リクエストありがとうございました!
「ない!+ONEの世界軸でもしおぷさんめがさんがオラDに会ったら……な話」になります!
大変お待たせ致しました…
@fao_scherzo
以前に出した「たぶん素材は綿100% 」のIFになります。
わない!とONEの本はこちらから
https://alice-books.com/item/show/11743-2
アリスブックスさんでの取り扱いが残り僅かなためBOOTHでも一部出してます
https://fao-shop.booth.pm/items/7388068
※露骨なステマ
たぶん素材は綿100%
~番外:もしもの話~
「…………なんだこれ」
D-16がいつもの様に労働に従事していれば、岩壁から何かが生えているのを見つけた。いや、埋まっているのだろうか……?
灰色の丸いその物体は、二本の触覚のような物を懸命にばたつかせている。どうやら生きているらしいのだが。
恐る恐る指先でつついてみればそれは柔らかくも弾力があり、ぽよん、と音を立てて揺れた。かと思えばビチビチと激しく動き出したものだから驚いて後ずさる。
「──っ!! ────!!!」
岩の中から聞こえるくぐもった声に、それが助けを求めているのだと察して慌てて掴んで引っこ抜いてみた。すぽんっと音を立てて引き抜かれたそれは両手に収まる程のサイズで、触覚だと思っていたのは足だったらしい。ひっくり返せば先ほどまで埋まっていたのに何故か微笑を浮かべていた。
「ふぅ……まったくとんだ目に遭ったものだわい」
「うわあ!?」
いきなり喋り出したそれを思わず岩壁に叩きつけるようにぶん投げた。
■
「ディー! そっちどうだ?」
「ああ、こっちは……まあ、問題ない……って、お前、なんだそれ」
少し離れた場所で採掘していたオライオンが戻ってきて、ノルマ分の採掘が終わったと言おうとした途端、オライオンの手に何かが持たれているのに気が付いた。青くてまん丸なそれにどうにも既視感を感じて、肩に乗せていたそれを持ち上げて並べてみると、色や細かい形は違うがよく似ていた。
「ん、ああ。さっき向こうで見つけてさ。おぷさんだって。……あれ、ディーのそれは?」
「俺も岩に嵌ってるの見つけたんだよ。めがさんだ」
互いに手に持ったそれを近づければ、彼らはお互いに気が付いたのか駆け寄って手を繋いで跳ねだした。
「無事だったか、めがさん!」
「おぷさんも来ていたのか!」
ぽよぽよと跳ねる二匹に落とさないように慌てて引き剥がして体を掴むと不満そうな目で見上げられた。
「危ないだろうが! 落すぞ!?」
「落とさないようにせんか、愚か者めが」
「なんだお前、生意気だな」
小さい体で何を偉そうに、とD-16がめがさんを握る手に力を込めてみるものの、むっちりとしたボディに指先が柔らかく沈み込むだけであまり痛みは感じないらしい。一体どういう生命体なのだろうか。
無駄に感触が良くて捏ねてみたらわたわたと暴れだした。
「そう怒るなよ、ディー。可哀想だろ。ほら、可愛いじゃんか、こいつら」
「……可愛いか?」
オライオンも手に乗せたおぷさんを差し出して来るが、めがさんとおぷさんを凝視してみるものの可愛さというものが見いだせない。敢えて言うなら、食べたらもっちりしていて美味しそうだな、というところだろうか。
「それより、ほら。そろそろ片付けないと」
「ん、ああ。今日配給日か」
「そーだよ。早くしないと喰いっぱぐれちまう!」
D-16のドリルも担ぎ上げて、走り出すオライオンの後を追う。最近はまた配給されるエネルゴンの質が落ちてきているように思うのだが、今回はどうだろう。
「そう言えば、お前は何食べてるんだ?」
「エネルゴンに決まっておるだろう」
「……一応聞くけど、調達できそうか?」
「…………ワシを誰だと思っておる!」
「アテは無いんだな……」
質が落ちている上に量まで減るのか、とD-16は肩を落とした。
■
「美味しいか?」
「ああ、ありがとう。すまない、君たちの分を分けてもらって……」
「良いんだよ。これくらい、すぐ調達できるし」
「パックス、お前また危ない事しようとしてるな?」
「やっべ。今の無し!」
おぷさんとめがさんに配給のエネルゴンを分けてやれば、キューブを抱え込んで食べ始めた。口の形は変わっていないのにエネルゴンキューブには齧りついた跡が残るのだから不思議なものだ。心なしか二匹の大きさが変わっているようにも見える。
ふとエネルゴンを食べ進めていためがさんが顔を上げて身体を傾ける。どうやら首を傾げているらしい。
「……お前達はいつもコレを食べておるのか?」
「まあ、最近は特に質落ちてるけどな」
「そうか? あんま変わらないだろ。あー、いや、味は薄くなったかな?」
苦笑するD-16にオライオンはそんなことはないとキューブを口に入れて、言葉を濁す。誤魔化しようがないほど、配給エネルゴンの質は落ちている。嵩増しに不純物を混ぜ込んでいるのか、味は薄くエネルギーの変換率も悪い。
「元々俺達は変形できない分エネルギー消費も少ないし、夜にチャージすれば問題ないけどな」
