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しっぽり紅葉狩り

全体公開 トワスト 3 2 2107文字
2025-10-18 19:10:00

第51回トワスト、テーマ「紅葉」参加作品です。制作時間約55分。ランフォードとジェフの話です。

 秋といえば、何を思い浮かべるだろうか。

 美味しい食べ物、うつりかわる景色、数々のアクティビティ――各々の楽しみで溢れている季節だと、ランフォードは考えている。ランフォードは人間ではなく、異種族『魔族』であるが、文化を愛でる心は人間も魔族も何ら変わらないと信じているのだ。

「ねえ、ジェフ。今年もようやっと暑さが過ぎたね」

――ああ。過ごしやすい季節になって、ほっとしたぞ」

 外から金木犀の良い香りが漂ってきている。ランフォードはジェフが淹れてくれた温かい緑茶をひと口含むと、息を吐いた。

「君、店はいいのかね? 私は君とまったりしていられるのは嬉しいけど」

「構わない。店ならちゃんと見張らせている」

 どうやらジェフは使い魔に店番をさせているようだ。――それならば、しばらく話し込んでいても大丈夫だろう。

「それなら少し私が時間を貰っても大丈夫だね。――ジェフ。今年は私と紅葉狩りにでも行かないかね?」

「紅葉狩り? ……別に構わないが、どこへ行くんだ?」

 山登りは勘弁してくれよ、とジェフが頬杖をついた。――ジェフはお世辞にも運動が得意ではない。目的が紅葉狩りであっても、運動を伴っていてはただの苦行であろう。

「君さえ大丈夫なら、旅行をしないかね? この前、いいところを見つけたのだよ」

「ほう? どんなところを見つけたんだ? 俺様の美意識に叶っているところだろうな?」

「君もきっと二つ返事で乗ってくれると思うよ。――これなんだけどね」

 ランフォードは持参したパンフレットをジェフの前に広げた。




 ――そして、約一か月後。

 ランフォードとジェフは、電車に揺られていた。

 ランフォードの案にジェフが賛成してくれたので、こうしてふたりで旅行をすることになった。こういう楽しみのために有給を消費するのは、何ともうきうきするものである。

――ほう。これはなかなか見事な景色だ」

 車窓から外を見たジェフが嘆息していた。外には川が流れ、そこに紅葉が舞っていた。秋の空に赤い紅葉、そして澄んだ川の青――まるで絵のようだ。

「これが本番じゃないよ、ジェフ。本番は、宿に着いてからだから」

「そうだったな、ラン。――次の駅だったな、降りるのは」

「そうだね。そろそろ、降りる準備をしようか」

 ランフォードは網棚から旅行鞄をおろす。ジェフは小型のキャリーバッグを手元に寄せた。




 迎えに来ていた車に乗って、宿に着いた。

 今回泊まるのは、温泉旅館であった。パンフレットの写真で見たものよりも、その旅館の佇まいには風情があった。

――なかなかのところだな、ラン」

「来てみて良かっただろう? さあ、行こうよジェフ。時間はあるようで少ないからね」

 ふたりは連れ立って旅館に入る。案内された部屋は、大人の男ふたりでもゆったりと過ごせる広さのものであった。

 ふたりは、女将の淹れてくれた茶と運んできてくれたお菓子で、しばらく電車旅の疲れを取った。

「このお菓子は美味しいね。この辺りの名産なのかな?」

「さあな。気になったなら、後で女将に尋ねてみれば良いだろう」

「それもそうだね。――さあ、早速紅葉狩りをしようよ、ジェフ」

「そうだな。行くか、ラン」

 立ち上がって外に向かおうとしたジェフを、ランフォードは制する。

――ラン?」

「紅葉狩りはここからするんだよ、ジェフ。さあ、支度をしようか」

 ランフォードは部屋に備え付けられている浴衣を手に取った。




――こういうことだったか……

「そうなんだよ。――しっぽりと温泉につかりながらの紅葉狩りというのも、乙なものだろう?」

 この風光明媚な旅館は、部屋ごとに温泉がついている。それを知ったランフォードは、温泉に入りながら紅葉狩りをしようと思いついたのであった。

 温泉からは、行きの電車から見た川が流れているのが見える。そして、はらはらと散りゆく紅葉の葉も――

 晩秋の空気はひんやりとしているが、温泉に入っていればそれも気にならない。――まさに最高の環境であった。

「ねえ、ジェフ。君はますます綺麗になっていないかね?」

「何だ、藪から棒に」

「私は自分の思ったことを口にしただけだよ」

 この温泉の湯は、何を売りにしていたか――美肌だったか、それとも健康関係だったか。それは忘れてしまったが、温泉につかって寛いでいるジェフの姿は、ランフォードの目にはとても麗しく映ったのである。グラビア写真にしても恐らく良いものになると思ったが、それを言ったらジェフに怒られそうなので、これは心のなかに留めることにした。

「夜になったら、湯に入りながら月と紅葉を見られるということか――

「そうなるね。ご飯を食べたらもう一度温泉に入ろうよ。何度入ってもいいのだからね」

「そうだな。――それも、悪くないな……

 上気した頬に、秋の空気が気持ち良い。

 ランフォードとジェフは、しばらく温泉でゆったりとして、紅葉狩りを楽しんだのである。


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@Marumeroke
二人のまったり温泉旅館旅…見ているだけで私の疲れも癒される気がしました…
いいですよね、景色のいい場所で二人きりのゆったりした時間が流れるというのは…
部屋にお風呂がついていてそこから紅葉が鑑賞できるとは、まさしく癒しスポットで最高すぎます〜!無理に運動しなくても紅葉狩りが楽しめるし秋の行楽にぴったり…
そして美肌の湯を浴びたジェフさんがますます美に磨きが掛かってる所は容易に想像できる…ランさんの感想には激しく同意した私でした()
2025-10-18 20:06:54
@xxxyueyunxxx
≫Marumeroke ご感想ありがとうございます!
たまにはまったり温泉旅館旅もいいよな~という気持ちが作品になってしまいましたw
景色のいいところで、親しい相手とふたりきりのゆったりとした時間……至福だと思います。
完全に願望を描いてしまいましたが、部屋にお風呂があってそこから紅葉見られるとか、絶対癒しスポットですよね~!
なんとなく入浴中って色気倍増するイメージなので、美肌高価のあるお湯なんかに入ったら絶対美しさには磨きがかかっていたかと。せっかくだからランフォードに、ジェフに怒られてもいいから写真を撮って欲しいところですw
2025-10-19 01:05:26

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