本のページを開くと、そこには不思議な白銀の世界が広がっていた。
ツイステ二次創作、シル監ラブストーリー第36話。
※創作女監督生の名前が出ます
※捏造設定あり
@natsu_luv
大盛況だったハロウィンも終わり、ナイトレイブンカレッジの木々が白粉をまとったかのような姿を見せる季節が近付いてきた。
この時期はどうしても気が抜けてしまうのか、デュースくんが授業の内容が頭に入らなかったと嘆いていた。
グリムもハロウィンで盛り上がり過ぎて疲れたのか、いまいちやる気が出ないといった状態だ。
もうすぐ期末テストだから、学業も気を抜いていられない。
廊下であれこれ話をしていると、通りがかったオルトくんに声を掛けられた。
「一緒に図書館に行ってみない? 最初は嫌々でも、勉強を始めさえすれば集中できるかもしれないよ」
「そうだな。オルトも一緒にいてくれたら助かる」
まずは行動に移してみようということで、私達は図書館へと足を運んだ。
席に着こうとしたその時、私達はケイト先輩に声を掛けられた。
カリム先輩とリリア先輩もいらっしゃった。
ふと、軽音部の今後の処遇のことを思い出した。
以前と比べて活躍はうなぎ登りではあるが、今度の試験の成績が悪ければ活動を制限すると先生から言われたのだ。
先輩方の様子を見ていたグリムが、私達と同じくらいにヤバそうだとつぶやいていた。
「親……リリア先輩、ここで勉強中でございましたか」
「あっ、シルバー先輩! いらしてたんですね」
「ニコルたちも一緒か」
「お主も勉強しに来たのか? それなら、一緒に勉強しようではないか」
「よろしいのですか」
「いいに決まってるじゃないか! みんなで勉強した方が楽しいよ」
こうして、私達はシルバー先輩も交えて勉強することになった。
今日も魔法史の授業中に居眠りしてしまった、そうシルバー先輩が話していた。
トレイン先生の声は起伏がないのもあってか、私も時々眠気に襲われそうになる。
授業の内容は『動く彫刻』についてだったとシルバー先輩から聞いたケイト先輩が、ちょうど館内にいたルーク先輩に声を掛けた。
どうやら、ケイト先輩は美術が得意なルーク先輩から何かヒントを得られるのではないかと考えたらしい。
「美術史に関して聞きたいことがあるのかな? 私でお役に立てるようなら、ぜひ質問しておくれ」
「勉強するにあたり、おすすめの本があれば教えてもらえないだろうか」
私達もルーク先輩から美術について何か教わろうと話していた時、いつの間にかグリムが姿を消していた。
勉強するのが嫌になって逃げ出したようだ。
後を追っていると、ちょうどフロイド先輩にぶつかったグリムの様子が見えた。
ジャックくんとラギー先輩も現れ、図書館が一気に賑やかになった。
ジャックくんとラギー先輩は学園長の依頼で、肖像画を図書館に置きに来たようだ。
その肖像画を見たグリムが、『ハロウィーンの王』について得意げに語り出した。
これがきっかけで、私達は勉強そっちのけでハロウィーンと同じくらいに楽しいホリデーがあるか探すこととなった。
「皆の者、あまり勉強をサボっていると『欲望の王』が現れるぞ」
「欲望の王って何……?」
「お主たち、全員知らんのか!!」
シルバー先輩以外、誰も『欲望の王』のことを知らないという事実に、リリア先輩は感嘆の声をあげていた。
『欲望の王』の話は昔話のひとつであり、リリア先輩がよく話していたとシルバー先輩から聞いた。
リリア先輩までおしゃべりに加わり、もはや勉強どころではなくなってしまった。
祝日について書かれた本を探していると、題名のない煌びやかな本を見つけた。
前にもこのような装丁の本を見かけたことがある。
グリムが興味本位で本のページを開いた。
すると、辺り一面が真っ白な光に包まれた。
溢れんばかりの光に目が眩む。
光が収まり、目を開けると私達は見知らぬ地に足を踏み入れていた。
見渡す限り、木々が私達を取り囲んでいる。
頭がフラフラして、まだ目がチカチカとしている。
私達はさっきまで図書館で本を読んでいたはずだ。
シルバー先輩やエースくんとデュースくんたち、図書館で書物を読み漁っていたメンバー全員がこの寂れた奇妙な森に降り立っていた。
おまけに、身につけているものまで変化してしまっている。
「グリム、頭に帽子が乗ってるよ」
「ふなっ、オレ様のチャームポイントの耳は見えてるか?」
「うん、グリムもジャックくんもちゃんと耳が見えてるよ」
「ニコルとグリム、お揃いの帽子を被っているな」
皆揃って衣装が変わっているうえに、オルトくんのギアまで私達とお揃いのものに変化している。
オルトくんのギアチェンジは容易ではない。
私達が迷い込んだ場所には、不思議な現象を引き起こす力が宿っているのだろうか。
あれこれ考えても答えが出ない。
「一体、いつの間に? 誰がこんなことを……?」
「それもだが、もっと気になることがある」
「ルーク先輩、どうかされましたか?」
「みんな……なんて可愛らしいのだろう!」
「本当か、ありがとう!」
「そんなこと話してる場合か!」
非常事態であるにも関わらず、ルーク先輩とカリム先輩はのほほんとしたやり取りを交わしていた。
ジャックくんの渾身のツッコミが森中に鳴り響く。