「でもやっぱ味気ないよなぁ。夜更かしできないし」
「お前の場合はそっちの方がいいけどな」
笑い合う二人を見上げて、おぷさんとめがさんは変わらぬ微笑を浮かべて顔を見合わせた。
■
後日二人が採掘場から戻って来ると、二匹は妙な装置を前にニコニコと笑みを浮かべていた。
「なんだこれ?」
「ソーラーニードルだ! 太陽光からエネルゴンを造り出す装置だぞ」
「エネルゴンを!? すごいな! 天才か!?」
「そりゃすごいけどよ……太陽光って、地下じゃ殆ど人工照明だろ。大丈夫か?」
「えっ」
「太陽じゃ、ないのか……?」
二匹に促され装置と共に宿舎の屋上に出て見るが、装置を作動させてもエネルギーの充填率は低迷したまま、エネルゴンが創り出される気配はない。
「あ、いや、でもほら! ちょっとだけどエネルギー溜まってるぞ! 置いてたらそのうちエネルゴンできるんじゃないのか!? ……多分。その、数日後くらい、に……」
「まあ、そうだよな。無いよりは、うん。すごいし……ほら……」
すっかり落ち込んでしまったおぷさんとめがさんに慌てて二人が励ましてみるが、よほどショックだったのか二匹はしおれてきてしまっている。持ち上げて撫でてみるがしょぼくれたままにこにこといつもの笑みを浮かべていた。
「すまない……君たちにはお世話になっているし、美味しいエネルゴンを食べて欲しかったのだが……」
「ありがとな。でもそんな気にしなくて大丈夫だよ。一緒に居られるだけで楽しいし」
「すぐに作れないってだけだろ? 次の休みの楽しみにするよ」
「むぅ……明日こそはワシが居て良かったと言わせてみせるからな!」
「はいはい。期待しとくよ」
納得できていないめがさんにD-16は苦笑して、今日はもう寝ようと宿舎の中に帰っていく。
■
「おはよ、ディー。今日寒いな……」
「おはよう、パックス。そうでもないぞ?」
翌日起きてリチャージスラブから出てみれば、吹き込む風の冷たさに身体を震わせる。先に起きていたD-16はまだ眠気の残っているオライオンに苦笑して顔を拭いてやった。大人しく顔を拭かれているオライオンはようやく目を開けてパチパチと目を瞬かせると、D-16がいつもと違うことに気が付いた。
「隙間風がすごい冷たい……って、なんだそれ?」
「ああ、いいだろこれ。あったかいぞ」
D-16のコグ穴に嵌っためがさんにオライオンは目を丸くする。配給を多めに分けていたのか、コグ穴にすっぽり収まるサイズになっているめがさんは何故だか少し発光していて、ぽかぽかと熱を持っているようだ。暖を取るように手を充てると程よい暖かさの熱がオライオンの手を温めてくれる。
「いいなこれ!」
「だろ? ちょっとエネルギー取られるけど、結構暖かいぞ」
昨日はやけにめがさんが自信ありげに何か言っていたが、このことだったのかと納得する。確かにこれはありがたい。
「おぷさんもできるのか?」
「すまない……私は爆発してしまうから……」
「そっかー……ばくはつ?」
おぷさんにはできないと聞いて残念そうに笑ったオライオンだが、不穏な理由に首を傾げる。爆発するとはいったいどういう原理なのだろうか。めがさんは本当に大丈夫なのかとぽかぽかと熱を発しているD-16のコグ穴を振り返った。
D-16もおぷさんの声は聞いていたようで、恐る恐る自分のコグ穴を見下ろした。
「……お前爆発するのか?」
「おぷさんと一緒にするな! わしはそんなことにはならんわ」
「そっか……。その、爆発しそうになったら早めに言ってくれよ……?」
「だからしないといっておろうに!」
ぷんぷんと怒るめがさんを宥めながら、D-16は苦笑する。その後羨ましがったジャズやアイアンハイドに、他のコグ無しに請われてめがさんを貸し出してみたのだが、どういうわけかD-16のコグ穴でしか充電できないらしい。二匹曰く機体の相性が関係しているのだとか。
その日D-16のコグ穴とめがさんはコグ無したちのカイロとして活躍していた。
「腹減ったぁ……」
「珍しいな、ディー」
宿舎に帰る途中、D-16は疲れた様子で身体を引き摺るように歩いて行く。今日はそんなに重労働になった様子は無かったのだが。珍しいものだとオライオンがD-16の肩を支えると、D-16も甘えるようにオライオンに機体を預けてきた。
「んー。暖かいんだけど、コイツ結構大喰らいなんだよ」
「温めてやったのに文句でもあるのか!」
「いや、助かったけどよ……毎日はちょっとキツそう」
「仕方なかろう。ワシもエネルギーを使うのだから」
「私達も稼げればいいんだけどなあ」
オライオンの肩の上で肩を落として丸くなるおぷさんに二人は顔を見合わせて笑い出した。
「無理しなくていいって。そんな小さい身体で街をうろついたらコグ有りに潰されそうだしさ」
「前に作ってくれたアレ、エネルゴン出来たらまたカイロになってもらおうかな。そろそろ寒くなってくる時期だし、皆にも好評だったから、余裕がある日はまた頼むよ」
「うむ! 任せておけ!」
いつか来る別れのその時まで、二人と二匹の不思議な日常は続いて行く。