・歌仙兼定
・薬研藤四郎/大和守安定
@fu_re_re_ra
歌仙兼定 身上調査書
《外見年齢》
・二十代から三十代の落ち着きある青年、という印象。やや年齢不詳の気があり、本気で化けようと思えば不惑(39歳)ぐらいまで化けられる。洋装を纏う場合はまた雰囲気が変わる。
《体感年齢》
・室町時代中期から後期に活躍した二代目和泉守兼定(通称之定)に打たれた刀であるが、三十六歌仙にちなんだその名はその後、室町時代後期から江戸時代初期まで活躍した細川忠興の逸話が中核だ。
・そのため、刀としての年齢(室町時代中期〜後期)と付喪神としての年令の自負(室町時代後期以降)に若干のズレがあり、それを二重に認識しているため、周囲の刀に対する年上/年下の認識は若干複雑。
・本人の意識としては前者、振る舞いの実年齢は後者、という感じ。つまり周囲から見ると作刀年齢に比して気性がやや若い。
・ざっくり同年代の刀に対しては年長者のように振る舞うことが多い。山姥切国広などがそれにあたる。
・一方、幕末の新撰組の逸話を中核に顕現した加州清光のことは年下と認識している。
・とはいえ、年上だろうと年下だろうと忌憚無く叱り飛ばす。こざっぱりした一喝は叱り方としてはだいぶ爽やかな部類で、かつ愛情深く、歌仙に叱られるならまあ仕方がない、と思わせるような温かみがある。この辺りが皆から広く信頼される一因であろう。
・特に鶴丸など、歌仙にとっ捕まって叱り飛ばされるのを好んで騒ぎを起こしている節まである。
《燭台切と九曜の縁》
・歌仙を鍛刀する際、この本丸では九曜と竹雀の縁を持つ燭台切が主へ語り、それを元に彼女が縁を手繰り寄せた経緯がある。
・つまり実はこの歌仙は「光忠から見てどれほど良い刀か」という情報を手がかりにして顕現している。自然と燭台切と相性の良い関係に落ち着いたのは必然の成り行きだったと言えるだろう。厨番長である光忠を支える良き番長補佐として、日夜励んでいる。
《好きな酒》
・味よりも形式を重んじる傾向にあり、コンビニや自販機で買う安酒はどうにも雅じゃない、安くてもいいからできれば酒蔵で買ったものにして欲しい、といった注文を付けることがある。要は気分の問題である。
・とはいえ、丁寧なお供えの形を取っていれば値段には目を瞑り、そこに込められた想いをきちんと受け止めようとするので、誠実で柔軟な付喪神だ。
・本来は高級ワインなどを食事との相性を考えながら丁寧にじっくり楽しむのも好きなのだが、主が持ち込むミサワイン(比較的安価なワインにあたる)は例外。
・彼女の祈りがたっぷり溶け込んだミサワインは如何な高級酒にも勝る甘露、と認識しており、自分用を1本貰っては燭台切のバーに大事にキープしている。彼女の不在時期に、誰にも邪魔されずにじっくり呑む、という形を取ることが多く、この歌仙にとって、主の祈りが溶けた美酒を味わう時間は、離れて過ごす大事な愛しい彼女との声なき対話だ。
・一方、いつもなら大事に少しずつ呑んでいるこのミサワインを、ひどく疲れたな、と感じる時には水のように一気に呑んでしまう。光忠はそれを把握しているので、キープボトルが急に減ったら「ああ、歌仙くん疲れてるな」と判断して厨仕事の時間を組み替えたり差し入れしたり愚痴を聞いたりしてバランスを取るようにしている。
・彼女は歌仙に食事を作ってもらうと毎回必ずお礼を言うのだが、歌仙は歌仙で毎月届けられるこのワインには毎回絶対に礼を言うようにしている。自然と生まれた優しい約束事だ。
《和泉守兼定について》
・よくできた子だ、と認識している。
・刀剣男士の中ではいっとう若いにも関わらず、古い刀に負けず劣らずよく励み、よく斬れて、よく隊を率い、陰に日向によく支え、内外問わず仲間の傷にさりげなく常に目端を配り、仲間にも主にも篤く慕われている。若くも頼りがいのある魅力的な人柄を兼ね備えた、一兵卒としても隊を率いる隊長としてもよく働く良き刀だ。
・自分に対しては、之定之定と素直に慕ってまわる愛嬌ある子で、兼定らしく華のある美しい刀。
・つまり歌仙から見て、和泉守は実はかなり可愛らしい身内であり、彼を表現する時に「あの子」と呼ぶあたりに親愛の情が透けている。