私達の服についたドクロのチャームを見たグリムが何か思い出したようだ。
ひとまず、私達はグリムの話に耳を傾けることにした。
この森には扉のついた木がある。
その扉を潜れば、ハロウィン・タウンという奇妙な街にたどり着くという。
そういえば、前にもこのようなことがあったかもしれない。
あの時は確か、ハロウィンの時期だっただろうか。
はっきりと思い出せないけれど、グリムの言ったとおりに扉のついた木を探して回ることにした。
しばらく森の中を歩き回っていると、扉のついた木を見つけた。
グリムの言っていたことは本当だったのだ。
扉にはもみの木やジャックランタンの絵が描かれている。
ジャックランタンの絵が描かれた扉を開けると、中は真っ暗だった。
すると、グリムは一目散に扉の中へと飛び込んだ。
グリムの後を追うため、仕方なく私も吸い込まれるように扉の中へと入った。
扉の向こうへと飛び込んだ先は、月の輝く丘がそびえ立つ墓地だった。
この場所も前に見かけたことがある。
他の皆も私とグリムを追いかけて扉の中に飛び込んだようだ。
皆と合流してから、ハロウィン・タウンの住人たちに挨拶をするために街へと向かった。
ところが、ハロウィン・タウンはもぬけの殻だった。
誰もいないのかとその場を去ろうとした時、犬の鳴き声がかすかに聞こえた。
「そこにいるのは……まさか!」
「えっ、あなたは……スケリントンさんとゼロ!」
「やぁ、ニコルくん! グリムくん! また逢えて嬉しいよ」
「久しぶりなんだゾ!」
「お久しぶりです、スケリントンさん」
「ニコルくんも元気そうで何より」
どこか愛嬌のあるドクロの顔に、スマートな紳士を思わせるフォーマルな装いと蜘蛛のように長い手脚。
この得体の知れない人物こそ、ハロウィンの王として名高い存在なのだ。
見た目は愉快で奇妙、一年中ハロウィンのことしか考えていないエキセントリックな人物ではある。
だけど、話してみると紳士的でユーモアのある御方だ。
「うわぁぁっーー!!」
「バケモンじゃないッスか!」
「大丈夫ですよ。怖くないですよ」
「ニコル、そんな化け物を相手になんて度胸なんだ!」
初めてスケリントンさんを見た他の皆は、その出立ちに驚いていた。
一方で、ゼロはカリム先輩とシルバー先輩に懐いていた。
スケリントンさんはスカリーさんのことについて尋ねてきた。
今回は私達と一緒にいないことに、スケリントンさんは残念がっていた。
「ちょっと待って! お前、あのスカリー・J・グレイブスと知り合いなの!?」
「時を超えた出会いということか。なんてロマンチックなのだろう」
私とグリムがスカリーさんと出逢ったという話を聞いた他の皆は、驚きと感心の声を上げていた。
スケリントンさんはスカリーさんに聞きたいことが沢山あったらしい。
代わりに私達がスケリントンさんから話を聞いてみた。
あの時、ハロウィン・タウンにやって来たのは私達だけではなかった。
再びこの地に降り立ったのはハロウィンの導きだ、どうか自分たちを助けてほしい。
そうスケリントンさんから切実にお願いをされた。
詳しく話を聞こうとしたその時、知らない声が聞こえてきた。
振り返ると、緑色の頭巾を被った奇妙な男が佇んでいた。
緑色の頭巾の男を見たスケリントンさんとゼロの顔色が変わった。
この男は危険だ、私の心の声がそう告げている。
男の名はスウィング、私達と同じタイミングでハロウィン・タウンに来ていたようだ。
だけど、私達はこの男のことを知らない。
どうやら、スウィングは私達がツイステッドワンダーランドに帰った後も留まっていたらしい。
そのことを話した途端に、スウィングは魔法を私達に目掛けて解き放った。
あまりにも出鱈目な強さの魔法に、私達は身を守ることがやっとだった。
私はリリア先輩の防護魔法の障壁に身を隠した。
「親父殿、あのスウィングという者と知り合いなのですか!?」
「あの男こそ、ツイステッドワンダーランドに混沌に沈めた災厄の妖精……欲望の王じゃ!」
まさか、欲望の王がこの地に留まっていたとは。
おまけに、このスウィングと名乗る欲望の王はハロウィン・タウンの住人たちを連れ去ったらしい。
リリア先輩の防護魔法の障壁までもが破られてしまった。
命の危険を感じた私達は、ひとまずスケリントンさんたちを連れてハロウィン・タウンから逃げた。
なんとかスウィングから逃れた私達は、墓場の入り口の近くで休憩をとることにした。
街に残ったスケリントンさんとゼロは、安全のためにずっと身を潜めていたらしい。
どうか自分たちを助けてほしいとスケリントンさんたちが頼んでくる。
だけど、グリムたちの答えは『NO』だった。
薄情だなとは思ったけれど、グリムたちの言い分にも一理はある。
グリムが帰り道に繋がる扉のある方へと駆けて行った。
私達も帰りの扉がある墓の近くまで行ってみたけれど、墓は見る影もなくボロボロに壊れてしまっていた。
「どうしよう、ツイステッドワンダーランドに帰れなくなっちまった〜!」
「グリム、落ち着いて。もしかしたら、別の道があるかもしれないよ」
「崩れたなんて……。そんなに古い墓だったのか?」
