@tirichann
元恋人から連絡が来た。彼とはもう別れているが、仕事上で話さなければならないことがある。連絡の内容は、一緒にご飯を食べないかというものだった。どれほど仕事の話をしようと、彼が元恋人であることに変わりはない。今の恋人であるデンジに許可をとった方が良いだろう。ダメだと言われてしまった際には、メールで連絡を続けるとか、第三者を呼んで大人数で話し合うとか、工夫のしようがある。
「元カレからご飯誘われたんだけど、行っていい?」
変に仕事の話だからと言い訳するのもデンジに失礼のような気がした。デンジは何も言わず、Vサインを寄越した。行っていいということだろう。私はお礼を言って携帯に向き合う。承諾の連絡を入れ、後は準備するだけだ。
デンジの心が意外にも広いのが成長を見られたようで嬉しいような、寂しいような気がしていた。私はデンジに嫉妬してほしいと思っていたのだろうか。
元カレとの食事の日当日、席に行くと既にデンジがいた。元カレは驚いたように動きを止めた。デンジが知らない人だということ以上に、デンジの食べる量と食べ方が尋常ではないからだろう。
「何でいるの?」
知り合いとして私は尋ねる。ここは私がなんとかしなければいけない場面だ。デンジが嫉妬してくれたなら嬉しいが、そうではない気がする。大量に頼まれた肉料理を見ながら思う。
「お前が行っていいか聞いてきたんだろ。わざわざ聞くってことは俺も関係あんだろ?」
同行者が元恋人であり、デンジが今の恋人だから聞いたのだ。デンジにも関係があるからとか、一緒に行きたいから聞いたわけではない。デンジは相変わらず世の中を勘違いしている。
「名前に下心ある奴の金で食う飯はうまいぜ! 支払いよろしくなぁ!」
元カレだから聞いたということは理解していないのに、彼が私に下心がある(ような関係)だということは理解しているらしい。デンジの野生の勘のようなものだろうか。私達は呆然と料理にがっつくデンジを見ていた。もう、仕事の話をできる状況ではない。「変わった人だね」と元恋人が言うのが聞こえた。