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旅立つ前に…

全体公開 人魚姫ドラヒナ 6428文字
2025-09-15 17:05:57

続きもので書いている、人魚姫ドラヒナのお話です。この話(焼き尽くされた、氷の心 https://privatter.net/p/11535541)から、少し経ったお話です。無事に契約を完遂し、魔女を生き返らせて、想い人と新婚生活と療養生活を満喫するヒナイチ姫。近づいてきた繁殖期に気づき、旅立つ前に、ある儀式を行います。
3P目のリンクから、追加した初夜シーンに飛べます。18歳未満の方は、4Pから続きをどうぞ。
2024/04/26 に上げました。

Posted by @kw42431393

 海と陸が繋がって、3週間が経った。   
 一気に両世界の者達が動くと、受け入れ側も大変だが、まだまだ帰郷目的の者達が優先だ。
 さほど問題を起こす事はないし、お互い歓迎モードになっている。
 さっき、少しだけサンゴ礁に顔を見せてきたが、城下町は未だにお祭り騒ぎだ。シンヨコ王国もそうだという。
 『おい、ヒナイチ。魔女殿もとい義弟殿は、どうだ?』
 義弟違和感があるな。ドラルクの方が、ずっと年上だし。まぁ、元々老け顔だし。
 「ん、だいぶ体力も回復してきたみたいだ。先週、私の肉の効果が切れて心臓が止まったけど数時間で目覚めたから。たぶん、あと1週間は元気だと思うぞ。」
 普通の人魚達の肉で、魔女が健康でいられたのは24時間。私の肉で、2週間か。
 私の肉でも、お前の病気を治す事は出来ない。死ぬ直前に不老不死の薬を飲ませて生き返らせたから、効果が切れると、ドラルクは突然苦しみだして、その場で死んでしまう。
 数時間後目覚める頃には、デスリセットされて何でもなく笑っているでも、見ている側は辛いな。

 『ここで眠ったら、二度と目覚めないかもしれないと子供の頃から怯えていたのだよ。今は必ず目覚めるって分かっているし、傍に貴女がいるから怖くはない。気にしないで。ねえ、そんな顔をしないでおくれ。』

 私達の望みは、元々同じものだった。その上、契約までちゃんと結んで今がある。その笑顔は嘘じゃない。でも、やっぱりいつだって元気でいて欲しい。
 だから生き返らせたら、すぐにでも、ロナルド王子達と蓬莱島へ飛んで行きたかったんだけどな。
 でも、まだドラルクのお父上達竜子公夫妻から連絡が来ていないんだ。

 『いつの間にか、蓬莱島周辺の潮の流れが変わっているんですよ。』

 そう、サンズが言っていたんだ。サンズは、かつて母国で疫病が流行った時に、船で精鋭部隊を連れて上陸している。ドラルクの治療薬を作るにあたって、彼女は再び下見に行ってくれていたらしい。
 『サンズちゃん達は、ドラルクに埋め込まれたパスポートのおかげで、少々の嵐でも問題ねーぐらい泳げます。でも、あれはさすがにサンズちゃん達いや、お前でも厳しいかもしれません。』
 潮の流れいくら強大な魔力を持つ魔女でも、それを変えるのは難しいだろう。でも