「いいや、これは自然に崩れたものではない。誰かが意図的に壊したようだ」
「もしかして、スウィングの仕業……?」
「いいや、こんなことをしそうな奴が……もう一人いるぞ」
スケリントンさんがそう呟いた時、今度は全身袋づくめの男が現れた。
袋づくめの男の名はブギーというらしい。
なんと、ブギーとスウィングはハロウィン・タウンを乗っ取るために徒党を組んだようだ。
全てのホリデーを乗っ取り、自分たちの思うがままの欲望に塗れた世界にしてやると二人は宣った。
全てのホリデーを自分たちのものにするとは聞き捨てならないと、私達は力いっぱいに反論した。
スウィングがまたとんでもない威力の魔法を使ってきそうだ。
ここはリリア先輩とルーク先輩とケイト先輩のお三方に任せ、私と他のメンバーは墓の入り口から退散した。
私達は再び寂れた森にたどり着いた。
今度はジャックランタンの絵が描かれた扉ではなく、別の絵が描かれた扉を開けてみることにした。
緑色のもみの木が描かれた扉がきらきらと光っている。
扉を開けてみると、ジャックランタンの絵の扉と同じく中は真っ暗だ。
ただひとつ違うのは、鈴の音がかすかに聞こえてくること。
金目のものがあるかもしれないと、ラギー先輩が意気揚々と扉の中を覗いた。
すると、ラギー先輩はあっという間に扉の中へと吸い込まれてしまった。
ラギー先輩に掴まれた私とグリム、さらに引っ張り上げようとしたジャックくんまでもが真っ暗な穴の中に放り込まれてしまった。
真っ暗な穴を抜けた先には、赤と緑に彩られた白銀の世界が広がっていた。
イルミネーションが施されたミニチュアのような家々に、天辺に大きな星が飾られた立派なもみの木。
この光景は冬の時期に元の世界でよく見られるものだ。
なんだかウキウキすると言いながら、グリムが町の方まで駆け抜けていった。
そして、グリムは勢いのままに巨大な柱にぶつかって涙目になっていた。
柱の上に何か看板のようなのがある。
看板には『クリスマス・タウン』と書かれていた。
「クリスマスって何だ……?」
「えっ、クリスマスを知らないの?」
「そんな言葉聞いたこともないけど……ニコルのいた世界にはあるものなのか?」
「ところで、クリスマスって何?」
「楽しいホリデーのひとつですよ」
「そんな日、初めて聞いたよ」
ツイステッドワンダーランドには『クリスマス』という日は存在しないらしい。
私はデュースくんたちにクリスマスについて簡潔に説明した。
元の世界でのクリスマスの日には、ニコル・イーリスが奥さんと一緒に特別な料理や子供たちへのプレゼントを用意している。
そして、家族皆で穏やかで楽しい一日を過ごすのだ。
そんな元の世界での様子を頭に浮かべながら、私はクリスマスを知らない皆に色々と話をした。
「お前たち、ここにいたのか」
「あっ、シルバー先輩! すみません、置いてけぼりにしてしまって」
「ここって何? 見たことないものばっかで楽しそう」
「看板に名前が書いてあるよ。クリスマス・タウン……?」
「ニコルくんの世界にもある、なんかいい日らしいッスよ」
クリスマスのことについて話していると、私達の後に穴に飛び込んだシルバー先輩たちと合流した。
その後、スウィングと対峙していたリリア先輩たちとも無事に再会できた。
ルーク先輩がシルバー先輩に自身のユニーク魔法をかけていたそうだ。
そのおかげで私達を追跡することができたらしい。
スケリントンさんがクリスマス・タウンについて説明してくれた。
クリスマスもハロウィンと同じくらいに楽しいホリデーで、街中に楽しい笑い声があふれている。
本来ならクリスマス・タウンも賑やかなはずなのに、やけに静まり返っている。
クリスマス・タウンにも異変が起きているに違いない、スケリントンさんが神妙な面持ちでそう言い出した。
スケリントンさんに促され、私達はクリスマス・タウンに足を踏み入れた。
スケリントンさんが呼びかけた途端、クリスマス・タウンの住人らしき小さな妖精たちが姿を隠してしまった。
おそらく、スケリントンさんのことを警戒しているのだろう。
気に留めることなく、スケリントンさんはクリスマス・タウンのリーダーである人物を呼び出した。
温かみのある赤い布と白いファーが印象的な衣装と恰幅のある体格に、もっさりとした白い顎髭。
彼こそがクリスマス・タウンのリーダー的存在である『サンタクロース』だ。
「まったく、ブギーとスウィングの相手だけでも大変だというのに、また厄介なのが増えおった」
「あの二人がどうかしたのですか?」
私はサンタクロースさんの話に耳を傾けた。
クリスマス・タウンにもスウィングとブギーが姿を現したらしい。
クリスマス・タウンの住人たちであるエルフたちも二人に攫われてしまい、今は数人のエルフとサンタクロースさんしか残っていないという。
クリスマスまであと十日なのに、このままだと準備ができないと困った様子だった。
「ここにいるツイステッドワンダーランドのみんなもきっと……素敵なクリスマスになるように手伝ってくれますよ!」
「ええっ!?」
まだ何も言ってないのに、私達も一緒にクリスマスの準備を手伝うとスケリントンが言い出した。
抗議する他の皆に対し、サンタクロースさんはそりで元の世界まで送ることを提案した。
