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BARの片隅で

全体公開 2010 21 3200文字
2025-10-17 01:12:08

2010 ウルトラマグナス 夢

「おい!今すぐ来いよ!スッゲェ面白いもん見せてやるからさ!」

そう言って、呼び出された場所は基地近くのBAR。
突然連絡をした主は、要件と場所だけを大声で伝えると、彼女の返事も待たずにそのまま一方的に通信を切った。

好奇心半分、連絡を寄越した主と一緒に居る恋人への心配半分。
複雑な思いを抱えながら、指定されたBARへ向かう。
重い扉を開け、店内を見回して探すより先に、名前を呼ばれた。
「おーい!!こっちこっち!!」
待ってましたと言わんばかりに、満面の笑みで手を振るロディマスに、小さく手を振り返す。

少人数掛けの小さいテーブル。
そして、そのテーブルを半分以上陣取って、文字通り突っ伏しているのは、紛れもなく恋人のウルトラマグナスだった。

「やっと来たか!ほら、これ見てみろよ!」
ロディマスの大声がBARの喧騒をかき分けて響く。
彼女は驚きのあまり苦笑しながら、テーブルに近づいた。
楽しくて仕方がない様子のロディマス と、テーブルに突っ伏したまま微動だにしないマグナス。
普段は規律正しく隙のない彼が、こんな状態になっているというのは、なんとも珍しい光景だった。

マグナス!……どうしちゃったの!?」
夢主はマグナスの隣の椅子を引きながら、ロディマスに視線を投げる。
「はは、面白いだろ?今日は珍しく早い時間から来てさ。さっきまで俺もマグナスも飲んでたんだよ。そんで、店員が新商品のカクテルオイルをサービスしてくれたんだけど、それを飲んだら急に『スパークが……しかし私は!』とかブツブツ言い出して、立ち上がったかと思ったら、急に倒れてこの有様だよ」

ロディマスは豪快に笑いながら、テーブルに突っ伏したマグナスの背中をばしばしと叩く。
「おーい、大事な大事な彼女が来てくれたぞ?」
マグナスはピクリとも動かない。いや、よく見ると、肩が微かに震えているような
「ロディマス 、もうちょっと優しくして
夢主は慌ててロディマスの手を止め、そっとマグナスの肩に触れる。
「ねぇマグナス? 大丈夫?」
すると、先程まで微動だにしなかったマグナスが、彼女の言葉に反応する様にゆっくりと顔を上げた。
普段の威厳ある表情はどこへやら、目の前の彼のオプティックは柔らかな光を灯す。
夢主ああ、来てくれたのか
その声は、いつもより少し低く、どこか甘えたような響きがあった。
夢主は一瞬ドキリとして、言葉に詰まる。
ロディマスはそんなマグナスに大笑いし、テーブルを叩いて騒ぐ。
BARの他の客がチラチラとこちらを見ているが、ロディマスはお構いなしだ。
「いつもはカッチカチの堅物なのに、酔っ払って彼女と話す時はこんなふうになっちまうのか!?
こんな隙だらけのマグナスなんてめったに見れないな。記念に記録でも撮っとくか?」
ロディマスが笑いながら、どこからか取り出したビデオカメラ越しに視線を合わせる。

「ロディマス! こんな状態のマグナスを撮るなんて、可哀想でしょ!」
彼女は慌ててビデオカメラを押さえつけ、ロディマスを睨む。
だが、内心では少しいや、かなり気になってしまう。
この無防備なマグナス、確かに普段は絶対に見られない姿だ。
……なぁ
そんなやり取りを気にも留めないマグナスが、再び口を開き、彼女の手をそっと握ってきた。
その手は、いつも戦場で力強く武器を握る手とは思えないほど優しかった。
マグナスの手は、彼女の手を握ったまま、わずかに震えているようだった。
BARの薄暗い照明が彼の顔を柔らかく照らし、普段の厳格な指揮官の面影はどこか遠くに消えていた。
彼女はこんなマグナスを見るのは初めてで、心臓が高鳴るのを抑えきれない。思わず、可愛いと口に出してしまいそうだった。
好きだ」
マグナスの声は、普段よりトーンこそ落としていたが、そのせいでいつもより引くくなった声は、騒がしい店内でも彼女の耳にはっきりと響いた。