・あまり表立って主張しないだけでめちゃくちゃ身内贔屓なのだが、仮に指摘されたとしても「身内を贔屓して何が悪い」と堂々としているタイプである。
・なお、この本丸の和泉守兼定はそれなりに短気なのだが、歌仙からするとこの程度は短気のうちに入らないらしい。甘やかしである。
・この本丸では歌仙が語った和泉守を手がかりにして彼を引き寄せた経緯があり、つまり歌仙の思う「和泉守兼定という子の素晴らしい点」を話し集めた結果やってきた和泉守兼定なのだ。そりゃあ可愛くて仕方がないだろう。
・よって和泉守の方も実は歌仙を非常に慕っている。格好付けてあまり表立って主張して回らないだけだ。
・その副産物として、堀川から歌仙への信任もそれなりに篤い。
《歌仙の人見知りについて》
・歌仙兼定という刀は往々にして隠れ人見知りなことが多いが、この本丸の歌仙はそういった青い時代をもう既に乗り越えてこなれた、人見知りなく隔てなく周囲と関わり合えるタイプの歌仙兼定である。
・そもそも彼は、彼女や仲間たちによる「キリシタンの智慧を仲間へ提供して欲しい」という望みに対して、我こそはと手を挙げた歌仙兼定である。仲間に智慧を授けるべき場面で人見知りなどしていては話にならず、自然とコミュ強寄りの個体が名乗りをあげた結果が今なのだ。
《薬研藤四郎と大和守安定、治療を担う者達》

・図のように、出陣ゲートから帰った刀は
裏口→宝物庫→保管庫→作装部屋→鍛刀部屋→医務室→手入れ部屋→資材置場→土間(表口)までひと続きになった区画に入る。遠征組は逆から入る。
・特に重要なのは医務室→手入れ部屋の順だということ。医療班のトリアージを受け、重傷な者から効率的かつ迅速に手入れを受ける仕組み。
・この仕組みは、通常の本丸では見られない、医者である彼女のオリジナルだ。
<間取りの意図>
・「手入れ部屋の隣=医務室」は彼女の要望。当直室にあたる審神者用の寝泊まりできる部屋を作るよう指示したのも彼女。
・資材枯渇時は「勝手口から馬で直接資材を運び込む」→「そのまま手入れに使う」も可能。
・裏口が井戸の近くなのは、そこで資材を洗ったり、中に入る前に血を洗い清めたりするのに都合がいいように。
・「審神者専用療養部屋」は「審神者負傷→医務室で治療を受けながら同時に刀を手入れ」の事態を想定して設置。この部屋を審神者が病気などで使っている間は、医療班の薬研が常に張り付くことになる。
・「審神者専用療養部屋」は、面会謝絶にできるように、医務室側からしか入れない=薬研の許可が無いと入れない構造にしてある。
・外部からだと審神者が療養している位置が分かりにくく、セキュリティ上も有効な構造。刀剣男士が慌ただしく土間から出入りしているのが、負傷した刀剣男士のためなのか、審神者が負傷しているのか、はたまた資材や薬品や刀装や宝物の取り出しなのか、一見すると外からわからないようになっているのだ。
・「黄金の花弁に埋もれて眠れ」や「火車ゆらめく宵にて」で主が倒れた際に運び込まれた場所が、この「審神者専用療養部屋」である。審神者が倒れた場合は理由の有無を問わずとりあえず医務室へ運ぶ、というシンプルな動線になるようになっているのだ。
・加えて、乱が連れてきた町医者や、駆けつけた長義など、外部の人間を、迂闊に主人の寝室というトップセキュリティのプライベート空間に招き入れる事態を防ぐ作用もある。
・ちなみに、普段の寝室では「女性審神者の枕元は短刀or脇差」がルールなので、眠っている彼女の横に打刀や太刀(かつ薬研に許可された刀のみ)が付くことが許されるのはこの療養部屋だけ。
・特に鶴丸は、ありし日に彼女の寝室に忍び込んだことを内心で恥じているので、たとえ心配でも寝室の中までは押しかけない。だから逆に、何か懸念事項がある場合は、療養部屋を使うように強く勧めて側に付く。
<薬研と夜勤当番制>
・医務室に「薬研直通の電報装置」が置かれており、薬研は常にそれを携帯、押せばどこにいても薬研が飛んでくる仕組みになっている。
・基本、薬研は本丸に常駐。遠征は常時免除、畑仕事や馬当番なども概ね免除な代わりに、夜勤がある。薬研が軍医代わりに第一部隊に参加する場合もある。
