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三人寄れば

全体公開 オメガバ🐑🐸 4 3 4861文字
2025-08-27 10:23:41

オメガバ🐑🐸第18弾、🐸&☕&🎃の番持ち三人による相談会です。カルみと、🌸☕要素有。
ネタバレは特にありません。

三人寄れば

「え~っと……番ができました。はい」
 目を泳がせ頬を掻きながら聖が報告してきたのは、発情期休暇が明けた日のことだった。
 項に見事な噛み痕をこさえた聖の表情は、少し照れが見えるものの明るいもので、だから宿舎の面々は「おめでとう」と祝福の言葉を投げかけた。普段は恋愛沙汰となれば揶揄う側の聖だが、今回ばかりはにやけ顔の皆からの祝福に「ありがとう」と何の捻りもない言葉を返すしかなかった。
 そんな聖が自室に帰代と神無を招いたのは、入浴も終えて後は寝るだけという時間であった。
「それで、何の用だ?」
 就寝前ということもあり、三人が持っているのは麦茶のグラスである。帰代がグラス片手に尋ねれば、聖は「いや~、その」と歯切れ悪くちらちらと視線を寄越した。
 その態度に苛ついた帰代が、眉根を寄せて溜息を吐く。
「言わないなら俺は部屋に戻る」
「待って! えっと、その、俺にも番ができまして……
 先日皆の前で報告したことを改めて口にする聖に、帰代は「そうだな」と頷いた。隣で神無は「聖先輩、おめでとう」と再度祝福の言葉を投げかけている。
「三十一ちゃんありがとね。それで、まあ、番にはなったけどすぐに入籍とか同居とかは考えてなくて、しばらくは今のままの生活を続ける予定なんだけど、さ」
「それぞれの仕事やタイミングもあるだろうし、それでいいんじゃないか?」
 帰代は何となく聖の相手を察していた。職場が同じでバディを組んでいるのなら日常生活での接点も多く、同棲や結婚を急ぐ必要もないだろう。
 そもそも、この場にいる全員が番持ちなのだが、同棲や結婚をしている者は一人もいない。番になることは結婚と同義に考えられることが多いものの、入籍は必須ではないのだ。
「そこで相談なんだけど――――
 一度言葉を切った聖がちらりと神無を、そして帰代を見やる。
「発情期のときって、番を家に呼ぶでしょ? どんな準備をしてるのか、参考までに聞かせてもらいたいな~、なんて?」
「はぁ!?」
「えっ!?」
 帰代がきりりと眉根を寄せ、神無が一瞬で顔を赤くした。
 零さないよう持っていたグラスを置き、帰代が訝しげな顔で言う。
「その手の知識ならお前が一番詳しいだろう? わざわざ俺たちに聞くな!」
「そりゃ医学的な知識とか、一般的な発情期の対応とかについては知ってるよ。でも、いざ自分が番を迎えるとなったら、どこまでやった方が良いのか、逆にどこまでやったら引かれるかとか、実際の話が知りたくて」
 知識は豊富であっても、聖が番と発情期を迎えるのは実質次が初めてになる。
 年上としてのプライドがあるため、準備不足という手落ちは避けたい。一方で、用意周到過ぎて引かれたらどうしようという恐怖心もあるのだ。
「二人とも立場的には俺と同じでしょ? お願い、アドバイスちょうだい!」
 顔の前で手を合わせて拝んでくる聖に、神無は恥ずかしそうに頬を染めて「え~」と何とも言えない声を上げる。
「俺だって、だらだら先輩と番になってからまだそんなに経ってないし……準備?ってのもあんまり考えたことなくて、部屋掃除したり、食糧買い込んだりするくらい?」
 神無から視線で助けを求められ、帰代も「そんなもんだろ」と肯く。
 経験者二人の意見が一致しているのに、聖はまだ不満そうだ。
「それは俺もするつもりだけどさ……もっとこう、何というか、番をちゃんと歓迎してる感を出してあげたいというか……変ちゃん!」
 急に詰め寄られ、帰代は思わず仰け反る。
「何だ急に!?」
「この中では一番変ちゃんが番になってから長いよね? 発情期前に何準備してるか教えて!」
