@tirichann
ミスラはいつも予想の斜め上を行く人だ。でも、これを想像できる人はいなかったのではないだろうか。
「失恋してきてください」
一応恋愛の、センシティブな話だろうにミスラは食堂で人目を憚らずに言った。自分の恋愛でなければいいということなのだろうか。それにしても私に失恋をお願いするのはどうしてだろう。恋をしてきてほしいのではなく、失恋をしてきてほしい。普通好きな人にそんなことをお願いしないだろう。
ミスラが私のことを好きだとも限らないが、異性に恋愛の話をするからには少なからず距離が近いのではないかと思ってしまう。
「何で?」
私が尋ねると、ミスラは平然と答えた。
「その方がつけこみやすいらしいので」
私は脱力する。遠回しなやり口だが、結局私のことが好きなのだ。好きだと言うのではなく、好きだと隠さない上で確実な方法を狙うのがミスラらしい。
いくら失恋しろと言われてもそう簡単にできるわけではない。何より、これから好きになるならミスラしかいないだろう。今はまだ好きと自信を持って言えないけれど、魔法舎の中から誰かに告白しろと言われたらミスラを選ぶ。ミスラは自分が失恋するはめになるとわかっているのだろうか。いないから言えてしまうのだろう。
私だけ優位に立っているような今の状況が心地よくて、もう少しだけ秘密にしておくことにする。ミスラが正面切って好きだと告白してきたら、それはその時考える。