・夜勤当番表で
①医務室預かり(薬研)
②預かり補助
③補欠
④警護刀
が指定されており、①〜③の内2名と④の3名が医務室に寝泊まりする決まり。
・昼間、打ち稽古や訓練、喧嘩などでごく軽症の刀が出た場合、すぐ手伝い札で治療せず、まず一度、薬研か②の指導に基づいて「③の刀がトリアージ+応急処置の練習をする」というルールを敷いている。これで日頃から、古参から新参まで満遍なくトリアージ経験と応急処置経験を積ませ、本番(第一部隊の重症帰還)でスムーズに動けるように練習させているのだ。
・③で何度も練習を積んだ刀だけが②を担当できる仕組み。②への昇格は薬研が審査、当番表は総務番長の長谷部が作っている。
・この本丸では、「夜中に鶴丸が抜け出して、突然重傷になって帰ってくる」ことがままあったため、常時医務室が稼働しているのは、その対策としても機能している。
・薬研が夜勤明けで寝てる間は、②と③の担当時間。昼間にごく軽症が出た場合、②が指導しながら③がトリアージ練習を行う。重傷者が出た場合は薬研を叩き起こす。
・第一部隊の帰還を待つ間は、薬研が仮眠しつつ夜勤、②と③が交代で休憩を取りながら、医務室のベッドに寝泊まりして待つ。
・第一部隊が帰城すると、薬研と②がトリアージ開始。人手が足りない時は③も参加。もっと人手が必要な時はコードブルー(重症者が多数出たため治療の人手を医務室に集める緊急全館放送)する。
・コードブルーの際は、現世にいる審神者も飛んでくる。この本丸ではほぼ無いことだが「本丸に残した治療用の霊力が枯渇して札が使えなくなり、重症者の治療が滞る」事態を防ぐためだ。また、今剣に内臓をぐちゃぐちゃにされた大倶利伽羅のように、手伝い札では対応できない負傷者や、呪詛など単なる負傷ではない場合などもコードブルーし、審神者や祓える御神刀を呼ぶ体制とすることで、主不在の本丸で折れる危険を最小限に抑える意図がある。
・「危険な任務に部隊を送り出し、帰還がいつか判らない場合」などは、いつでも素早く手入れが開始できるように、彼女も「審神者専用療養部屋」で夜通し待機して待つ。
・さらに「薬研達が治療専念中に襲撃」→「治療中の刀や治療できる薬研が折られる」→「泥沼に陥るor手入れ部屋を敵に占拠される」を防ぐために、治療に参加せず医務室の周辺警戒に徹する刀が必ず一振りいる仕組みを取っている。これが④である。この体制は彼女が考えたオリジナル。
・医務室周りの警護や人手を常に厚くする体制は、彼女の「絶対に刀を折らない決意」の表れであると同時に、「審神者専用療養部屋に審神者がいてもいなくても警護を常に厚くする」ことで籠城をカムフラージュする意図もあり無駄がない。
・このあたりの仕組みをほぼ考えたのは、(鶴丸や長谷部から助言はあったが)政府講習を一切受けていない彼女である、という点が、彼女の優秀さを証明している。普通の審神者は、手入れ部屋の横に医務室を設置して負傷中に自分が治療を受けながら手入れする想定までしないし、トリアージシステムを組んだり、医務室に常時当直体制を組んだり、そこに警護刀を常時配置する、なんて発想はなかなか出てこないものだ。彼女の医療者としての経験が遺憾無く発揮されている。
<医務室の物品管理>
・薬品(一ノ品)は薬研が管理、包帯や消毒液、手伝い札など(ニノ品)の在庫・品質管理は蔵番長の物吉貞宗が担当している。
・薬品庫の鍵は薬研が管理し、薬研不在時は②が預かるルール。薬品は使い方を間違えると毒であるため。
・③は、②の指導で薬品庫の中身の把握、使い方を覚えることも仕事。刀剣男士のトリアージに加えて、現世で警護中に主の応急処置ができるように、常備薬の使い方を覚えるのも大切だ。
・実際、実は彼女はどんな外出時にも、突然の襲撃に備えた応急処置セットを持ち歩いている。近侍は、主人が気絶した場合それが正確に扱えるようにしなければならないのだ。