 帰代が嘉羽と番になってから一年以上経つ。確かに、番と発情期を過ごした回数は聖や神無よりも多いだろう。
 しかし、帰代にとっても非常にプライベートな話題だ。おいそれと話せるものではない。
「さっき神無が言ってただろう!? 掃除と食糧の準備だ!」
「いーや、変ちゃんなら絶対他にも何かしてるでしょ!? お願い、教えてよ~!」
「何で俺が!? 神無、お前も迷惑だ…………
 視線を向けた先に神無の期待の眼差しがあり、帰代の声は尻すぼみになっていった。
「俺も、発情期前に何かしておいた方が良いことがあるなら、聞きたい。だらだら先輩任せなこと多いし、俺だって先輩をちゃんと迎えたいし……
 後半はもじもじと指先を弄り始めたいじらしい後輩の姿に、帰代がうっと息を呑む。滅多にいない素直な後輩に、帰代はなんだかんだ言って甘いのだ。
 左右からじっと期待の目で見つめられ、帰代は追い詰められていく。
「俺は、αだから、お前らの参考になるとは――――
「それでもいいよ」
「俺たちの幸せのためにお願い、変ちゃん」
 帰代とて、二人の幸せを願わないはずもない。番を得たからには、幸福に添い遂げて欲しいと思っている。
「変ちゃん」
「帰代先輩」
 二色の視線の圧に負け、帰代は絞り出すように言う。
「~~~~飽くまで一例、だからな?」
 二人の表情がパッと明るくなった。揃って頷く二人に、帰代は溜息を吐いて気持ちを切り替えようとする。そんな帰代を、二人はじっと見つめた。
 興味津々な様子に眉間を揉み解し、帰代は視線を彷徨わせながら話し出す。
「掃除は普通にするし、シーツ類の洗濯もする。食糧は――ゼリー飲料やらは勿論買うが、初日の夕飯は作る」
「手料理でお出迎えするわけか」
「帰代先輩、料理上手だもんな」
 うんうんと頷きながら聞いている二人に、帰代は恥ずかしさで赤くなる頬を誤魔化すように咳払いをした。
「準備なんて、この程度だ」
「「え~?」」
 揃った声と疑うような眼差しを、帰代はぎろりと睨み返す。
「これだけだが?」
「その料理が特別メニューとか?」
 探りを入れてくる聖に、小さく嘆息して見せる。
「特に手の込んだ物を作ったことはない」
 実際、帰代が作る献立は昼過ぎに取り掛かって十分間に合うものばかりだ。調理の合間に休憩する余裕すらある。
「なら、相手の好きな物とか?」
 小首を傾げた神無に、帰代の動きが一瞬止まった。聖がそれを見逃すはずもない。
「なるほど~、番さんの好物を手作りしてるわけだ」
 にんまりと笑う聖に、帰代はこめかみを引き攣らせる。
「それが、なんだ?」
「いーや? 変ちゃんが愛情込めて好物を作ってくれるんだから、番さんも喜んだでしょ?」
 付け加えられた余計な一言は無視して、帰代は腕を組んで鼻を鳴らす。
「毎回美味そうに食べてるが、俺の料理は美味いから当然だ」
 ニコニコしながら食事をする嘉羽の顔が脳裏に浮かぶ。不器用なところがあるのでたまに零すこともあるが、毎回残さず平らげていた。
 最初は何でも美味しそうに食べる所為で逆に作り甲斐が無いように感じていたが、外食するときよりも手料理を食べるときの方が少し嬉しそうだということに気付いてからは、そこに苛立ちを感じることはなくなっている。
……何だ? その目は」
 思考に向いていた意識を戻してみれば、聖と神無が生温かい目で帰代を見つめていた。
「変ちゃん、今番さんのこと思い出してたでしょ?」
「は? 別に、俺は」
「帰代先輩、何かこう、『好きだなぁ』って顔してた」
 否定しかけたところ神無に追い打ちをかけられ、帰代は顔が熱くなるのを感じた。
 神無が口にした『好き』というワードに、少し前の嘉羽との恥ずかしすぎるやり取りが思い出され、それを表に出すまいと必死に頭の隅へ押し込む。
 何とか話題を変えなければと、帰代は咄嗟に口を開いた。
「そうだな、もし掃除や食糧以外で準備することがあるとすれば――個人差が大きいが、相手の衣類か?」
 帰代の視線が聖と神無を交互に見やる。