 『お父上、数年前から冬眠中の竜大公様を起こしてくれ。』

 ドラルクを救う事を条件に、私が竜子公夫妻と契約を結んだのは、そういう事だったんだ。勿論、両世界の交流を反対している者達を説得して貰う為に、彼のカリスマに期待していたからなんだけど。
 一番の目的は彼の力で潮の流れを変えて貰う為だ。 
 「焦る必要はないだろう。丁度、待ち時間と思えばいい。今日あたり、お前も時期だな。それも含めて、ちゃんと休んでおけ。」
 「うん。ありがとう、兄さん。」
 そう言って、故郷を後にする。そうだな考えようによっては。
 不老不死の薬を作る為に、左手を切断した私にも、思ったよりダメージがあったんだ。あの事件の後、しばらく寝込んでいたから、パトロールもこっちの仕事も休ませて貰っていたんだよな。
 それに一人と一匹を置いていくには、魔女は寝たきりだった頃のダメージが尾を引いていて、心配だったんだ。
 やっと少し、骸骨みたいになっていた頬も、丸みを帯びてきた気がする。
 だから、そろそろいいかな
 そっと、自分のお腹に手を当てる。人魚達にもよるが、私の血筋は卵生だ。卵胎生の者もいるし、胎生の者もいる。強めに押すと、柔らかい感触がする。それに、なんだか心が浮ついている大好きなあいつの元に早く飛んで帰りたいぐらいだ。
 長命種である私達は繁殖能力が低く、次の繁殖期までの周期も長い。ここを逃すと、次は数十年後になるかもしれない。
 私だって、親友と子育ての相談とか、子供達を連れて遊びに行ったりしたいじゃないか。
 「タコとは、繁殖方法がちょっと違うからな。サンズに貰った燕の子安貝があるから、受精は問題ないけど。大丈夫かな魔女。」
 本棚からサンズに借りた閨房術の本を取り出すと、私はドラルクが待っている別宅に戻る。
 そういえば、魔女にこの本を見せると、いつも困った様に苦笑いをするな。どうしてだろう。



 「おかえりなさい、お姫様。」
 「ヌヌヌリヌイ!」
 「ただいま!魔女、ジョン。」

 兄と交わした契約を果たした私達は、晴れてれっきとした夫婦になったんだ。なのに、癖かな。
 ついつい、今でもドラルクは「ヒナイチ姫」「お姫様」と呼ぶし、私もつい「魔女」と呼んでしまう。
 『呼びやすい言い方でいいよ。変わらないもの、私達は。』
 そう言ってくれるけど、その内『貴方』って呼んだりするのかな。何だかくすぐったい気がする。
 「いい匂いだな。今日のおやつは、何だ?」
 「はいはい。勿論、用意しておりますよ。こちらにおいで。」

 変わらないヌねえ。ヒナイチ姫は。

 やっと、この時間が帰ってきたんだ。ロナルド王子達は、兄のヒヨシ王から領地を分けて貰って、サンズと慣れない領地経営に、次の希望者達の抽選や世話に、忙しいらしい。
 だから、彼らがいないのは少し寂しいけど落ち着いたら、またここでお茶会だって出来るはずだ。
 「おいしい、おいしい。」
 「ヌイヌ、ヌイヌ。」
 ジョンと並んで、魔女が並べてくれたクッキーを頬張る。元気になったドラルクが作ってくれたクッキーは、今日も、そして、永遠においしい。永遠に焼いてくれるって、契約したんだから。
 「それはよかった、晩御飯も期待してて?」
 「うん!」
 晩御飯か、今日は何だろうな。タカアシガニがウニを持ってきてくれていたっけウニは今が卵を持っていて旬そういえば、言い忘れる所だった。
 「なぁ、魔女。」
 「どうしたの?ヒナイチ姫。」
 骨ばった、赤いマニキュアで彩られた手を取って、頬ずりする。
 サンズには、「お前達には、デリカシーってもんが」と言われるが、仕方ないだろう?
 目の前にいるのは、お互い命を賭けても欲しいと願った相手で、そうすると契約した相手だ。
 頬ずりした後、その手に口づけをする。一本一本、私が大好きな指を、音を立てて口に含む。
 ドラルク達にも察しがついたのだろう。いつの間にか、隣でクッキーを頬張っていたジョンがいなくなっていたのだから。

 「魔女ドラルク。そろそろ、お前と交わした契約を果たしたい。体は、大丈夫か?」
 「そうだね。今朝、目覚めのお茶を持って行った時から、貴女はずっとソワソワしていたもの。」
 シュルリ、と紫の触手がこちらに伸びる。
 私もその足を握り返すと、いつもどおり、8本の足は優しく肩や腰に巻き付いて、ローブの中に招き入れてくれる。
 やっぱり、まだちゃんと回復してないな。
 元々ガリガリだけど、頬を胸に押し付けると、浮いたあばら骨の感触が痛々しかった。
 「でも、お姫様こそ大丈夫かね?私達、体の作りが違うから。」
 どちらも同じことを考えているんだな。でも、今日だって決めたんだ。
 いつ来てもいいように、この数日間、二人共飲み物に混ぜて、燕の子安貝を服用している。
 魔女の体が治ってからにするべきなんだろうけど、そうすると間に合わないもの。
 「私は、大丈夫だ。それじゃあ、始めるぞ。」

