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尾形と芸者

全体公開 ゴカム 536文字
2026-01-01 08:04:53
Posted by @tirichann

 俺の母親が父親に見捨てられたのは、所詮芸者の身だからだと思っていた。でも母親自身に、父親の目が向かないような理由があったとしたらどうだろう?
「あなたのことを、慕い申しております」
 俺の体にぴたりとまとわりつくのは、ここ最近通っていた店の女だった。所謂男の遊び場で働く女で、軍上層部にとって息抜きにはなっても本命にはなれない。その程度の女だった。俺に告白したのは、勝算があってのことではないだろう。女は芸者の割に男に媚びることが苦手のようだったし、今も客に本気で恋をしたことを打ち明けている。セールストークが上手い女ではないことは明らかだった。そういう女だからこそ、俺は隣にいて居心地がよかったのだろう。俺はよく女を指名し、隣に侍らせた。女といると少しの間頭の中が休まる気がした。この膝の上で眠れたら、どんなにいいだろうと思った。
 だが俺はこの告白を受け入れてはいけないのだ。母と同じ芸者である女の恋が実ったら、母が父に振り向いてもらえなかったのは母自身に問題があったことになる。俺はこの恋を実らせてはいけない。
「じゃあな」
 俺は返事をせず、女の手をそっと外した。店へ行くのはもうやめようと思った。こんなに気分が悪いのは、きっと母や父のことを思い出したせいだ。


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