「巣作りをしたい性質があるなら、巣材が必要だからな。同居してないなら相手の衣類なんてほとんど置いてないだろうし、準備しないと苦労するんじゃないか?」
 神無は心当たりがあるらしく、「確かに」と頷いている。聖も「巣作りか~」と遠い目をして呟いた。
「Ωでも巣作りするタイプとしないタイプがいるもんな~俺、どっちなんだろ?」
「わからないなら、念のため前日までにいくらか部屋に運んでおいてもらったらどうだ? いざ発情期が始まってから、巣材が無くてストレスを溜めるより良いだろう」
 番に脱いだ服や使用後のタオルを強請るという羞恥に悶えればいいと、帰代は額を抑えて悩む聖を見下ろした。
 やり返してやったと思っていたところで、またしても神無からの不意打ちを食らう。
「そっか、帰代先輩は巣作りするんだもんね?」
 帰代が思わず神無の方を振り向く傍で、聖がバッと顔を上げた。
「えっ!? 変ちゃんの巣作り!?」
「うるさい! いつも作るわけじゃない! 何か大きなストレスがかかったときだけだ!」
 帰代が巣作りをしたのは発情期までの期間が空きすぎたときや、番の到着が遅れたときだけだ。決して毎回巣作りをして番を待っているわけではない。
 しかし、聖や神無の脳内では一般的な巣作りのイメージ――番の服を寄せ集めたベッドにいる帰代の姿が思い浮かんでいるのだろう。聖は口元に手を当てて目を輝かせているし、神無は顔を赤くして視線を泳がせていた。
 帰代はますます頬が熱くなるのを感じながら、特に聖を睨みつける。
「笑ってられるのも今の内だけじゃないか? 見栄を張って番に何も言いだせないまま、当日になって材料が足りずに涙目になってるかもしれないぞ?」
「う゛っ」
 仲間のことであれば可愛らしい、微笑ましいと思っていられるが、我が身に降りかかるとなれば話は別だ。Ωとしての習性だとはわかっていても、正気の間は羞恥を抑えきれない。
 恥を忍んで事前準備をするか、それとも巣作りしないタイプであることに賭けて準備しないか――後者の場合は、賭けに負けたとき帰代の言うように情けない姿を曝す羽目になるだろう。
「どうしよう……
 悩み始めた聖は一度放って置き、帰代は神無の方を見やる。
「そういえば、前に相談されたが……その後は問題ないか?」
 番の下着に引き寄せられていた辺り、神無も本来は巣作りをしたいタイプなのだろう。そのことを番に言い出せずに苦しい思いをしているのではと心配する帰代に、神無の顔が一気に真っ赤になった。
「えっ!? あっ! うん! 俺は大丈夫! 大丈夫だから心配しないで!」
 その反応に、おそらく番に頼んで巣材を調達してもらったのだろうということがわかり、帰代は「……そうか」と呟いた。今度は帰代が生温かい目を向ける番である。
 居た堪れなくなった神無が、まだ悩んでいる聖の肩を揺すった。
「聖先輩、絶対服とかもらっておいた方が良いよ! 勝手にパンツとか持ってっちゃう前に!」
「おぉう、衝撃的な経験談。まじかぁ……本能抑えきれなかったら、勝手にパンツ持ってっちゃうのかぁ」
 繰り返されて、自爆したことに気付いた神無が轟沈した。
 その隣で、聖は生温かくも遠くを見る目をしている。この調子であれば、天秤は事前準備の方へと傾くだろう。
 帰代は汗をかいたグラスを手に取り、氷の融けかけた麦茶を流し込んだ。火照った身体を、その冷たさが僅かに冷ましてくれる。
 番持ち三人の相談会は、消灯時間が来るまでこうして賑やかに続いたのだった。


(あとがき)
 オメガバ🐑🐸、今回は番持ちのΩ(側)な三人の恋バナ(?)でございました。三人寄れば文殊の知恵か、それとも姦しいだけか……互いに羞恥に駆られながら、今後も惚気合ってくれることでしょう☺
 巣作り好きなので、☕さんにもぜひしてもらいたいです。🌸ちゃんの服を山積みにして、上気した顔で🌸ちゃんのこと待ってる☕さん、とてもえっちで素敵だと思います💕


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