@tirichann
清峰くんと私は付き合っている。清峰くんがあまりにもモテ、あまりにも告白の振り方が下手すぎるという理由からだ。ちょうどいい具合に清峰くんを知っている――つまり友達であった私は、清峰くんの建前上の彼女役に抜擢された。清峰くんは私のおかげで告白してきた人の反感を買うことなく、お付き合いを回避することができた。
当然ながら弊害はある。噂は確実に広まっていたし、清峰くんに告白せずとも好意を寄せる女子達から探りを入れられることもあった。
「いつから付き合ってたの?」
「いつ好きになったの?」
私はひやひやしながら答える。一つ目の質問には清峰くんと決めた時期を。二つ目の質問は少し考えた。
「落とし物を拾って届けてくれた時」
別に嘘をついてもよかったのだが、自然と思い当たったのはそれだった。本当に好きなようで恥ずかしくなる反面、リアリティがあったのか女子達は引き下がってくれた。一応こういうことがあったと清峰くんに報告すると、清峰くんは目尻を緩め、顔に穏やかな笑みを浮かべた。なんとなく喜んでいるように見えてしまって、私は言い訳のように口を開く。
「好きって言ってるわけじゃないからね?」
上辺での付き合いを勘違いしているわけではない。私はわきまえているのだと主張するように言うと、清峰くんは視線を下げて手元をいじった。
「それはわかってる。でも苗字の中で一番格好いい俺はその俺なんだな。知れてよかった」
そう言った清峰くんはまるで私のことが好きだと言っているようで、というかそうにしか聞こえなくて、私の頭はぐらぐらに揺れた。別に清峰くんが私のことを好きだろうがそうでなかろうが、私が清峰くんを好きだろうが嫌いだろうが、今の嘘の付き合いは続くのだ。でも、心の持ちようというものがある。私は少しだけ、清峰くんとの付き合いに感情を持ち込めるかもしれない。