だけど、それはクリスマスの日にしか出来ない。
ツイステッドワンダーランドに帰るためには、クリスマスの準備を手伝うしかない。
さらに、サンタクロースさんとスケリントンさんがクリスマスについて詳しく話してくれた。
話が終わった後、スケリントンさんが実際にクリスマス・タウンを見学することを勧めてきた。
こうして、私達はクリスマス・タウンを探索することとなった。
「くんくん、なんだか美味そうな匂いがする。クリスマス・タウンを探検するんだゾ!」
「あっ、グリム! 待って!」
美味しそうな匂いがする方向へグリムが走っていった。
見失わないように、私も急ぎ足でグリムを追いかけた。
グリムを見つけた後、私は近くにいたエースくんと合流した。
道中でエルフに声を掛けられ、成り行きでクリスマスツリーの飾り付けを手伝うこととなった。
私とグリムはツリーの飾り付けに使うハンドル付きの箱を貰いに行った。
そこでデュースくんとばったり出会い、一緒にツリーの近くまで行くこととなった。
「イルミネーションのついた木はツイステッドワンダーランドにもあるけど、クリスマスツリーは何が特別なんだ?」
「頂点に星をつけるの。すごく豪華になるんだよ」
「せっかくだし、ライト以外の飾りも付けてクリスマスツリーを仕上げないか?」
「そうだね、ここは私に任せて!」
私達は自分たちの目の前の箇所から飾り付けをしていくことにした。
途中でバランスがおかしくなってツリーが崩れそうになったり、グリムがオーナメントを横取りしたり、本当に終わるのかと思ったところとあった。
それでも無事にクリスマスツリーの飾り付けを終わらせることが出来た。
飾り付けを終わらせた私とグリムは、シルバー先輩とジャックくんとフロイド先輩と合流し、クリスマス・タウンの探索を続けた。
「辺り一面真っ白で綺麗ですね」
「皆も楽しそうで何よりだ」
「やぁ、君たちもクリスマス・タウンを楽しんでいるかい?」
「スケリントンさん! はい、もちろんです」
シルバー先輩たちと街中を歩いていると、道中でスケリントンさんと出逢った。
スケリントンさんたちと話をしていると、スケートリンクのようなものを囲んでいるリリア先輩とケイト先輩の姿を見かけた。
ジャックくんが派手なスケート技を披露し始めた。
私とシルバー先輩は肩を並べてその様子を眺めていた。
ジャックくんと同じ輝石の国出身のケイト先輩も、負けず劣らず見事な滑りを披露している。
一方で、リリア先輩は足を震えさせながら氷上に立っていた。
ひと通りクリスマス・タウンを廻り、私とグリムはサンタクロースさんたちの集まっている場所まで向かった。
私達はサンタクロースさんにエースくんとオルトくんの行方を知らせた。
エースくんとオルトくんの二人は、列車がどこまで続いているか調べてみると言っていた。
すると、サンタクロースさんが血相を変えた。
デュースくん、ジャックくん、ラギー先輩がエースくんとオルトくんを探しに行くと申し出た。
カリム先輩とルーク先輩も三人の後を追った。
ひとまず、私達はいったん待機することにした。
しばらくすると、エースくんとオルトくんを探しに行ったメンバーが戻ってきた。
道中でスウィングと鉢合わせし、ユニーク魔法が使えなくなったことを伝え聞いた。
ユニーク魔法が使えなくなることは、魔法士たちにとって一大事だ。
今はクリスマスを手伝うどころではないと、ツイステッドワンダーランドの魔法士たちは大騒ぎだ。
クリスマスは大事な日だし無くしたくない。
すると、見かねたサンタクロースさんが私達を自分の仕事場である工房まで連れて行ってくれた。
工房の中には可愛らしいお菓子やおもちゃが散らばっていた。
この場所は子供たちへのプレゼントを作る場所だとサンタクロースさんが教えてくれた。
グリムが乗れるサイズの木馬や作りかけのクマのぬいぐるみやクッキーが置かれている。
本来ならばエルフたちがプレゼント作りをしていたらしいけど、スウィングたちに連れ去られてしまい、何もかもが途中のままになっているようだ。
たくさんの子供たちがプレゼントを楽しみにしているとスケリントンさんが語ったものの、一部のメンバーは我関せずといったところだ。
あれこれと屁理屈をこねるメンバーに対し、カリム先輩が待ったと声を上げた。
「オレらみんなでクリスマスを成功させないと、ツイステッドワンダーランドに帰れないんじゃなかったのか?」
「ああ、その通りだ。俺達が学園に帰るためにも、人々の笑顔のためにも尽力しなくては」
「オーララ。私達が学園に帰れたとしても、クリスマスに喜ぶ人々の笑顔が失われてしまう……」
「そんなのどうでもいいんだゾ!」
このままだと埒が開かない。
痺れを切らしたスケリントンさんが威嚇するような唸り声を上げた。
サンタクロースさんが寝床を貸してくれるという。
ひとまず、今日のところは休息を取って翌日にどうするか考えようということで無理矢理話をまとめる運びとなった。
サンタクロースさんが私に小声で話しかけてきた。
クリスマスを知っている私に、クリスマスというホリデーの素晴らしさを皆に教えてやってほしいと頼んできた。
スケリントンさんからも直々に頭を下げられた。
