@tirichann
「一緒に帰ろう」
何度も持ち掛けているこの頼みを、まさか了承される日が来るとは思わなかった。
「わかった」
そう言って片付けを始める佐久早の背を私は追う。佐久早は何事もなかったかのようにしているが、私にとっては大問題だ。今まで一緒に帰ろう、学食を食べよう、その他移動教室に一緒に行く誘いなどをしても佐久早はまったく頷かなかった。すべて「嫌だ」で一蹴だ。
「何で!? 何かあった!?」
私が知らない間に佐久早が心変わりするような何かがあったのだろうか。今日の私の言い方は普段と変わらなかったはずだ。制服の着こなしやメイクも変わらない。それとも、私の長い間続けていたアタックが積み重なって遂に佐久早の心を動かしたのだろうか。
大騒ぎしている私を佐久早は鬱陶しそうな目で見る。
「お前がこの時間まで残ってるからだろうが」
私は口を閉じた。佐久早の所属するバレー部は、もうすぐ大会があるらしい。それで佐久早が遅くまで残っているので、私も今日は佐久早の帰りを待つことにしたのだ。普段と違うことと言えば、それくらいしかなかった。佐久早は真っ暗なこの時間に私を一人で帰すまいと思っているのだ。
「心配してくれるんだ」
私が言うと、佐久早は「女だとは思ってる」とボールをバウンドさせながら言った。それが危険に瀕する時だけなのか、恋愛の意味でも異性として見てくれているのかはわからない。ただ、自分の帰りが遅くなってでも佐久早と一緒に帰りたい気持ちの少しでも届いていればいいなと思った。