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身上調査書④二代目

2025-11-30 18:52:32

身上調査書《二代目》

・本丸来訪当時8歳になったばかり。亡くなった時は90歳越え。幸福な時間のほとんどを本丸で過ごした。

《本丸に来る前》
・能力者のデカくて古い家系の分家の養子と家政婦の間に生まれた妾の子で、つまり本家との血の繋がりは無く、分家の中でもかなり地位の低かった父親が既に他界しており、シングルマザーだった母親以外の親類は無く、妊娠を伏せていたため本家に捨て置かれていた母親が一人で出産した子供である。そんな実態としてはほぼ庶民の子であるが、そんな彼に本家の嫡男を遥かに超える異能が発現したのは運命の皮肉か。
・妊婦だった母親が生活苦が祟って切迫早産状態に陥り、晩年の初代に助けられ、幸いにして命を救われることとなる。
・二歳の時に母親が病死し、施設に引き取られるも、まもなく能力が判明。政府と関係が深い本家に把握され、本家に引き取られることとなるが、あまりにも能力が高いため、最終的にはほぼ都合の良い道具として扱われてしまう。良い着物、良い食事を与えられ、世話人を何人もつけられていたが自由は一切なく、孤独だった。
・世話人の手を握ってその世話人の急死を予見してしまったため、世話人は皆死の予言を恐れて触れなくなった。抱きしめてくれる存在どころか、手を繋いでくれる存在すらもいない、そんな状態で五年もの間ほぼ軟禁状態だった。
・やがて、ただの先見ではなく、少なくとも政府が把握する先見の異能者の中でも最上級の先見であることが判明し、使い方によっては国の覇者にも国を滅亡させる魔王にすらなれる能力として、まもなく本家が『これ』を巡って内部分裂。その結果、情報が外部に流出し、歴史修正主義者側に情報が渡ってしまう。
・さらに悪いことに、彼はこの先の未来で戦争を停戦に向けて大きく進めることになる歴史上の分岐点の重要人物であり、現在の歴史修正主義者だけでなく、未来からの暗殺者も送り込まれてくる事態へと発展する。政府へと保護先が変更されるも、暗殺が止まることはなく、とっくに殺されていてもおかしくなかったが、あまりにも先見の精度が良すぎるせいで、自分の死ぬ未来をわけもわからず回避し続ける結果に。
・その傍ら、『神の子』として神輿に担がれ、主に政府の要人の先見をさせられる毎日だった。

《本丸に来てから》
・数年後、天寿を全うした彼女を追いかける形でこの本丸に赴任。彼の先見では、この本丸以外では元服前に死ぬ確率がほぼ100%であり、鶴丸封印の件で瑕疵本丸扱いだったこの要人警護本丸にあらゆる手続きを飛ばして白羽の矢が立つ。これは彼を憐れんで手助けしてくれた人もいたということであり、そういうか細い善意と偶然を先見で必死に渡り歩きながらここまでたどり着いた。
・着任当時は必死に小さくなって存在感を消し顔色を窺う仕草が目立ったが、加州清光、そして大和守安定を始めとしたこの本丸の愛ある刀たちのおかげで、たくさん抱きしめられ、たくさん愛情を注がれ、幸せを感じながら育つことになる。
・まもなく、普段の形態は厳密には実態でないふわふわは、抱きしめても過去も未来も見えない(先見発動の条件を満たさない)ことが判明し、まだ人見知りから脱出できていない頃の彼は大いに慰められることとなる。四六時中ふわふわと一緒に遊ぶことで笑顔が増えていった。
・また必然的に火車切が面倒を見ることとなり、「だいすきな火車切おにいちゃん」は清光や安定に並ぶほど懐かれる結果となる。