こうして、私は皆を説得して回るミッションを遂行することになった。
少し早く目が覚めた私は、部屋の外に出てみた。
まずは誰と話をしようかと考えていると、デュースくんに声を掛けられた。
昨日、サンタクロースさんたちと何を話をしていたのかと聞かれた私は、デュースくんに皆を説得して回るように言われたことを打ち明けてみた。
自分の過去の経験を交えて、デュースくんも私に色々と話してくれた。
そして、皆の説得に協力することを約束してくれた。
「まずは、クリスマスに賛成してるシルバー先輩やカリム先輩とお話しした方が良さそうだね」
「あとは、ハント先輩も頼りになりそうだよな。逆に説得に時間が掛かりそうなのは……エースとジャックだな」
「聞き捨てならねえな」
デュースくんとちょっとした作戦会議をしていると、ジャックくんまでやって来た。
ジャックくんは卑怯な手を使うスウィングに一発お見舞いしないと気が済まないらしい。
どんな理由であれ、ジャックくんも味方になってくれると心強い。
私達の話を聞いたジャックくんは、まずは一番の強敵といえるラギー先輩と話をつけようと提案してきた。
さっそく、近くにいたラギー先輩に話しかけてみた。
クリスマスのご馳走やマーケットのことを話題に出してみたけれど、難攻不落の城塞のようにラギー先輩はなかなか首を縦に振ってくれない。
自分にもプレゼントを貰える権利があることを話してやっと、ラギー先輩はクリスマスを手伝うことを了承してくれた。
私達は三手に分かれて、他のメンバーを説得して回ることになった。
まずは、デュースくんと一緒にシルバー先輩の元へと向かうことにした。
工房の中から誰かの寝息が聞こえてくる。
声が聞こえる方へと忍び足で向かうと、大きな靴下に入った状態で眠っているシルバー先輩がいた。
「ん……、その声はデュース……。それに、ニコル……。うう、おはよう」
「おはようございます、シルバー先輩」
「どうして、そんなところで寝てるんですか?」
シルバー先輩は誰かに大きな靴下の中に入れられたらしい。
さっそく、私達はクリスマスの話をしていたことをシルバー先輩に伝えた。
シルバー先輩もサンタクロースさんのお手伝いをしたいと仰っていた。
私達も同じ気持ちであると面と向かって訴えてみた。
「そうか、俺も喜んで手伝おう」
「ありがとうございます!」
私達は工房でプレゼント作りの手伝いをすることにした。
デュースくんが工場で作っているおもちゃで喜んでくれるのかと疑問を口にした。
贈り物の中身ではなく、大切なのは気持ちである、そうシルバー先輩は真剣な顔で答えた。
シルバー先輩が自身の昔話をしてくれた。
お父様から貰った謎の面や鳴らし方のわからない楽器、どれも大切にしていると眉尻を下げた笑みを浮かべながら話していた。
「クリスマスに喜んでもらえる贈り物って何なのだろう。シルバー先輩なら何が嬉しいですか?」
「俺なら、普段から世話になっている皆でお祝いをしたい。しかし、それだといつも通りになってしまうな」
「だったら、クリスマスパーティーをしませんか?」
思い悩むシルバー先輩とデュースくんに、私はクリスマスパーティーを開くことを提案してみた。
パーティーに招待すれば、ツノ太郎さんも喜んでくれるだろう。
リリア先輩、セベクくん、シルバー先輩と同じクラスのカリム先輩と同じ部活のリドル先輩も呼びたいとシルバー先輩が語り出した。
飾り付けをしたいから、会場はオンボロ寮にしようということでクリスマスパーティーの話がまとまった。
「実は工房でお前たちへのプレゼントを作っていたんだ」
「私達に……ですか?」
「ここに来た皆に似合う動物のぬいぐるみを作ってみたんだ。受け取ってほしい」
シルバー先輩が私達に小さなぬいぐるみを差し出した。
動物を模ったマスコットサイズのぬいぐるみというよりは、布と綿で作り上げたモダンアートの一種のように見えてしまった。
手の中にシルバー先輩が生み出した前衛的な芸術作品が収まっている。
私もデュースくんも、思わず言葉を失ってしまった。
「これは……うさぎさんですか?」
「僕のは……虎かな?」
「うっ、気に入らなかったのならば済まない……」
「そっ、そんなことないですよ! すげぇ、カッコいい虎ッスね!」
「そうか、それならば良かった」
デュースくんの咄嗟のフォローもあり、シルバー先輩も安堵した様子だった。
私達はシルバー先輩を味方につけただけでなく、手作りのマスコットまで貰えた。
シルバー先輩と話をした後は、他のメンバーと話をつけるためにクリスマス・タウンの中を歩き回った。
デュースくんたちが協力してくれたお陰で、私は無事に全員を説得することができた。
サンタクロースさんとスケリントンさんが私達に声を掛けてきた。
二人が私に説得するように頼んだことは、他のメンバーにも知られていたようだ。
スウィングに一泡吹かせるために、ツイステッドワンダーランドに帰るために、クリスマスを成功させる。
これが私達の答えだとサンタクロースさんとスケリントンさんに宣言した。
さっそく、私達は工房に入ってソリの掃除を始めた。
ソリが大きくて重いから、グリムの手が届かない。
