兼さんが髪切ったぜ〜な短いほのぼの話
@fu_re_re_ra
「うお、バッサリいったなあ」
戦の最中で背後からの一太刀を紙一重でかわし、髪を思いっきり切り落とされた和泉守兼定は、すっかり軽くなってしまった襟足を、心許なさそうに触った。
「まあ、手入れで直るんだがな」
「ねえ兼さん。せっかくだから、帰るまでの時間で短く整え直そっか。あるじさんに見てもらおうよ」
「そうだな、主人の目を楽しませんのも役目の内ってな。カッコイイ俺のイメチェンでも楽しんでもらうとすっか」
第一部隊帰還、負傷者なし。
先に一報を入れたのち、堀川に整えられたショートヘアで和泉守が帰還すると、帰城を待っていた主は、ととと、と駆け寄ってぱあっと表情を明るくした。
「わぁ! 兼さん、ショートヘアもカッコイイね!!」
「だろぉ? ま、色男にはなんでも似合っちまうってこったな」
まーたオレのファンが増えちまうかな
和泉守はそう、手慣れた調子で笑った。
彼女があどけなく手を伸ばすので、兼定は心得たように屈んでやった。和泉守の髪を指先で遊ぶと、彼女はほっとしたように微笑んだ。
「怪我ないね」
「おうよ。ちょっくら色男がもーっと色男になって帰ってきただけだぜ」
「兼さん、短くすると髪柔らかかったんだね。ふわふわしてる」
ふふふ、と笑った彼女は、ひどく嬉しそうにこう口にした。
「ふふ、こうして見ると、兼さん、横顔がとっても歌仙に似てるね」
「之定に?」
「うん、ひと目で血が繋がってるように見えるくらい」
ぱちん、と瞬いた、大きく見開かれた和泉守のその瞳は、澄んだ空色。
歌仙と同じ色だ。
柔らかに遊ぶ猫っ毛、切れ長の眼、美しい陶磁の肌、三揃いの赤いピアスまで続く繊細なフェイスライン。
端麗な横顔は、柔らかくウェーブした髪に彩られると、驚くほどに、雅を愛するかの刀に面影が重なる。
「わたしね、兼さんだいすきだよ。でね、おんなじくらい歌仙もだいすき。兼さんもいっしょでしょ?」
まるで内緒話でもするように、こっそりと耳元に囁いた主に。
パチパチと丸くした目で瞬いた和泉守は、次いで、くすぐったそうに笑った。
さて、その後。
外見にこだわるはずの和泉守が、次の戦の負傷までウェーブした柔らかな短髪をそのままにさせていた事を見れば、答えは一目瞭然といった所だった。