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運試しの夜更かし

全体公開 ヌヴィリオ 2472文字
2025-12-14 07:02:20

リオセスリがナド・クライから帰った後、2人きりで過ごすヌヴィリオ。リオセスリの思いつきでルーレットカクテルを模した遊びをすることになり……

Posted by @otroom0v0

 ヌヴィレットの私邸で過ごす、穏やかな夜。しなだれかかるヌヴィレットに、リオセスリはナド・クライの土産話を語り聞かせていた。
「地下格闘場の熱気は凄かったよ。メロピデ要塞とは違って、様々な人が戦ってる。技術があるわけじゃないが、個性的で面白いんだ。璃月と稲妻の格闘技が一番の見どころだったな。あの流れるような動作、実に素晴らしかった」
「君も参加したのか?」
「そうしたかったが、見物だけに留めておいたよ。フォンテーヌの公爵が出てきたら、さすがに驚かれるからな」
 ヌヴィレットがふふっと笑って、リオセスリの手を握った。こうして彼がリオセスリに甘えることは、そう珍しいことでもないが……ナド・クライから帰ってすぐの逢瀬でこうも甘えられると、恋人としては嬉しくなる。リオセスリもヌヴィレットに身を寄せて、ひと時の幸せを堪能した。そこでふと、別の思い出が蘇る。
「そういえば、フラッグシップっていう店で面白いゲームをしていたんだ」
「ゲーム?」
「ああ。度数の違う酒をルーレットにのせて楽しむんだ。参加したやつと飲み比べて、最後まで潰れなかったやつが勝ち。勝者は敗者にひとつ質問する権利を得て、敗者は必ずそれに答えなければならない……っていうゲームさ」
「酒好きの不毛な争いだな」
 あまりの言い草にリオセスリは笑ってしまった。
「だが、有利な情報を得るためにわざとけしかけるやつもいるらしい。気の抜けない土地だと思ったよ」
「君も挑戦したのか?」
「まさか。美味いカクテルを楽しむだけにしておいたよ」
 そこでリオセスリは、目の前のテーブルに並ぶグラスを見た。開けたばかりの白ワインと、水のボトルも置かれている。やり方は違うが、同じような遊びはできそうだ。
「なぁ、ヌヴィレットさん。俺たちもルーレットカクテルをやってみないか?」
……何故?」
「何故って、面白いからに決まってるだろう。俺がはぐらかすようなことも、ゲームに勝てば言わせることが出来る。運試しだと思ってやってみないか?」
 しかし、ヌヴィレットは気乗りしないようだった。
「無理に聞き出すほどのことはないのだが」
「俺があんたのベッドの中で、何を考えているか……なんて質問も出来るが?」
 するとヌヴィレットが体を起こした。
「なるほど。確かに面白そうだ」
「はは! あんたも男だな」
「しかし、ここにルーレットはない。どうやってゲームをするつもりだ?」
「そうだな……
 リオセスリは少し考えて、ポケットを探る。コインを一枚取り出すと、ヌヴィレットに見せた。
「これで決めよう。表が出たらワインを、裏なら水だ」
「分かった。先攻と後攻、どちらにする?」
「それもコインで決めよう。裏なら俺、表ならあんたが先攻だ」
「いいだろう」
 コインを投げて、キャッチする。手をどけると、表が出た。
「ヌヴィレットさんが先攻だな」
「うむ。ではコインを」
 続いてヌヴィレットがコインを投げる。出たのは……裏だ。
「おや、引きがいいな」
 ヌヴィレットが上機嫌で水を飲む。その間に、リオセスリもコインを投げた。しかし残念ながら、裏が出る。
「まずは一杯、か」
 ヌヴィレットと違って、リオセスリは既に一杯飲んだ後だ。白ワインを注ぐと、くっと飲み干す。香りも味も上等だが、度数は高い。今は平気だが、じきに酔いが回るだろう。
……よし、まだいける」
「無理はしないように」
「分かってる。二日酔いに苦しみながら仕事をしたくないからな。ほら、次はあんたの番だ」
 コインを渡して、ゲームを続ける。それからも一杯、二杯とグラスを傾けた。程よい間隔で水を飲めたが、ワインを三杯飲んだ辺りでふわふわとした酩酊感に包まれる。またワインを引いたら、さすがにギブアップだ。グラスを空けたリオセスリは、コインをヌヴィレットに渡す。
……ん、あんたの番だ」
「うむ」
 ヌヴィレットは相変わらず涼しげな態度だった。酔っている気配が全くしない。けど、その眼差しは普段と比べて甘い。リオセスリがワインを五杯飲んだのに対し、ヌヴィレットはまだ三杯だが……と、思っていた矢先、コインを返された。
「残念だが、私の負けだ。ワインを当ててしまった場合、もう飲めそうにない」
「えっ、いいのかい?」
「ああ」
 そう答えると、ヌヴィレットがリオセスリにしなだれかかる。その肌は熱く火照って、表情だけでは分からなかった変化を教えてくれた。
「意外だな、こんなに酔うのが早いなんて」
「酒はあまり得意ではないのだ」
 それでも付き合ってくれたヌヴィレットに、リオセスリは愛しさを募らせる。するとヌヴィレットが言った。
「君の勝ちだ。さあ、私に質問を」
「分かったよ」
 リオセスリは笑って、ヌヴィレットの頭を撫でた。さらさらの銀髪を指先で弄ぶと、ゲームをしながら考えていた質問をする。
「それじゃあ、質問を一つ。璃月の海灯祭に行ったと聞いたが、あんたはどのくらいフォンテーヌを離れられるんだ? 離れたことでリスクがあるなら、教えてほしい」
……何故、そのような質問を」
「今は俺が質問をしている番だ。先に答えてもらおうか」
「ああ、そうだった」
 ぼんやりとしているようだが、ヌヴィレットは真面目に答えてくれた。
「半日程度なら問題ない。平穏を約束できるのは、長くても一日程度だろう。それ以上は、フォンテーヌのエネルギー供給に影響が出るかもしれない」
「なるほど。なら、翹英荘の辺りかペトリコール町、遠くてもスメールシティか」
「何の話だ」
「さて、何だろうな」
 ふっと笑って、リオセスリはヌヴィレットに囁いた。
「残念だが、敗者に教える義務はないからな」
……それは残念だ」
 ヌヴィレットが笑って、体を起こす。顎にかかる指を拒まずに受け入れると、引き寄せられてキスをした。華やかなワインの香りが漂って、酩酊感が増す。
……続きはベッドでするかい?」
 リオセスリの誘いに、ヌヴィレットが甘いキスで応えてくれた。


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