・医務室の奥、薬品庫の手前には医学書が保管された本棚が設置されており、審神者が使ったお古の医学部の教科書やノート、医学書や医学論文、医学雑誌などが保管されていることに加え、薬研の希望でたびたび取り寄せた医学書、薬学書などもここに置いてある。後に実休光忠が顕現した際、ここの蔵書を非常に喜んだ。
・こうして、審神者の急病や怪我にもある程度対応できるよう練習し、薬研のお墨付きを得てからでなければ、現世の近侍は担当できない仕組みになっている。
・この本丸では心肺蘇生法の習得やAEDの使い方講習は義務である。見様見真似で迂闊にやると刀剣男士はその怪力で「心臓マッサージ時に肋骨をぶち折り肺を貫通させる」「肺に息を吹き込んで破裂させトドメを刺す」などの事故が往々にして発生するので、審神者が倒れたパニック状態で下手に蘇生をやらせると本当に危険なのだ。
・なので、新参刀はもちろんだが、元の主人が病で若くして亡くなっている大和守安定など、特に熱心に医務室に通って自分から治療や薬の使い方を勉強する刀もいる。
・後に、薬研の推薦で安定は、薬研不在時に医務室を全面的に任される「医務室預かり補佐」に任命されることとなった。
<安定の「医務室預かり補佐」就任経緯>
・本丸は「戦による外傷」に全面的に負傷者が偏っているので、見た目の重傷順に並べるトリアージは、練習を繰り返せばそこまで難しくない。
・だから、実は最も難しいトリアージは、「黒」を除外して「赤」を優先することだ。
・黒とは「今生存しているが、もう助からない者」のこと。トリアージとはそもそも、人手の少ない災害現場などで「もう助からない生存中の人間への処置を全て中断し、まだ助かる人間にリソースを集中することで生存率を上げる」ことを指す。薬研は主人からトリアージの最高責任者を任された時点で、黒を見捨てるその覚悟がある。
・そして実は安定は、薬研からかなり早い内から「医務室預かり補佐(番長補佐)」への推薦があった。しかし、安定にブラックを切り捨てる責任を負わせるのはまだ早い、と加州から進言があり、見送った経緯がある。
・安定はずっと、沖田総司という「まだ生存しているが死亡が避けられないブラック」を切り捨てる覚悟を持てないでいた。その彼に薬研と同じ役を負わせ、いたずらに負荷をかけるのはダメだ。そう加州と彼女は話し合って決めた。
・長い長い迷いの期間を経て、安定は、遂に覚悟を決め、今の主人と未来の人々のために「必要なら沖田総司を見捨てる覚悟」を決め、極めて帰ってきた。
・そのとき初めて彼女と加州は、ずっと安定を信じて待っていたことを明かし、今の安定になら、この本丸のトリアージの全権を任せられる、医務室預かり補佐の任を受けてくれないか、と持ちかけた。
・安定は、彼女がずっと自分に期待してくれていたこと、この本丸に降り立った日の直感「この主なら安定自身も知らない安定の振るい方を見つけてくれるかもしれない」が真実だったことに気付き、打ち震えて涙し、何度も何度も頷くことになる。
「僕、沖田くんみたいに、また大事な人を病で喪うのが嫌で、どうしても嫌で、少しでも何かしたくて、じっとしてられなくて」
「だけど、僕は刀だから。結局どっちか斬り捨てることでしか何も護れないって心のどこかで思ってた」
「でも、きみがくれたこの役目の中でなら──沖田くんを病で失ったから、もっと誰かを助けられる、そんな……沖田くんが生きた証を、僕らに残してくれた何かを、未来に広げていけるかもしれない」
「僕、やるよ。やらせてほしい」
・それ以来、安定は何度も練習と勉強を重ね、正式に「医務室預かり補佐」を拝命。
・薬研には医務室預かり赴任以来の完全な長期休暇が久々に与えられ、本丸を離れてしばし思いっきり羽を伸ばした後、長義の勧めで政府主催の軍医講習をあれこれ受け、各地の医療を学んで帰ってきた。
・「二度目の旅もなかなか面白かったぜ、さんきゅーな大将、大和守」と笑った薬研が、一段と頼もしくなったことは言うまでもない。
・ちなみに、軍医が同行する場合、戦場での生存率は最低でも10%、現代では最大で40%も上がるというデータがあるらしい。彼女、そして二代目の時代も、折れた刀を一振りも出さずに主人を護り切った裏には、医療にリソースを集中分配した彼女の差配が大きく寄与した。