彼女は一瞬、言葉の意味を処理しきれず、目を丸くして彼を見つめる。
「え? マグナス、?」
マグナスは少し俯き、まるで自分の言葉を反芻しているかのようにオプティックを閉じた後、また、ゆっくりと顔を上げた。
彼女を見つめるオプティックは、いつもよりずっと柔らかく、捕らわれたように視線を逸らせない。

「お前の瞳は星が輝いているようで私はその光に、いつも心を奪われる」
その言葉に息をのむ。マグナスがこんなロマンチックなせりふを言うなんて、想像もしていなかった。
普段は立場上、任務や規律、責任、ばかり口にする彼。
酔っているはいえ、こんな甘い言葉を恋人に、しかも外で言い出すなんて
顔が熱くなり、話題を逸らす様にマグナスの手をぎゅっと握り返す。
「マ、マグナス酔いすぎじゃない?」
だが、マグナスは首を振ると、彼女の手をさらに強く握り、身を乗り出してきた。
店内の薄暗い灯りを背にし、彼女にマグナスの影が掛かる。

お前の言う通り、俺は酔っているのかもしれん。だが、こうやってお前を近くに感じる時、私は初めて、自分のスパークに自由でいいと思える」
彼の声は低く、どこか切なげで、彼女の心を締め付ける。
「お前がそばにいると俺は、ただの自分でいられる。指揮官でも、戦士でもなくただ、お前を愛するトランスフォーマーとして

「おいおい!なんだよそのクサいセリフ! !おたくら二人とも!!二人の世界に入り過ぎ。マグナスも隅に置けないよなぁ」
突然、ロディマスの大声が二人の世界をぶち壊す。
彼は両手に飲み物のグラスを持ち、ニヤニヤしながらテーブルに戻ってきた。
「いやー、やっぱ彼女が居た方が面白いな!
ほら、こんな機会滅多に無いんだから!俺がちゃんと記録してやるからさ!」
ロディマスはそう言って、録画ビデオを構えようとするが、彼女は慌てて手を振る。
「ロディマス! もう!そんなんじゃないったら!」
マグナスはそんなやり取りを静かに見つめ、ふっと小さく笑う。
ロディマス。お前にもいつか分かるさ。誰かを心から愛する時、言葉は自然に溢れてくる」
その言葉に、ロディマスはオプティックを白黒させ、
「今のセリフ聞いたか!?これ、本当に録画してなくて良かったのか!?」
と言って、テーブルを叩いて笑った。
だが、彼女はもうマグナスの言葉にしか意識が向かない。
「マグナスそんな風に思っててくれたんだ」
彼女は小さく呟き、恥ずかしさと嬉しさで潤んだ瞳でマグナスを見つめる。
マグナスのオプティックは、まるで銀河のように深か青く、そして星のような光を宿しているように見えた。
私は指揮官であり、戦士だ。だが、今夜は少しだけ、お前を愛するだけの自分でいたい
マグナスはそう言うと、彼女の手をそっと自分の頬に当て、オプティックを閉じた。
その仕草は、まるで子どものように無防備で、彼女の胸は温かさと愛おしさでいっぱいになる。
「ワーオ……ごめん、俺、砂吐きそう
ロディマスはわざとらしく肩をすくめながら、飲み物をテーブルに置く。
だが、そのオプティックには仲間を見守る優しさがあった。
っよし、俺はちょっと別のテーブルで飲んでくるわ! 」
そう言って、ロディマスはグラスをひとつ手に持つと、ウィンクして離れていった。

彼女とマグナスは二人だけの世界にいるようだった。
夢主はマグナスの頬に当てた手をそっと動かし、彼の頬を優しく撫でる。
「マグナス私も、マグナスの事が大好きだよ
マグナスはオプティックをゆっくりと開いて微笑む。その笑顔は、いつもよりずっと無防備で、愛に満ちていた。
ありがとう、夢主」
二人の時間は、BARの喧騒を忘れるほどに、甘く、静かに流れていった。


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