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二宮に告白する

全体公開 WT 3 939文字
2025-11-28 12:31:34
Posted by @tirichann

 太刀川さんに勝つ。ボーダー隊員であれば、それがどれくらい難しいことかわかると思う。だから私は、告白する条件を「太刀川さんに勝ったら」にした。伝えたいようで言うには恥ずかしい思いだったし、それくらいの願掛けがなければ私は恋愛もボーダーの活動も両立できない気がしたのだ。
 私はアタッカーとしてランカーに弟子入りし、何度も練習した。途中弱音を吐きそうになったけれど太刀川さんに勝たなければ告白ができないのだから、と思い直して立ち上がった。私の目標を伝えたところ師匠は無理だ、と言い放ち、太刀川さんに「勝つ」ことから「一勝する」ことに変えた。大した違いはないように思えるのだが、個人ランク戦で複数回勝ち越すのと一回でも勝つのでは難易度が違う。私は恐らく意中の人に告白するより緊張した気持ちで太刀川さんに個人ランク戦を申し込み、二十回戦って一勝した。太刀川さんが疲れていたか、気を抜いたか、私に同情したかのいずれかだと思う。とにかく一勝は一勝なので、私は好きな人に告白することにした。その答えがこれである。
「あいつがきっかけで付き合うのが気に食わない」
 目の前の二宮さんは、腕組みして眉間に皺を寄せていた。私の好きな人とは二宮さんなのだ。冷静さ、強さ、容姿、どれをとっても格好いい。予想していなかったのは、二宮さんが太刀川さんをライバル視しているらしいことだった。太刀川さんに勝てたら告白しようと決めていたことまで話してしまったのは余計だったのだろう。二宮さんは、とてもではないがこれから交際を始める人の表情ではない。
「付き合えないなら、今まで通りボーダーの先輩後輩として」
 私が引き下がろうとした時、「待て」と声がした。普段から少しもぶれない、二宮さんの圧の強い声だった。
「誰が付き合わないと言った。お前とは付き合う。ただその経緯が気に食わないだけだ」
 私は信じられない思いで二宮さんを見た。二宮さんは、相変わらず仏頂面でラウンジの方を睨んでいる。多分太刀川さんがそこにいるのだろう。
「やったぁ!」
 私が一人喜んでいると、「だから何であいつに勝てたらなんだ」と二宮さんが渋い顔をした。そんなことはどうでもいいから嬉しい、と言ったら二宮さんに怒られてしまうだろうか。


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