《二代目と大倶利伽羅》

大倶利伽羅に憧れまくる火車切の影響で、一緒に背中にきらきらした視線を向ける二代目。

知らぬ内、いつの間にか倍になってる熱視線に、大倶利伽羅が頭痛をこらえ眉間を押さえていると、ふと風が髪をくすぐった。
耳元で笑った夏風が囁く。
『ははっ、大人気だなあ、伽羅坊』

大倶利伽羅はふと、目を見開いた。
もちろん振り返っても誰も居ない。

錯覚する。音もなく軽やかに距離を詰め、馴れ馴れしく肩に手を置き、からかうようなあの声を。
『ほら見ろよ伽羅坊』
そこには、通り過ぎた夏風があるだけ。

大倶利伽羅は少しだけ目を細めると
名残火を振り払うように首を左右に振って
その場を後にした。

◇ ◇ ◇

・やがて、火車切が折れる未来を先見して回避する過程で、折れた火車切の残骸を食うふわふわ(破壊ボイス参照)を目撃。燃え盛る恐ろしい猫又への変化へんげと『一歩間違えれば一番仲良しの火車切お兄ちゃんも喰う』という事実に衝撃を受け、しばらく怖がって距離を取っていたが、火車切の懸命な仲介あってやがて仲直りできた。
・実際の所、実はふわふわは火車切(とよく似た匂いのする大倶利伽羅)を除き、よほどよく餌をくれて遊んでくれて尚且つとびきり気に入った相手でなければ本気で助けてはくれないのだが、この二代目のことは全身全霊で助けてくれた。
・ふわふわは二代目のことをいつの頃からか、どうにも、自分のところの子猫(養育対象)だと思っていた節がある。故に、二代目を害した人間は、軒並み見事に祟ってくれた。これは初代の頃には無かったことである。
・実は彼の先見の能力は神託の類いや剣の特殊能力に近く、太郎太刀、次郎太刀、石切丸といった御神刀、そして丙子椒林剣などの剣と幸いにして相性がよかった。彼らがいる場では幸いにして異能のコントロールが比較的良い状態を保てることが後に判明。彼らと共に過ごす時間が必然的に増え、やがて彼らの言葉遣いを真似る形で、自然と日常的にゆったりとした敬語を使う穏やかな青年へと成長していく。

《政府と先見》
・ただでさえバカスカ暗殺者が送り込まれてくるってのに、先見をさせるために政府からしょっちゅう呼び出しを食らう。その度に遡行軍に襲われたり刺客に襲われたりするので、本丸の刀たちは毎回憤慨していた。
・国と戦の未来を真剣に占わせるものから、札束はたいた政府の高官の未来を占わせるものまで様々。人命に関わるものから立身出世、浮気相手の特定まで。だが、少なくとも、こんな小さな子供が命を賭けて役目を果たさなければならないようなものではない、と本丸の刀たちは常々思ってくれていた。
・逃れようがないなら逆に利用してやれと、歌仙などを中心に鼓舞してくれた甲斐あって、この先見の能力によって築かれた太いパイプは、二代目が生き残るのに役に立った。

《晩年とふわふわ》
・彼の異能は歳をとるごとに洗練されていき、その結果として晩年には、髪の毛一本爪一枚、骨の一本でも遺せば後の世の禍根となりうるレベルだったため、晩年の終わり、自分をずうっと護ってくれた大好きで大好きな黒焔の猫又へ、自分の遺体は食べていいよと言い置いて、幸せに息を引き取った。
・他の本丸の皆も、表立って首を縦に振ることこそなかったが、ふわふわと二代目のその死後の契約を黙認し、火葬前の寝ずの晩の輪番に無言で火車切を組み込み、独りにさせ、翌朝には遺体もふわふわも消えていた。
・火車切はしばらくの間、まるでふわふわの感情が雪崩れ込んだかのようにぼろぼろ泣き続けて塞ぎ込んだ。
・ふわふわはそれきり姿を消したまま長らく戻ってこなかったが、四十九日からちょうど一年後に何事も無かったかのようにいつの間にか火車切のもとへ戻ってきていた。


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