私が持ち上げるのも大変なので、はしごを取ってくることになった。
はしごを取りに行くために外へ出ると、ハロウィン・タウンのイタズラっ子三人組に出くわした。
ハロウィン・タウンの仲間たちが攫われたと三人組は騒ぎ出す。
すっかりグリムは言いくるめられてしまい、三人組について行ってしまった。
帰りが遅いから様子を見にきたシルバー先輩とケイト先輩と一緒に、私はグリムの行方を探ることにした。
クリスマス・タウンの柱の外にグリムの影が見える。
「シルバー先輩、ケイト先輩、グリムを見つけました!」
「グリム、無事か!」
「ううっ、ニコル、シルバー、ケイト〜!」
「いいねぇ、賑やかなのは大歓迎!」
グリムだけでなく、スウィングもその場にいた。
相変わらず、スウィングは出鱈目に強い魔法で容赦なく攻撃してくる。
ジャックくんたちも私達の後を追いかけてきてくれた。
スウィングを怯ませた隙に、一斉に攻撃を浴びせ、デュースくんのユニーク魔法で不意打ちを喰らわせる。
そして、リリア先輩が威力の強い一撃をスウィングにお見舞いする。
互いの力を利用した大胆な作戦を行使し、皆がスウィングに攻撃を浴びせた。
だけど、まだスウィングは立ったままだ。
再びスウィングが魔法を打ち出そうとした時、今度はブギーが私達の前に現れた。
「待て! こいつらがどうなってもいいのかな?」
「あいつら、ハロウィン・タウンの奴らなんだゾ!」
「見た目怖すぎない!?」
「なんということだ、同じ町の者を人質にとるとは!」
ハロウィン・タウンの町長とフィンケルスタイン博士がブギーに捕えられている。
汚い真似をするブギーに怒りの感情が込み上げたのか、隠れているように言われていたスケリントンさんが出てきてしまった。
私達は人質をとられて手も足も出ない。
ブギーの命じるまま、スケリントンさんを痛い目に遭わせる好機であるにも関わらず、スウィングは何もせずに懐からコインを取り出した。
「ほころぶは月、こぼれるは闇……破れた袋は戻らない……『縫い目が裂ける前に(スイッチ・ザ・ドリーム)』」
スウィングが自身のユニーク魔法を唱えた。
光が放たれた瞬間、何が起こったのか全くわからなかった。
スウィングがフロイド先輩のユニーク魔法を唱え出し、激昂したフロイド先輩が飛び掛かろうとした。
すると、今度はリリア先輩がケイト先輩のユニーク魔法を唱え出した。
なんと、皆のユニーク魔法が入れ替わってしまったのだ。
混乱しているうちに、スウィングがまた何か仕掛けてきた。
デュースくんがスウィングの魔法攻撃を浴びせられてしまった。
ところが、デュースくんは自身のユニーク魔法で反撃した。
唯一、デュースくんだけがユニーク魔法を入れ替えられていなかったのだ。
さらに、スウィングの背後からジャックくんとラギー先輩が奇襲を仕掛けた。
人質になっていたハロウィン・タウンの町長とフィンケルスタイン博士も奪還した。
「さぁ、スウィング。さっさとジャック・スケリントンを捕えるんだ!」
「おいおい、そりゃコインの目に反してる。コインに託した結果を覆すわけにはいかない」
「何? 俺に逆らうつもりか!」
「まさか、今はその時じゃないってだけさ。代わりにとびきりのお客さんを用意したからね」
スウィングがそう呟いた時、イタズラっ子三人組が大きな袋を持って現れた。
袋の中にはサンタクロースさんがいた。
ブギーたちは颯爽と姿を消してしまい、サンタクロースさんが連れ去られてしまった。
このままだとクリスマスが出来ないどころか、ツイステッドワンダーランドに帰ることも出来ない。
途方に暮れた私達に、諦めるのはまだ早いとスケリントンさんが囁いた。
連れ去られたサンタクロースさんの代わりに、スケリントンさんが最高のクリスマスを届けると言い出した。
場所をハロウィン・タウンのホールに移し、私達は町長とフィンケルスタイン博士にこれまでのことを話した。
サンタクロースさんの代わりにスケリントンさんたちがクリスマスをやろうとしていることをスウィングたちが知ったら、きっと邪魔しにくるに違いない。
邪魔しに来た二人をやっつけて、サンタクロースさんと攫われた住人たちを取り戻す。
最後にクリスマスの主役たちを取り戻せば完璧だと、スケリントンさんが笑顔で語った。
作戦を立てるために、まずは誰のユニーク魔法が入れ替わったか整理することにした。
オルトくんが言うには、他人のユニーク魔法を使いこなすことは難しく、ツノ太郎さんクラスの強力な魔法士でないと不可能だそうだ。
この中でユニーク魔法を使えるのは、デュースくんとジャックくんとラギー先輩。
私達は彼ら三人を軸にした作戦を立てた。
スウィングがユニーク魔法をかけ直す瞬間を狙った奇襲作戦だ。
作戦が決まったところで、次はクリスマスの準備に取り掛かる。
私達はスケリントンさんの自宅を訪れた。
スケリントンの自宅には、クリスマスに関する本がたくさん置かれていた。
ちょっとした錬金術のような実験をいくつか試した後、私とグリムはプレゼント詰めの作業場へ向かった。
プレゼント詰めの作業場には、ハロウィン・タウンの町長と大きな蛇がいた。
この蛇に完成したプレゼントを入れていくそうだ。
