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キリシタンすり抜け主と鶴丸国永〜愛も哀しみも物語故〜

2025-11-01 11:11:43

主ちゃんと鶴丸国永の二人きりのおはなし。
この主ちゃんと鶴丸国永(近侍)は師弟関係にあるので、こういうふうに余人を挟まず二人きりでお話しする機会が多いです。

あのね、鶴るん

なんだい

考えても考えても、どうしてもわからないことがあるの。おはなし、聞いてくれる?

もちろん。なんだい?

ありがとう。あのね

んと、たとえば、ね。
目の前に、手術しないと死んじゃう人がいるとするでしょ
でね、その人が、たとえばもしもわたしの恋人だったら。
普通はね、わたしじゃない人が手術するものなんだ。どうしても手元が狂うから。

代わりに執刀できる医者が他にいるなら、それが普通なんだ。
でもね、刀剣男士は、時にそれじゃあだめな時があるんだって、かしゅーが教えてくれたの。

時には、大好きな昔のあるじさんを自分の手で斬らなきゃいけない任務だってあるって
そんなの、すごく、すごく、辛いはずなのに
刀剣男士は、そうじゃなきゃだめなんだって
他の刀剣男士が代わりに斬るんじゃ、だめなこともあるって

でもそれは、ただ命令されるからじゃ、ないんだって
それが、刀剣男士、ってものなんだって

かしゅーがそう教えてくれてから
どうして?って、ずっと考えてるの
けど、どうしてもわからなくて

ああ、なるほどなぁ

ねえ、鶴るん。鶴るんもそう思う?
かしゅーが言ってたみたいに

うん、そうだなあ
加州の言ってることは、よぉくわかるぜ。
こうして刀剣男士として長く戦ってるとな、時には避けて通れない道だ

どうしてなんだろう
避けちゃだめなのかな、仲間が代わりにやるんじゃ、支え合うんじゃだめなのかな
わたしも一緒に一生懸命考えて、他のやり方を探すんじゃだめなのかな

そうだな、きみらしいそれも、一つの方法かもしれないが……
それでは、だめなこともあるだろうな

どうして……

そんな泣きそうな顔をせんでくれ、きみ
そうだなあ、オレが思う理由でいいかい?

うん、聞いていいことなら

なんだって話して構わないさ
きみが聞きたいなら、な

そうだな、理由はいくつかあるが……
ひとつはな、哀しみも物語だ、ということさ。

哀しみも、物語……

ああ。オレたち刀剣男士は、刀の付喪神であるのと同時に、時にそれ以上に物語の付喪神だ。
物語はオレたちを強くする。どこかの誰かに都合よく与えられたお仕着せではなく、主人と共に自らの手で切り拓いた物語だけがオレたちを強くするんだ。
古今東西、悲劇は強い物語だと相場が決まっている。強くなるために、時にオレたちは心臓を引き絞られるような哀しみを必要とするんだ。

哀しみがないと強く、なれない
じゃあ、鶴るんたちは、こんなに人を助けてくれてるのに、たくさん哀しい思いをし続けなきゃいけないの

確かに、そういう見方をすれば救いようのない話かもしれないが
少なくともオレはそうは思ってないぜ
だってなあ、オレたちはそれを自ら選んだんだ。もっと哀しいことが起きないために。

もっと哀しいこと

そう。付喪神の死は折れることに在らず。只々、誰からも忘れさられること也、だ。

神に助けを求めた人の子の話に、耳を傾けたオレたちは気付いたのさ。
この戦、全力で抗わなければ、この国に生きた人の子が全て死に絶え、存在した証すら奪われる。
自分たちが愛したものが、生きた証と共に全て消え失せる瞬間はそう遠くない、とな。

オレたちがこうして人の姿を得たのは、人の子が様々な形でオレたちを愛したから。
たとえどんな歪んだ形であっても、愛されちまったら愛し返さないでいる方が難しい。

愛したものも、愛された日々も、その証の全てが存在しなかったことになる。自分の存在意義ごと。
そんな耐え難い苦痛に代わるなら、どんな塩辛い悲劇だって笑って呑み下してみせるさ

強くなけりゃ護れない
歴史も、この国も、きみもだ
護りたいもののために、オレたちは強くならなきゃならないから

……鶴るんたちは
この国に生きた人々を、これから生まれてくる誰かを
愛しているから、なんだってできる
そういうこと……

少なくともオレは、な。

けどな、そんな終わりの見えない日々も
決して悪いばかりじゃないだろう?

ほら、だって、そんな宿命を選んだ先で
こうしてきみに出会えたんだから


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