@tirichann
好きな人ができた。彼女が人質にとられたらオレは判断を迷うだろうし、持っているものも捨てるかもしれない。有り体に言えば弱くなったわけだが、それでも悪い気はしない。オレは恋愛を楽しんでおり、恋愛に悩まされている。どうしたら彼女に近付けるのだろうかと。
ちょうど緑間と話す用があり、携帯電話越しにオレは尋ねた。
「どうしたら意中の人と仲良くなれるのかな」
緑間はあからさまに狼狽えた。「そんなことを聞く相手はオレでないだろう」などと言っているが、オレからしたら信頼しているからあえて緑間に聞いているのだ。そう直接伝えれば、緑間は少し考え込むようにした。緑間自身に恋愛経験はなくても、緑間の相棒は恋愛経験豊富だ。
「勉強を教えてもらうのが学生の定番なのだよ」
あくまで聞いた話だが、と前置きして緑間は言った。図書館デートも悪くない。オレは早速実行に移すことにした。
翌朝苗字を呼び止め、放課後勉強を教えてくれないかと誘う。オレの想定では苗字がここでにわかに喜んでくれるはずだった。
「赤司君のせいでいつも一位とれないのに嫌味!?」
返ってきたのは、真っ赤にそまった顔だった。どう考えても照れによるものではない。怒りだ。そういえば苗字は、いつもオレに次いで二位だった。
「すまない、本当は苗字と親しくなりたかっただけなんだ」
オレは悪意がなかったことを伝える。しかし苗字は周囲を見回して切羽詰まったように顔を寄せた。
「そういうことを平気で言わないで!」
結局、デートの誘いは失敗である。
「オレは嫌われているみたいだ」
後日緑間に報告したところ、「ノロケか?」と若干苛つかれた。ということは、オレ達は上手くいっているのだろう。オレが微笑むと、緑間は電話越しにため息をついた。まだまだ相談に乗ってもらうつもりなのだから、よろしく頼む。