プレゼント作りを手伝っていたシルバー先輩と合流し、せっせと蛇の中にプレゼントを詰めていった。
その時、大きく口を開いた蛇がグリムを咥えてしまった。
もふもふとしたグリムの毛皮を見て、ぬいぐるみと間違えたのかもしれない。
「ふなぁっっ!!」
「グリム、しっかりしろ!」
「このままだと、グリムが丸呑みにされちゃう!」
「どうかしましたか!?」
「デュースくん、助けて!」
グリムの悲鳴を聞いたデュースくんが駆けつけてきてくれた。
デュースくんとシルバー先輩と一緒にグリムを引っ張り上げたので、大事には至らなかった。
プレゼント詰めの作業を終わらせたタイミングで、フィンケルスタイン博士から声が掛かった。
スケリントンさんが乗るソリが完成したという。
出来上がったソリを見せてもらったけれど、骸骨のトナカイと棺桶を組み合わせたおぞましいソリだった。
乗り心地の悪さを少しだけ我慢し、私達はオルトくんたちの元へとソリを届けた。
ついにクリスマス・イブの日を迎えた。
プレゼントやソリの準備も整えられた。
学園長といい勝負になりそうなほど長い町長の演説が終わると、赤と白の衣装に身を包んだスケリントンさんとゼロが現れた。
威勢の良い掛け声をあげ、スケリントンさんはソリに乗って夜空へと飛んで行った。
その時、地面の底から轟音が鳴り響いた。
スウィングがハロウィン・タウンに乗り込んできたのだ。
スケリントンさんのソリが狙われている。
スウィングはソリを撃ち落とすつもりだ。
作戦通りに魔法を撃ち込んだけれど、スウィングの方が一枚上手だった。
またしても、皆はスウィングにユニーク魔法を入れ替えられてしまった。
スウィングにひと泡吹かせることも出来ず、スケリントンさんのソリも撃ち落とされてしまった。
さらに、ラギー先輩まで私達を裏切ってスウィングたちの陣営についてしまった。
ツイステッドワンダーランドに帰る方法も見つからず、私達は完全に八方塞がりとなっていた。
これからどうしようかと考えていた時、白いもやが私達を包み込んだ。
霧の中から聞き覚えのある声がする。
やがて、白いもやが晴れた時、縦に長いシルエットが眼前に現れた。
モノトーンを基調としたフォーマルな装いに、白銀の髪と黒の丸いサングラス。
すらりとした体躯をした紳士的な出立ちの青年の姿があった。
彼こそがツイステッドワンダーランドの『ハロウィーンの王』、スカリー・J・グレイブスだ。
以前会った時と違うのは、足元が少し透けていることだ。
スカリーさんは天寿を全うし、ハロウィンの時期に地上へ降り立つゴーストと化したのである。
「あぁ……、ニコルさん! グリムさん! 大変お久しゅうございます」
「スカリーさん、お久しぶりです!」
「まさか、またこうして言葉を交わすことができるなんて。こんなに嬉しいことはございません……!」
「スカリー!」
「この良き出会いにキスを!」
「ひえぇっ!」
「それは相変わらずなんですね」
久しぶりの再会に喜ぶスカリーさんは、私とグリムの手の甲に口付けた。
スカリーさんの長い自己紹介が終わった後、私はスケリントンさんのこと等を話した。
スカリーさんも私達に自身のことを話してくれた。
スカリーさんとスウィングは因縁の関係にあったらしく、事あるごとに邪魔をされたそうだ。
ただ、スカリーさんはスウィングと戦ったことはなかった。
多くの同志たちを得たスカリーさんと違い、スウィングは孤立していたから、最後までハロウィンを奪うことができなかったのだ。
スウィングがハロウィンを奪えなかったのは、仲間を作らずに独り占めしようとしたから。
そこから、次の作戦のヒントを得られた。
現時点では、スウィングとブギーが徒党を組んでいる。
二人を仲違いさせ、ブギーをこちら側へ引き込む作戦だ。
スウィングの元へはジャックくんが向かうことになり、残った私達は学年ごとに分かれてブギーを探し出すこととなった。
「さて、どこから探そうかな……あれ?」
「ふなっ、どうしたんだゾ?」
「デュースくんがいない!」
私はすぐさま他のメンバーにデュースくんを見失ったことを伝えた。
デュースくんの行方も気になるところだけど、引き続きブギーの居場所探しをすることにした。
あちこち探し回っていると、墓場の入り口までたどり着いた。
そこには無傷のスケリントンさんとゼロがいた。
スカリーさんとスケリントンさんは、再び出逢えた喜びを分かち合っていた。
喜びも束の間、イタズラっ子三人組がひょっこりと顔を出した。
リリア先輩とシルバー先輩を筆頭に三人組を退け、私達は無事にスケリントンさんとゼロと合流できた。
ブギーの居場所探しを再開しようとしたその時、スカリーさんの姿が透け出した。
そろそろ時間切れだという。
またハロウィンの日に会えることを願いながら、スカリーさんは姿を消した。
光に包まれていくスカリーさんを見届けた後、私達は再びハロウィン・タウンに戻った。
そして、とうとうブギーの居場所を突き止めた。
そこにはデュースくんもいた上に、連れ去られていたサンタクロースさんとサリーさんの姿もあった。
ブギーを言いくるめ、サリーさんたちを救出した私達は月の輝く丘を目指した。
月の輝く丘でスウィングたちの姿を捉えた私達は、しばらく様子を伺っていた。
