@tirichann
鳴海弦は紆余屈折を経て遂に意中の女性と付き合った。本来幸せの絶頂にいるはずの鳴海だが、拗ねたように自室にひきこもっている。それもそうだろう。鳴海は常に誰かに借金をしており、鳴海の彼女は武器製造メーカーのご令嬢だった。彼女が鳴海の借金のことを知ったら、金目当てだと思うはずだ。彼女がそう思わなくても、周りの人にはそう見えるかもしれない。
「借金をやめればいいだろう」
鳴海の部屋を訪れた長谷川が至極真っ当なことを言った。鳴海がくるまっている毛布を引き剥がそうとするが、鳴海は意地でも毛布から離れない。
「彼女とのデートやプレゼントにお金がかかるの!」
そう言いつつも、鳴海が趣味のプラモデルなどでお金を使っているのは明らかである。彼女のことでお金がかかるというのは言い訳に過ぎず、ただ鳴海が怠惰なだけだろう。
「彼女がそれを求めているのか」
彼女が鳴海の経済事情をどこまで知っているのかは明らかではないが、鳴海に無理をさせるのはいい彼女とは言えまい。長谷川が言うと、鳴海は視線をそらした。まるで恋している顔を見られたくないと言うように。
「別に奢ってとか言われたことないけど彼氏なら彼女に喜んでほしいし? 笑顔見たくなるっていうか」
鳴海は彼女を本気で好きで、借金がある身でもお金をかけてしまうくらいなのだ。この本心が伝われば、誰も鳴海を金目当てなどと言う人はいなくなるだろう。
「それをみんなに伝えればいいのではないか」
長谷川が言うと、鳴海は物凄い勢いで長谷川を振り返った。
「こんな小っ恥ずかしいことを言えと!? 鬼か!」
結局鳴海は自身のプライドを優先し、金目当てだとそしられる方を選ぶのだろう。それでも付き合っていけるのなら、真実の愛かもしれない。