新年あけましておめでとうございます!
パッションで書いたのでパッションでお読みいただけると幸いです。
@kurato0o
馬に蹴られる
気まずい。
どうして自分がこんな思いをしなくてはならないのか。
ウォロは物陰からじっとりと小さな背中を睨んだ。小さな背中は、楽しそうに知らない男と談笑している。
ウォロが仕事から帰ってきたら、この現場に出くわした。まあ想像しなくとも、受けた依頼の報告をしているのは見てわかる。ショウは以前捕獲したオヤブンギャロップを村で披露していて、気性が荒いはずの彼だか彼女だかはショウに撫でられて大人しくしている。珍しいポケモンに人がわらわら遠巻きに見守っているが、その中心にはショウと知らない男がいる。
なんというか、不快感が尋常ではない。
向こうも仕事だということは重々承知だが、そもそもウォロは図鑑を埋めるというショウの行動こそ認めているが、ギンガ団の小間使いにされているのはなんとなく腑に落ちないものがある。あの小さな背中は、本気を出せば世界をひっくり返すだけの力を持っているのに、それを誇示しない。使おうともしない。ただ善行を積み、人々の助けになることを良しとしている。ウォロは常々気に食わないと思っているが、止めても聞かないのは目に見えているし、軽い気持ちで妨害なんかしたら逆にこちらが叩かれそうだ。
話し込んでいるのか、中々終わらない。
なんでこんなところでじっとしていなくてはならないのか。
昨日軽い言い合いというか、会話の擦れ違いから顔を合わせるのが少し気まずい。気まずいという感情さえ自分の中で持て余している。不都合なことが多すぎる。
ショウの傍にいるのは、ショウの背後に神の存在があるからであって、決して彼女自信に大層な価値があるわけではない。だから自分がこうして隠れ忍ぶ必要もない。相手が怒っていたり拗ねていたりしたとしても、そんなことはウォロの計画の邪魔にはならない。
燻っているのがだんだんと腹立たしくなってきて、ウォロはその場で低く舌打ちした。
――…何をしているんだワタクシは。
いろんなものが込み上げて、爆発しそうになる。
物陰から飛び出して、ずんずんと大股で歩く。いつもの気さくな商人のガワを被っていくことも面倒だった。
仏頂面で歩くと、ぎょっとした顔の村人が海を割るように自分を避けていく。周囲の気配に敏感なギャロップが、ショウではなく自分の方を片目で見やる。
「遅い」
「わっ」
調査隊服を覆う襟巻きをぐっと掴んで引き摺る。小さく悲鳴を上げたショウが「ウォロさん!?」と困惑した声を上げている。無視して宿舎に引き摺って行くと、ショウがボールにギャロップを戻す。切れ長の、まだ野性を宿した鋭い視線が、ウォロの思考を遮った。
「なんなんですか突然……」
宿舎に放り込まれ、玄関でちんまりと肩を竦めるショウが、それに被さるウォロを見上げて文句を垂れる。
「別に? なんでも?」
そう言ってショウの隊服に手を掛けると、察しの良い彼女はほんのりと頬を染めた。徐に細い腕を伸ばして、ウォロの首にそれを回す。小さな身体を抱き寄せる形になって、ウォロは背中を丸めた。
「やきもちですか?」
「……調子に乗るな」
「あたっ」
ごつ、と額を合わせる。至近距離で視線がかち合って、ショウが薄く微笑んだ。
生意気だ。
やはり気に食わない。
宿舎で影が重なる。それ以上の文句は少女から発せられることはなかった。