ジャックくんの言葉が届いたのか、最終的にラギー先輩もこちら側の陣営に戻ったようだった。
ブギーとスウィングが袂を分かった一瞬の隙をつき、ラギー先輩がスウィングの懐からコインを擦った。
コインを擦られてスウィングが焦った瞬間、皆のユニーク魔法が元に戻った。
今が好機と言わんばかりに、皆がスウィングに魔法をぶつけていく。
怒涛の攻撃を浴びせられ、ついにスウィングは膝をついた。
「やっと、スウィングを捕まえた〜!!」
「皆さん、お疲れ様でした!」
スウィングという名の脅威が去ったと、スケリントンさんも安心した様子だ。
また何かやらかさないよう、一部のメンバーがスウィングを上着のフードで顔までぐるぐる巻きにして拘束した。
サンタクロースさんはクリスマス・タウンへ帰って行き、ブギーもこの場を去った。
先に戻ったエルフたちがソリに積み込むプレゼントのチェックをしているとスケリントンさんが教えてくれた。
私達もクリスマス・タウンへ向かうことにした。
「さぁ、ごらん。これが君たちの守ってくれたクリスマスだよ!」
イルミネーションが輝く鮮やかな赤と緑の家々、大きな星とオーナメントで飾られた立派なもみの木、人々の明るい笑い声。
クリスマス・タウンに元の世界でも見かける光景が広がっていた。
賑わっているクリスマス・タウンをひと巡りしてから、私達はハロウィン・タウンにも顔を出した。
スケリントンさんの帰還に喜ぶ住民たちによる歓声と拍手が鳴り響く。
真っ黒な空から、小さな白い結晶が降り始めた。
まるで、王の凱旋を祝うかのようにハロウィン・タウンが真っ白に色付いていく。
「あっ、雪が降ってきた! ますます、クリスマスらしくなったね」
「知れば知るほど、クリスマスっておもしれーんだゾ」
グリムはすっかりクリスマスが気に入ったようだ。
ソリの準備が整うまでまだ時間がある。
私達もクリスマスの楽しい時間を過ごすことにした。
ハロウィン・タウンまで連行してきたスウィングは微動だにしていない。
グリムたちが木の棒でスウィングを突いている様子を横目に、私とシルバー先輩は住人たちとお茶をしていた。
そろそろ、ソリの準備が完了する時間だ。
帰り支度を済ませ、私達はサンタクロースさんを待った。
「みんな、帰りの支度はできたかのう?」
「はい、準備ができました!」
「ニコルくん、グリムくん、また会えて嬉しかった。僕たちはいつもここで、君たちが来てくれるのを待っているよ」
「スケリントンさんたち、ありがとう。また会いましょう!」
ソリが浮かび上がっていく。
お見送りに来てくれたスケリントンさんたちが、だんだんと小さくなっていく。
星が瞬く夜空を駆けるソリの上で、私とグリムはスケリントンさんたちに手を振った。
やがて、溢れんばかりの光がソリに乗った私達を包み込んだ。
こうして、不思議な白銀世界で過ごした日々は終わりを告げた。
私は途中で居眠りをしてしまったのだろうか。
目を開けると、いつも通りの図書館の光景が広がっていた。
そういえば、皆でハロウィンのような楽しいホリデーがあるかどうか探している途中だった。
ここにいる皆は、何かあったような気がするけれど思い出せない様子だ。
ラギー先輩が十二月の祝日について書かれているページを見つけてきた。
本文には『欲望の日』という凄惨な祝日のことが書かれていた。
「なんだか怖いんだゾ……」
「ぞっとしちゃったね。クリスマスのことは書かれていないのかな?」
「クリスマスって何だ?」
「クリスマスというホリデーはね……」
私はこの場にいる皆にクリスマスの話をした。
クリスマスは大切な人たちと一緒にご馳走を食べ、子供たちがサンタクロースからプレゼントを貰う日。
元の世界でのニコル・イーリスたち家族の様子を思い浮かべながら、私はクリスマスのことを説明していった。
私の話を聞いたグリムたちは、すぐさまクリスマスに飛びついた。
いつの間にやら、オンボロ寮でクリスマスパーティーを開くことまで決まってしまった。
数日後、私はオンボロ寮の談話室にシルバー先輩を招いた。
しばらくクリスマスパーティーの話題が続いていたのもあってか、紅茶とお菓子はクリスマスの食卓に出てきそうなものを選んだ。
お菓子は苺のショートケーキ、紅茶はバニラの香りのミルクティー。
シルバー先輩も気に入っている様子だ。
「今日のケーキと紅茶も美味いな。クリスマスパーティーに出しても良さそうだ」
「オレ様、デカいケーキが食いたいんだゾ」
「皆で食べられる美味しいケーキを探しましょうか」
「そうだな。美味いものは皆で分かち合いたい」
「ふふん、今から楽しみなんだゾ」
図書館で世界の祝日を調べて以来、グリムはクリスマスに興味津々だ。
いつの間にか、私達はクリスマスパーティーの計画を立てていた。
誰を招待するか、パーティーに出す料理はどうするか、どんな飾り付けにするか……アイデアを出す度に楽しい気分になれる。
ツイステッドワンダーランドの十二月の祝日が、恐怖に塗れた『欲望の日』ではなく、明るくて賑やかな『クリスマス』に書き換えられる日が来るかもしれない。
あの時、図書館で調べ物をしていた私達はそんな一縷の希望を抱いていた。