 私はこけた頬に両手を添えて、口づけようとしたが、その唇は魔女の人差し指に抑えられる。
 あれ?何かおかしい所があったかな?
 「ここではちょっとお部屋に行こう?本当は、私だってずっとこうしたかった事だからちゃんとしたムードも必要だよ?」
 そうかうっかりしていたな。魔女に手を取られて、寝室へ向かう。
 二人で並んで、大きなアコヤ貝のベッドに腰かけて
 「ふっ。」
 魔女の長い舌が入ってくる。とても優しくて、頭が痺れる様なこの感覚。
 その間も、8本の足は私を大事に撫でてくれる。
 私には腕が2本しかないけど、少しでもその感覚を返したくて普段は丸められている1本の足に触れる。
 そっと、解いて指の腹で撫でて
 「あ!?ちょ、ちょっ!!」
 あれ?どうしたんだろう?
 交接腕はこの足で合ってるし人間と違って、触っちゃ駄目だったのかな?
 そう思って、魔女を見上げる。驚いているみたいだけど、頬が紅潮して、うっとりして嫌そうには見えない。続けていいよなたぶん。
 「はむっんっく。」
 「ま、待って待って!!そこから、いい出汁とか出なっ!!あう!!」
 サンズに借りた本を真似て、口に含む。弾力のある感触を舌で楽しむ。
 これでいいのかは分からないけど、ロナルド王子は彼女にこうされると、喜ぶらしい。
 何より、魔女のその声を、もっと私が聞きたいんだ。あと、割と美味しい気がする。
 「あむっふっ。」
 「ひ、ヒナイチ姫!む、無理!!精莢が出ちゃう!!ごめん!離すよ!?」
 魔女の必死な声に、私も交接腕を口から離す。イカの精莢は口内で刺さるから危ないけど、タコも駄目だったのだろうか。
 「はぁはぁもう!また、あの本の真似をして!」
 「すまんもしかして。気持ちよくなかった?」
 上目遣いで見上げる。元々武芸一辺倒だった私は、こういう知識は皆無だった。
 もしかして、タコにとってタブーなのかな?
 「そんな訳ないでしょはぁ。本当に貴女って子は。そんなに興味あるの?」
 覗き込んでくれる顔は、とても優しかった。よかった、ダメじゃなかったらしい。
 だから、私は例の本をおずおずと差し出した。
 興味はあるぞ。サンズから色々聞いているしお前にしてやりたいなって、思ってるから。
 「サンズがな。この前、これをロナルド王子とやったって、言ってたんだ。私達も出来るのかな?」
 困った様に、笑いながらページを捲る魔女に、私はそのイラストを指さした。
 どんなイラストかって?どうと言われても、実は私にもよく分からない。
 「聞いてみたら、サンズが顔を真っ赤にして飛び回ってたんだ。どうかな?」
 「ん、ん〝ん〝り、陸と違って浮力が働くからなんとか。がんば頑張れば、たぶん。」
 難しそうな顔をしているな。
 病み上がりだし、無理しなくていいんだぞ?
 「い、いや大丈夫!何回、心臓が止まっても平気だし!私もその。」
 そこでお前は言いよどむ。首を傾げて、フードの中を覗き込む。照れたような顔で、魔女はこう言った。
 「こ、こんな体だからねお嫁さんも子供も諦めていた所があるのだよ。だからその。技術は期待しないで欲しい。で、でも!私も貴女に満足して欲しいし子供だってほ、欲しいもの。だから、心配しないで。」
 頑張ってみるからそういうお前が可愛くて、私は改めて、その薄い唇に口づけをした。



 こちらから追加した、二人の初夜シーンに飛べます → 旅立つ前に幕間(人魚姫ドラヒナの初夜シーン https://privatter.net/p/11748563
 18歳未満の方は、そのまま4Pから続きをお楽しみください。



 「よう。ドラルク、ヒナイチ。具合どうだ?」
 「出産祝いという程のものではないですが、手土産のイチゴです。ヒナイチの好物なの、知ってるですよ。」
 それから数週間経った頃、ようやく両国の行き来も落ち着いてきた頃いつの間にか4月に入っていたのだ。
 ロナルド王子達が遊びに来てくれたのは、すっかり春となってからの事となる。
 海と陸を繋げる計画の時は、しょっちゅう来てくれていたし、私達も陸に来ていたから、なんだか、懐かしい気がするものだ。

