オメガバ🐑🐸第20弾、巣作りの話題中に🐸さんの巣の写真を見ちゃう☕さんと🎃さんです。
ネタバレは特にありません。
@rikka_trpg801
その後第二回写真データ消去戦が行われた
刑事たちが集う宿舎、聖の自室でそろそろお馴染みとなり始めた番持ちたちの相談会が、今宵も開催されていた。
「先輩たちに聞きたいことがあるんだけど……」
砂糖たっぷりのルイボスティーを手に切り出したのは、最年少の神無だった。しばらく前に一回り年上のαである縞斑と番になり、同棲はしていないが良好な関係を続けている。
とはいえ、育った環境や若さもあって恋愛経験の少ない神無に悩みは尽きない。αからΩに転換しての番契約なので尚更だ。
「なぁに? 三十一ちゃん」
聖はコーヒー片手に目を瞬かせ、帰代は黙って同じくコーヒーを啜っている。
番持ち歴では長い順に帰代、神無、聖となるのだが、恋愛経験でいうと一番多いのは聖だ。一般的な恋愛相談なら、帰代は怪しげな無いようにならない限りは聖に任せている。
もじもじと恥ずかしそうにしていた神無は、上目遣いに二人を見て口を開いた。
「巣作りで、服とかが足りないな~ってとき、どうすればいいのかな? なんて……」
「あ~」
何とも言えない声を出して、聖が隣の帰代に視線を向けた。回答役を振られた帰代はといえば、眉根を寄せて口元を歪めている。
可愛い後輩の力になってやりたい気持ちはあれど、プライベートな内容に触れるバース性関連のことはあまり明かしたくないのだ。
今でこそ一応本能だけでなく感情も伴った番になっているものの、帰代の番関係は利害の一致から始まっている。しかも相手は国際指名手配犯であり、知人に番であることをあまり知られたくはないし、まして番と過ごしている時のことなど話したくはない。
「……足りないならもっと寄越せと要求すればいいだろう」
だからこそ一般論に近い答えをしがちなのだが、それで納得して終わりになることはまずなかった。
「でも、どのくらいあったら足りるのか、自分でもよくわからないんだ」
巣作りをするときは、大抵発情期で理性が本能に押し負けている状態だ。手元にある分だけで工面するような妥協は難しい。安心して番を迎えるための巣が不出来なものでは、逆にストレスの原因になってしまうのだ。
番である神無に強請られたのなら、縞斑もまとまった量の巣材を用意したはずである。しかし、神無にとっては物足りなかったらしい。
「個人差があるからな……神無にとって必要な量は俺にはわからない。とにかく大量に寄越せと言ってみたらどうだ?」
すると、神無は頬に朱を上らせてまたもじもじしだす。
「着た後の服をちょうだいって、ただでさえ恥ずかしいのに、もっと沢山欲しいとか言えないよ……」
「三十一ちゃんの気持ち、わかるな~」
聖がしみじみと頷く。こちらは先日番との二度目の発情期を過ごしたはずだが、何か思うところがあるらしい。
「俺も念のためにって、お願いして服とかタオルとか持って来てもらったんだけど、何かイマイチでさ。何とか発情期は過ごせたんだけど、後から『準備に日数がかかるので、具体的な必要数を教えてください』って言われちゃった」
巣材として求められるのは、番の匂いが付いた布製品だ。洗濯後の物は匂いが薄れているため適さない。
つまり、一度着たり使ったりした後で洗っていない物が必要になるのだ。余程ズボラでなければ毎日、もしくは数日おきに洗濯しているだろうから、巣材としてストックしておくという意識が無ければあまり数は集まらない。
「変ちゃんは巣作りしたことあるんだったね。大体でいいから数とかわかったりする?」
帰代は渋面になりながらも、聖の横で期待を込めて見つめてくる神無の視線に負けて口を開く。
「確か、大き目の段ボール箱一つ分だったはずだ」
両手で大体の大きさを示しながら言ってみるが、二人ともあまりぴんと来ていない様子だ。
「そのくらいの箱に詰められるのって、何枚くらいなんだろう?」
「う~ん。変ちゃん、もうちょっと具体的な説明ってできる? もしくは箱にどれくらい入ってたかわかる画像とか」
口々に問いかけられても、帰代とて巣作りをするようなときは本能優位の状態なのだ。記憶はあやふやな部分が多く、詳細は覚えていない。
「知らん。あいつが用意して送りつけてきた物だったし、洗濯する頃には他の洗濯物と混ざってたからな」
「そっか~……なら、番さんなら覚えてたり?」
聖に探るような視線を向けられ、帰代は嫌そうな顔で口を結んだ。
脳みその出来が良すぎる番のことだから、おそらく箱詰めした衣類の種別枚数まで正確に覚えていることだろう。聞けば何食わぬ顔で答えるはずだ。
だが、通話などすれば余計なことまで言いかねないため、正直尋ねたくはない。
「断る」
「そんなこといわずに、お願い変ちゃん」
「帰代先輩、お願い」
左右から強請られ、帰代がうっと黙り込む。
この三人での会話、特に番関係の話題になると、いつの間にかこの形に持ち込まれていることが多い。そして、助けを求められた帰代は生来の面倒見の良さもあって、大抵逃げられずに終わるのだ。
