@tirichann
「友人になってほしい」
私を呼び出して突然言った冨岡に、私は目を丸くする。私はてっきり、剣の指南を受けるとか、鬼殺隊のことで何か言伝があると思っていたのだ。だが考えてみれば冨岡は他人に剣を教えてくれるほど親切でもなかった。誰かを特別扱いすることも、ないと思っていた。
「どうして……?」
ようやく絞り出した私の声に、冨岡は淡々と答える。まるで前もって答えを用意していたかのようだ。
「胡蝶に人間関係が乏しいと言われた。それならまず友人を作るべきだと思い、周りの人間の中で一番好きなお前がいいと思った」
「私のことが、一番」
私は何も考えずに繰り返す。私は冨岡から一番好かれていたのだ。それにしては随分態度が堅くなかっただろうか。冨岡とはわかりづらい奴なのかもしれない。
妙に高揚しそうになっているのは、友人としての「好き」を恋愛の「好き」と勘違いしそうになっているからだろう。だって、友人としての「好き」をこれほど改まって告げる人はいない。
「ああ。毎晩寝る前に考えるのはお前のことだ。お前は誰よりも好ましい。自分のものにしたい」
それは恋愛の好きと言うのでは、と私は言いかけた。先程頭によぎった勘違いは勘違いではなかったようだ。冨岡は私を恋愛の意味で好きで、それに気付いていない。私が好きだからという理由で友達になろうとしている。
訂正してもいいけれど、人間関係初心者の冨岡には友人からの方がいいだろう。友人関係が深まってきた頃、恋人に誘導してやるくらいでいい。
私を好きなのは冨岡なのにどうして私が交際を申し込むような真似をしなければいけないのだと思いつつ、私は今後の見通しを立てた。そう思っている時点で私も結構冨岡を好きなのかもしれない。