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そんな彼のある一面

全体公開 トワスト 1 1391文字
2025-11-22 19:07:41

第55回トワスト、テーマ「優等生の秘密」制作作品です。制作時間約45分。ランフォードの補佐を務めるヴァレールがメインのお話です。

 真面目で、実直で、何事も努力を怠らない。

 ――そのせいだろうか。

『優等生』というレッテルが、気付けばヴァレールには貼られていた。ヴァレールは、優等生タイプの魔族なのだと。

 そのことは別段気にならなかったし、負担にも思わなかった。所詮外野の言うことだと。

 叶った願い――彼の所属する部族、ビナーの長であるランフォードの補佐という役目をこなしていくことの方が、ヴァレールにとっては重要であった。



 そんな、一本気なヴァレールだ。

 彼の日常と言うと、基本は仕事である。ランフォードのために働き、尽くす。それで大体一日が終わる。そんな生活ばかりしているから、余計に優等生と呼ばれるのには、ヴァレールは気付いていない。

「ねえ、ヴァレール。たまには休みが欲しくないかね? 私のために働いてばかりでは、疲れるだろう。もっと楽しみに時間を費やしてもいいのだよ」

「何を仰いますか、ランフォード様。この役目は、俺にとっては誉れです。これ以上の休みは不要です。――それに、俺は俺なりに、楽しんでいることもありますから」

 ヴァレールは書類を読んでいるランフォードに微笑む。珍しく眼鏡を外していたので、その素顔のまま。

「そうなのかね? 君にはいつも私が負担ばかりかけているからね。いくらでも、要望があったら我慢せずに言うのだよ」

「ありがとうございます、ランフォード様。――本当に俺は、何一つ我慢しておりませんから」

 ランフォードが決済した書面をまとめてから、ヴァレールは眼鏡をかけ直すのであった。



 その日の仕事を終えると、ヴァレールは家へと帰った。ちなみにヴァレールは、単身者である。ランフォードのように良い巡り合わせがあれば結婚も良いと考えているのだが、それがまだ無いのだ。

「今日は、少し気晴らしをしようか――

 ヴァレールは上着を脱ぐと、ブラシをかけてから丁寧にクローゼットに吊るす。それから、寛いだ様子でテーブルの上に置かれた箱に手を伸ばした。

『解錠』の魔法を唱えると、繊細な装飾の箱をそっと開ける。箱の中から出てきたのは、地球各地の品々――

 お土産もののキーホルダーに、年代物のカトラリー。ヴァレールはそれらをひとつひとつ並べると、満足げに目を細めた。

 ヴァレールも、たまに魔界と並行して存在する世界――あちらの生命体は地球と呼んでいる世界を訪う。大概はランフォードに用事があって赴くが、ときには旅行のようにして。

 そのたまの滞在のときに、気に入った品をひとつ土産にするのがヴァレールの趣味であり、秘密の楽しみであった。最近一番のお気に入りは各地のキーホルダーで、いくつも欲しくなるところを堪えてひとつに絞るのが、また良いのだ。

 そしてその宝物を、大切にしている箱――かつてランフォードから賜った箱におさめていく。少しずつ中身が増えていくのをこうして時々確認しては、ヴァレールはひとりわくわくしていたのであった。普段は決して見せない、まるで子どものような顔をして。

 ――そろそろ、またキーホルダーを見に行きたいな……

 ランフォードも休みが要らないかと言ってくれていたことだ。たまには自分から、休みを貰おうか。

 箱に『施錠』の魔法をかけながら、次はどこに行こうかとヴァレールは考えを巡らせたのである。


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