見つめてくる二対の視線に押されながら考えを巡らしていた帰代が、やがて盛大な溜息を吐いた。
「聞いてはみるが、メッセージを飛ばすだけだ。時差もあるだろうから、返事が無ければ今夜は諦めろ」
「そうこなくっちゃ」
「帰代先輩、ありがとう!」
二人の視線から逃れるように横を向いた帰代が素早く端末を操作する。メッセージアプリの履歴は万が一のことを考え一定期間で消去しており、今はまっさらな画面が表示されていた。
そこへ端的に『前回の巣作りのときに送ってきた服とかの量を具体的に教えろ』と簡潔に文章のみで送信しておく。そして、いっそしばらく気付いてくれるなと密かに願った。
「あの人もこういうのやるんだ」
「まあ、何かと便利だしね」
帰代の肩越しに画面を覗き込んでくる二人に「おい!」と抗議したところで、メッセージ欄に既読マークがついた。どうやら帰代にとっては運悪く、手すきのタイミングだったらしい。
「お、これはお返事来るんじゃない?」
「来たら俺が伝えるから、覗き込むんじゃない!」
肩口の聖と言い合っている間に、帰代の手の中で端末が短く震えてメッセージの受信を伝えた。
縦に長く広がったメッセージ欄に、箇条書きで衣類の種別の枚数が書き連ねられている。覗き込んでいた神無がサングラス型の端末にその数を記録しつつ、「おお……」と思わず声を漏らした。
「こうして見ると、やっぱり結構数が要るんだね」
「俺、これの半分くらいしか用意してなかったかも」
左右から聞こえてくるそんな感想に、帰代の顔が熱くなる。自身がこれだけ大量に番の匂いを欲していたと客観視するのは、理性が勝っている状況では羞恥でしかない。
帰代が細かく身体を震わせながら「もういいだろう!?」と声を上げた瞬間、手の中で端末がもう一度震えた。
三人の視線が画面に集まる。『参考画像です』という短い文章をそれぞれが認識した直後、三度端末が震えて一枚の画像が送られてきた。
それは、ベッドの上に綺麗に畳まれた衣服やタオルで作られた長方形の囲いの中、横たわり発情しきって蕩けた目を撮影者に向けている帰代の写真だった。
「~~~~っ!?」
帰代が言葉にならない声を上げて顔を真っ赤に染める。
かつて消すように厳命したはずの写真だったが、帰代の番はまだ保持していたらしい。確かにデータ消去に対して肯定的な返答はしていなかったが、まさかここで送信してくるなんて帰代は夢にも思わなかった。
「わぁ~……何というか、変ちゃんらしいきっちりした巣だね」
聖は感心半分にやけ半分といった様子でそんな感想を口にする。一方、神無は発情期で色気たっぷりの帰代の写真に中てられたのか、顔を赤くして口元を押さえていた。
はっと我に返った帰代が光の速さでアプリを閉じるが、すでにあの画像は二人の脳内に記憶された後である。
「すぐに忘れろ」
「いやいや、参考にするんだから忘れちゃ駄目でしょ?」
「あんなの参考にするんじゃない!」
帰代がいくら目くじらを立てたところで、聖はにまにまと笑うばかりだ。「あんな目で見つめちゃって、変ちゃんってば番さんのこと大好きなんだね~」という言葉に、帰代の顔が更に赤くなる。
発情期の所為だと叫びたいのに、写真で見た自分の目から読み取れてしまった感情が邪魔をした。いくら言葉で否定したところで、画像の帰代が雄弁に物語っている以上無駄な足掻きにしかならない。
「俺もちゃんと巣作りしたら、あんな風にだらだら先輩のこと見てるのかな」
真っ赤になって口を押えたまま、神無がポツリと呟く。
その発言を聞いた聖も、我が身に置き換えて想像したのだろう。帰代を揶揄うのを止め、視線を泳がせながら「あ~」と何とも言えない声を零した。
巣作りの仕方はそれぞれ個性があるだろうが、番の匂いのする巣材に囲まれてうっとりとした表情を浮かべる自身の姿は、発情期でない状態では羞恥を煽るものでしかない。
各々程度の差はあれ頬を染めた番持ち三人が黙り込み、夜も更け行く中で相談会は自然と解散の流れになった。
神無と聖が番に交渉して無事に満足のいく巣作りができたのか。それを知るのは二人とその番だけである。
一方で盛大な羞恥プレイを受けた帰代が、次回番に会ったときに画像データの完全消去を求めて声を荒げるのは、想像に容易い未来であった。
(あとがき)
オメガバ🐑🐸、マロリクで頂いた巣作り写真ネタでした。番の可愛い姿を基本的には独り占めしつつ、たま~に自慢したくなる🐑さんも可愛いと思います☺ 「僕の番はこんな素敵な巣でお出迎えしてくれました」的な。🐸さんとしては恥ずかしくて堪らないでしょうから、何とかして画像データを破棄すべく奮闘すると思います。でも凄腕ハッカーな友人もいる🐑さんからデータを奪うのはまず無理なので、諦めてください🐸さんw
一方で☕さんも🎃さんも、具体的な巣材の枚数を知った上でそれを番に強請るという試練が待っているので、己の羞恥心と戦いながら頑張って欲しいですね💕