@tirichann
かぶき町の一角で、名前が立ち話をしていた。その相手は女友達だが、かぶき町とは義理と人情の町、悪く言えば人の噂は何でも知れ渡る。
「今日血祭りでさー」
そんな何気ない一言も、数メートル先でバイトをしながら攘夷活動をしている浪士の元へ知れ渡ってしまう。
「いよいよ戦う気になったか名前殿! 俺も一緒に血祭りをするぞ!」
攘夷浪士――桂を銀時が蹴り飛ばした。桂が想像している「血祭り」は、幕府の役員の首をいくつもとることだろう。だがただの町民である名前がそんなことを望むはずがない。堅苦しい頭を持ち、日々テロ活動をしている桂には常識がないのだ。
「そういうことじゃねぇの。血祭りっていうのは女の子の日の暗喩なの」
銀時は名前や周りに聞こえないよう、小さな声で桂に囁く。桂の髪の毛を掴み頭を持ち上げている様子は、まるで恫喝しているかのようだ。
「名前殿は毎日女の子だぞ」
「女の子の中でも女の子の特徴が出るんだよ!」
「女の子の日」という言い方も桂には通じなかったらしい。路上である上に、名前のことを指すゆえに直接的な言い方は憚られる。
「む……確かに今日、名前殿の乳房がわずかに大きいような……」
桂が目を細めて名前を見るので、銀時は桂を殴った。どうしてこうも婉曲的な表現が通じないのだろう。俗的なことから離れすぎて疎くなってしまったのだろうか。それにしてはキャバクラのボーイのバイトなどをしているが。
「だから月経だよ! ゲッケイ!」
ついに銀時はそれを指す言葉を出した。桂もようやく理解したのか、目を丸くして銀時から離れる。
「なぁっ! 銀時! 恥を知れ! 名前殿、体が冷えていませんか」
少し前まで恥を晒していたのはどこの誰だ、と思いながら銀時は細目で見る。ちゃっかり名前に羽織を貸し、イチャついている。セクハラするところだったのを防いだのはよかったのか、悪かったのか。名前が本当に嫌がったら桂も身を引くだろうと信じ、銀時は去った。