」
「では、少年。私が畏怖く飛び降りる所を、ちゃ~んと目に焼き付けるのだぞ!?それっ!!」
空に飛び立つ蝙蝠の様に躊躇いなく、 世界一ひ弱で優しい吸血鬼は、真っ赤な風船を握りしめて...
「あ…風船はなんとかなるけど、やっぱり無理だわ。スナァ…。」
「おっと!!まったく、変わらない奴だなぁ。」
やっぱり、風圧で死んでしまったのだろうか。
サラサラと塵を散らしながらも、ドラルクは風船と共に、私の腕の中に飛び込んで来てくれた。
ちなみに、こちらは、ポストカードの背景に描いていたイラストです。
