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鏡に映る吸血鬼(本編)

全体公開 本編ドラヒナ(両片思い期) 5 1942文字
2025-08-19 11:31:54

『ドラマチックに雛菊の花束を』のポスカラリー企画がありまして、現地に行けない自分なりに協力したく、及ばずながら参加しておりました。
イラストを提出したものの、不備があって没になった時の為に、エアブー公式様の『ポスカ文学メーカー』で作成した、ショートストーリーを作っておりましたが、問題なくイラストの方が通ったので、ツイッターに上げていたお話です。
お尻にグッと力を入れると、吸血鬼でも鏡に映るどういう状況なら映るのかな、と考えるのは楽しかったです。後日、センシティブネタでも考えているので、書けたら上げるかもしれません。
2025/05/22に上げました。

Posted by @kw42431393

 「あれ?あいつ、ドラルクじゃないか?」
 いつもの、パトロールを終えての帰り道いや、吸血鬼ドラルクの監視任務に向かう途中だった。
 道路の向こう側で、触れれば折れそうな細長い影が、街路樹の枝に手を伸ばしている。
  枝...ではないな。そこに引っかかっている風船に、手を伸ばしているのだ。

「よく見れば、傍にいるのは子供だ。 そっか、 優しいな。」
 おそらく、風船を手放してしまった子供が泣いているのを見かけて、声をかけたのだろう。
 出会った頃は、強大な力を隠した吸血鬼だと勘違いして近づいて、蚊さえ叩き潰せないほどクソ雑魚だと気づいて、幻滅してだけど。
 「変わった奴だけど、いい奴だ。 一緒にいて、楽しいし。」
 何より、作ってくれる料理が美味しい。
 あっ、勘違いするんじゃないぞ。
 だからって、手懐けられた訳じゃないからな...一応。
 ドラルクの身長なら、届くだろう...そう思って、見ていたんだけど。
 「あっ...。」
 風が吹いて、風船はさらに上へ上へ折角、届きそうだったのに。
 「あれじゃ、無理だな。私も手伝おう。」
 かなりてっぺんの方の枝に、風船が引っかかってしまったんだ。私は向こうに渡る為に、横断歩道に向かう。だけど、辿り着くと同時に、信号は赤になってしまった。
 「あぁ、ついてないな。飛び越えてもいいんだけど。」
 私の身体能力なら、道路の向こう側まで車も飛び越えて、ひとっ飛びだ。でも
 「だめだ。私は、警察官なんだぞ。」
 市民の見本に、ならなきゃならない。大人しく、信号機が青になるのを待つ事にしたんだ。そのまま、彼らの様子を確認してその時だった。



 「あ、ドラルク。大丈夫かな。」
 視線の先で、へっぴり腰の細い影が、さらに上へとよじ登っている。
 彼はか弱過ぎて、プランクさえ出来ない。 自分の体重を支える事さえ出来ず、死んでし まうほどなのに
 「ドラルクの姿が、ガラスに映ってる。知り合いでもないのに、必死になって。」
 向かいのビルを見る。チラチラと、木を登っていくドラルクの姿が、ビルのガラスにうっすらと映っては消える。彼ら吸血鬼は、グッと力を込めないと鏡に映らないのだ。努力する事を嫌う彼が、必死 にしがみついて登っていく姿はなんだか。
 「ハハ、鼻息丸みたいだ。」
 地面に落ちた蝙蝠が空に飛び立つ為に、街路樹を登っていく姿によく似ていた。ガラスに映るその姿は、とても健気で208歳とは思えないほど、 微笑ましい。

 『ど、どうだ!取れたぞ!!』
 『わあ!!おじさん、ありがとう!』
 そして、嬉しさのあまり思いっきり力が 入ったのだろう。
 ガラスには、風船を持ってふんぞり返った吸血鬼が、はっきりと映っていた。
 「やった!ドラルク!今、私もそっちに行くからな!」

 目の前で、信号機がやっと青色に点灯する。
 彼を早く労ってやりたくて、動き出した人波と共に、私は道路の向こうに駆けだした。



「おじさん、はやく~!」
「よ~し。今降りるから、感謝して受け取り給えよって、あれ?改めて、下を見ると高過ぎてこわい~!スナァ...。」

 そう。こうなると、分かってたんだ。そのまま、彼がいる街路樹に駆けつける。
 そして、私は腕を広げて、上にいる彼に呼びかけた。
 「ドラルク~!風船を離すな!受け止めてやるから、安心して飛び降りろ!」
 「え~んって、あれ?ヒナイチくん。いつから、見てたの?」
 「風船を取ろうとしている所からな。よく頑張ったな!」
 私の呼びかけに気づいた彼が安心して、照れそうな笑顔を私に向ける。信頼しかないその笑顔が、妙に可愛らしく見えたのは、何故だろう。
 「フフ。な~んだ、そこから見られてたのかね。レディに抱きとめられるなんて、恥ずかしいけれどそれでは、お言葉に甘えまして
 「よし!来い!」
 「おじさん、がんばれ~!」
 「では、少年。私が畏怖く飛び降りる所を、ちゃ~んと目に焼き付けるのだぞ!?それっ!!」

 空に飛び立つ蝙蝠の様に躊躇いなく、 世界一ひ弱で優しい吸血鬼は、真っ赤な風船を握りしめて...
 「あ風船はなんとかなるけど、やっぱり無理だわ。スナァ。」
 「おっと!!まったく、変わらない奴だなぁ。」

 やっぱり、風圧で死んでしまったのだろうか。
 サラサラと塵を散らしながらも、ドラルクは風船と共に、私の腕の中に飛び込んで来てくれた。



 ちなみに、こちらは、ポストカードの背景に描いていたイラストです。


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