 私達もあれからうん。まあ、うまくいったとも。伊達に長生きはしてないからね。
 知識はあるから、ヒナイチ姫をちゃんとリード出来たともヒナイチ姫が激しく私を求めてくれるものだから、3回ぐらい死んでも悔いはなかっ
 いやものの例えだとも。ジョンまで、そんな目をしないでおくれ。
 「うん!もう大丈夫だぞ。なぁ、1個だけ摘まんでいいか?」
 「全部、食べそうですね。」
 ジト目のサンズが、イチゴを私にに渡してくる。この流れる様な、二人のやり取りは、見ていてとても気持ちがいいものだ。それは、ロナルド王子も同じらしい。
 「さすがっスね。俺もしそうだなぁ、と思ったもんな。」

 ヌフフ、さすが親友ヌね。分かってるヌよ。

 「う~、ロナルド王子だけじゃなく、ジョンまで酷いぞ。」
 揶揄われてむくれた、可愛い人魚姫の頭を撫でようとしていや、いつまでも子供扱いしてはいけないかな。
 だって、貴女は立派な一人前の魔女で、何よりそう思って、頬にキスをした。
 「クスクスそんな顔をしないで。早速、イチゴタルトにしようかね。残りは、イチゴジャムにしてもいいし。」
 もっと美味しくしてあげるからそう言うと、彼女は弱いのだ。
 「うー、魔女が言うなら。」
 「変わらないですね。ところで、ヒナイチ。卵は順調に育っていますか?」 
 「おかげさまでな!そろそろ、大丈夫だと思うんだが。なあ、聞いてくれ。魔女ったら、心配性でな
 女性二人が、クッキーとお茶を飲みながら、女子トークに花を咲かせているのを見ながら、私はイチゴを持ってキッチンに向かう。
 イチゴは、サンズ姫が言う様に彼女の大好物だ。さらに、命の恩人である友人夫妻も来ているのだ。
 腕の振るい甲斐があるというものだ。



 「なぁ。ドラルク。」
 いつの間にか、ついて来ていたロナルド王子が、声を潜めてついてくる。
 いや、まぁ。男同士だから、言いたい事は、分かっているよ。
 「先を越されるのは、悔しいけどよ。ヒナイチの事情があるもんな。おめでとうよ。」
 頬をポリポリと掻きながら、ロナルド王子がそう言ってくれる。
 本当に、あの時生き返ってよかったと思う。
 やるだけやったから、契約さえ完遂すれば悔いはないそう言ったけど、もっと素敵な事が待っていたのだから。
 「ありがとう。君達には、本当に感謝している。そういえば、さっきヒナイチ姫もサンズ姫に言ってたけどそうだね、少しだけなら。」

 そうヌね。きっと、この子達が孵化したら、ロナルド王子達の事を『おじ様』『おば様』って呼ぶのかもしれないヌから。

 そう言って、私は閉じていたローブの前を寛げる。
 君達にこそ、まず見て貰いたい。この未来を迎えられたのは、君達のおかげだから。
 「こりゃああれか。ほら、その。あー、あれだ。お前のじいさんは、竜だもんな。」
 懐から下げた袋を開けて、ロナルド王子の方に向ける。
 まだ、何も姿は見えないけれどもこんなに阿漕な生き方をしてきた私でも、そう思えるのだね。
 とてもとても愛おしい。
 「タツノオトシゴの育児嚢を真似て、作ってみたのだよ。見てやってくれるかね。あ、でも握りつぶしてはいけないよ?」
 「うるせえ、ゴリラ扱いすんな。どれどれ
 そう言って、彼は袋の中を覗き込む。真っ直ぐな視線がゆっくり袋の中を一巡した後、彼は晴れやかな笑顔でこう言ってくれた。
 「ありがとよ、見せてくれて。それにしても本当によく頑張ったな、ヒナイチ。」

 ロナルド王子もそう思うヌしょ?皆、とても可愛いヌ。ヌンも早く会いたいヌ。

 そう言って、ロナルド王子とジョンが覗き込んだ袋の中。
 その中で、私達の願いの結晶が5つの卵が光っていた。


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